CHANCE

□tumble
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まどかちゃんが言っていることをすぐには理解できなかった。
しばらくして漸く理解して、でもそんなのはとんでもない誤解だった。

「私、今日日直で朝早く登校したんだけど、忘れ物に気づいて一度家に帰ったの。一度目に登校したときに葵ちゃんが私の下駄箱に何かしてるの見て…とくに気にとめてなかったんだけど、忘れ物とってまた来たら、あんなことに、なって…てっ」

だんだんと嗚咽が混じりはじめた彼女にクラスメイトは同情の視線を向けはじめる。

『そんな…っ、私はやってないよ!さっきも言ったけど、今来たばっかりだし…』

クラスメイトもはかりかねているようで、私とまどかちゃんのどちらが真実なのかわからないみたいだった。

「俺たちだって葵がそんなことするとは思えないんだけど、まどかだって嘘つくようなやつじゃねぇし…」

言葉を濁す男子の気持ちもわからなくはない。
まどかちゃんはあんまり目だったこととかしないけど、いつもにこにこ笑っていて、とても優しい子で、みんなの人気者だ。
その彼女が嘘をつくようなことはしないって私も思う。
だから、こんなのはきっとただの誤解でしかないんだ。

『見間違いじゃないの?だって、私にはまどかちゃんをいじめる理由なんて…「理由ならあるじゃん」

言葉を遮ったのはまどかと仲がいい竹下裕子だった。
裕子ちゃんの中では既に私がやったものとして決定されているようで、わたしを睨み付けるその瞳には怒りが込められていた。






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