CHANCE

□呼び方
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授業が終わると、またたくさんの人が私を囲んだ。
正直うざい。
消えればいいのにとさえ思う。
そんなことを考えていると、まどかが私に近寄ってきた。

「雲雀さんに呼ばれて無傷なんて…。神崎さん、雲雀さんの用ってなんだったの?」

クラスの奴らは私のこと葵と呼ばない。
やっぱり河上葵を連想してしまうから、葵という名前に良いイメージのないひとたちは名前で呼ばないだろう。
これは好都合だった。
こんな奴らに名前で呼ばれるのはごめんだ。
私が黙っていると焦れたようにもう一度名を呼ばれた。

『風紀委員会に入らないかって言われて。断ったけど』

私の言葉を聞いた瞬間、まどかの顔がひどく歪んだ。
あんたは雲雀さんが好きなんだから、当たり前か。
西村はそう、と言い残して去ってしまった。
他のクラスの連中がさわいでいるが、適当にごまかす。
チャイムが鳴り連中は慌てて席に戻っていった。

一息ついていると、前に座っていた京子が私に振り返ってきた。
さっきもだったけど、暗い顔をしてる。
なんとなくその理由に見当はついている。
京子は躊躇いながら私に話し掛けてきた。

「葵ちゃん、私笹川京子。よろしくね」
『うん。よろしく』

京子は少し戸惑いながら、続けた。

「…あのね、今日お昼一緒に食べない?葵ちゃんと話したいことがあって…」

京子が葵って呼んでくれてよかった。
葵を忘れたいって思われてないように思える。
いろんなことがあったから、実際どう思っているかわからないけど、京子は大切な友達だから嬉しい。

『うん、わかった』

京子は安心したように息をつくと、じゃあまた後でね、と言って前を向いた。
ちょうど遅れて先生がやってきたところだった。





加筆修正2012/04/13

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