CHANCE

□clue
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応接室で雲雀さんと過ごすようになってからしばらくがたった。
雲雀さんとの時間は欠けがえのない大切な時間。
一緒にいて新しい一面を知るたびに雲雀さんへの想いが大きくなっていく。
雲雀さんの不器用な優しさが、私の想いを強くする。

でも雲雀さんの周りに私以外の女の子がいないから、勘違いしそうになって怖い。
自惚れてしまいそうで。
雲雀さんにとって私なんて些細な存在で、ただの暇潰し相手なんだろうってわかってはいるんだけど…。
ふとした時に見せる笑顔が錯覚させる。
そんなふうに単純な自分がいやだった。

休み時間、机にうなだれてそんなことを悶々と考える。

「葵ちゃん」

声を掛けられて顔をあげると、まどかちゃんが立っていた。

『どうかした?』

まどかちゃんとはあんまり話したことはないと思うけど、どうしたんだろう。

「いきなりこんなこと聞くのもどうかと思ったんだけど…葵ちゃんって雲雀さんと付き合ってるの?」
『……え?何それ、なんで急にそんなこと…』
「噂になってるんだよ。葵ちゃんが応接室に通ってるって」
『噂?』

あぁでもそっか、噂になるのも当たり前なのかも。
雲雀さんは有名人だし。

『応接室には通ってるけど、付き合ってないよ』
「そっか。…応接室に通ってるのはなんで?」
『前、雲雀さんが私のこと助けてくれたことがあって、御礼にお仕事手伝ったりしてるんだ』

私たちの話を聞いていたらしい数人が話に入ってきた。

「俺もその噂気になってたんだ。あの雲雀さんが助けた上に側に置いとくなんてすげぇな、河上」
「そうだよなぁ。
普通なら今頃死んでるって」

笑いながらそう言われた。
死ぬって…さすがに雲雀さんでもそこまでやらないでしょ。

「葵ちゃんは殴られたりしたことないの?」
『雲雀さんはそんな人じゃないよ。頭撫でられることはあっても、殴られたりなんてないよ!』
「「「頭撫でられるー!?」」」

みんなそう言って驚いたようにこちらを見た。

『え…?』
「あの雲雀さんが頭撫でるって…」
「想像できねぇんだけど」

みんなが持つ雲雀さんのイメージって一体どんなものなのだろう。
まどかちゃんなんて驚きすぎて目見開いてるし…。

男子生徒の一人がぽつりと呟いた。

「雲雀さんってもしかして河上のこと好きなんじゃねぇ?」
『はぁ!?』

雲雀さんが私を!?
ないでしょ!ないない!

「俺も実はそう思った。雲雀さんがそんなに優しくしてるとはなー」
「葵ちゃん、かわいいもんね」
『ちょっと、みんな何言ってんの?そんなことな「何がそんなことないの?」

不意に響いた声に心臓が大きく跳ねた。
この声って…もしかして…?

恐る恐る振り替えれば、不機嫌そうにした雲雀さんが教室の扉のところに立っていた。






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