CHANCE

□二度目の自己紹介
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廊下にしゃがみこんで物思いに耽っていると、急に影ったので不思議に思い顔をあげた。

「君、大丈夫?」

心配そうに声をかけてくれたのは沢田綱吉。
廊下にしゃがみこんでるのを見て心配して声をかけてくれたようだった。
相変わらず、優しい人だな。
変わらずにいてくれたことが嬉しかった。

『大丈夫だよ、ありがとう』

安心させたくて微笑んでみせれば、微笑み返してくれた。

ツナくんの後ろには獄寺くんと山本くんがいて、獄寺くんが話しかけてきた。

「みかけねぇ奴だな、どこのクラスだ?」
『あ、私今日からここに転入してきて…』
「ああ、そういやクラスのやつが言ってたな。俺らのクラスに転校生くるって。じゃあお前がそうなのな。俺は山本武。よろしくな!」

爽やかに微笑んだ彼に何だか懐かしい気持ちになった。

続けてツナくんと獄寺くんも自己紹介してくれた。
知ってる人に改めて自己紹介されるのって、不思議。

『私は神崎葵。よろしくね』
「葵…?」
『どうかした?』

ツナくんはなんでもない、って首をふったけど、私は知っていた。
葵という名前で、河上葵を連想したのだろう。
この三人は虐めに参加しなかった、ちゃんとした目を持ってる人たちだ。
だけど、私が河上葵だと知られる訳にはいかなかったから、知らないふりをする。
職員室がわからなかったと嘘を言い、三人に職員室まで案内してもらった。
すぐに会えることはわかっていたから、またね、と告げる。





* * *





葵が職員室に入ったのを見届けて、綱吉はぽつりと呟いた。

「あの子…」
「どうかしたか?」

何故かは全くわからない。
だけど何かがひっかかる。
違和感の正体がわからなくて綱吉は眉を寄せた。

不思議そうにこちらを見てくる山本に、何でもない、と告げて頭を振る。
纏わり付く嫌な予感が杞憂になるようにそっと祈った。






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