CHANCE

□こんなことしか、できない
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ゆっくりとひとつずつ、京子は私に西村のことを話してくれた。
彼女に嵌められてイジメがはじまったことや、葵が自殺したことも。

「西村さんが葵を嵌めようとした理由がね、雲雀さんに気に入られて――好かれていたからなんだ。西村さんは雲雀さんのことが好きだったみたいなの」

これが河上葵の時に突き止めた、理由だった。
しょうもなくて反吐がでる。

「葵ちゃんも雲雀さんに気に入られているみたいだったから、西村さんには気をつけてほしいの…」

京子は俯いた。

「こんな話信じられないよね、ごめんなさい」
『…一つだけ、訊いてもいい?』

京子は頷いた。

『どうして、会ったばかりの私にそんなこと教えてくれるの?』

京子はじっと私の目をみつめた。

「私は、もうあんな思いしたくなかったの。そのために私にできることならなんでもやりたかった。葵が自殺までに追い込まれたのは、私をある事から庇ったのが原因で…。ただの自己満足でしかないけど、これは罪滅ぼしみたいなものなんだって、思ってる」

京子が悲しそうな表情をする。
京子が暗い表情をずっとしていたのは、私に対して罪の意識がずっとあったから。
京子のせいなんかじゃないのに。
京子は最後まで私の味方でいてくれたのにそんなことを気にしてるなんて。
京子らしくって泣きそうになる。
けど、ここで泣くわけにはいかない。
少しでも京子の負担がなくなればいい。
あれは、京子のせいなんかじゃないんだから。

『京子ちゃん、京子ちゃんが庇われたにしろ、悪いのは京子ちゃんじゃないと思うよ。ずっと支えてあげてたんでしょう?独りじゃないってわかるだけで人ってすごく救われるんだから。原因は京子ちゃんじゃないって、話にきいただけの私でもわかるよ』

京子は私がそう言うと、大きな瞳からポロリと涙を流した。

京子の頭を撫でると、私に抱きついてくる。

「こんなっ、こと…しか、できなくっ、て…ごめん、ね」

嗚咽混じりの京子の声。

『ありがとう』

それしか言えなかった。





加筆修正2012/07/07

 

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