CHANCE

□呼び方
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応接室から戻り教室の扉を開けると、授業を受けていた生徒たちの視線が集まった。

『すみません、遅れました』
「話は聞いている。早く席について」

言われた通りさっさと席に向かう。
途中、様々な囁きが耳に入ったけど気にしない。
きっと私がぼろぼろになって帰ってくると思っていたんだろう。

自分の席につくとツナくんが話しかけてきた。

「神崎さん、大丈夫?何もされなかった?」

うなずくと、安心したように微笑んでくれた。

『ありがとう、沢田くん。心配してくれて』
「ううん。あ、俺のことはツナってよんでよ」
『…ありがとう、ツナくん。私も葵でいいよ』

ツナくんはまた少し照れたように笑った。

「神崎!転校早々授業中に話してるんじゃないぞ!」
『…すみません』
「前来てこの問題解いてみろ」
「葵ちゃんは今来たばっかなのに、今教わったばっかのあんな問題わかんないんじゃ…しかも応用問題だよ」

ツナくんが心配そうにしている。
『大丈夫だよ』

黒板の前に行き問題に目を走らせ答えを書いていくと、先生は少し驚きながら正解、と言った。
勉強は昔から得意で、それなりに努力もしてきたので、高校の範囲なら大体解くことはできると思う。

でも、授業はちゃんと聞かないとと思い直して自分の席に戻り、今度はちゃんと授業に集中した。






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