CHANCE

□二度目の自己紹介
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* * *





ざわざわと騒々しい教室。
私が担任に連れられて入ると不躾に向けられるいくつもの好奇の視線が煩わしいくて仕方なかったけれど、それを面にだすわけにもいかず、愛想よくしてみせていた。

「うっわー超かわいいじゃん」
「彼氏いんのかな」

何にも考えてない脳天気な声がする。
本当、のんきな奴らだ。
私が誰かも、何の目的でここに来たのかも知らないで。

担任に促されて、自己紹介をする。
私にとっては二度目の自己紹介。
そのことにはみんな気づいていないけれど、すごく虚しかった。

『今日、このクラスに転入してきました。神崎葵です。よろしくお願いします』

また教室がざわつきだ。
今度のはさっきのとは種類が違う。
葵って名前に反応しているんだろう。
クラスのざわめきを裂くように担任が咳払いをした。

「神崎の席は――笹川の後ろだ」

京子の後ろ。
ちょうどツナくんの隣でもあった。
言われた通りの席に行く途中通りかかりざまに京子をみると、彼女は暗い顔をしていた。






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