Short3

□君の神様にはなれなかった
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あの日野球の神様に見放されたと言って、武は屋上から飛び降りようとした



私の制止の声も、皆の制止の声もなんの意味もなくて



ああ、私が何を言っても、武は考え直してくれないんだね



そうわかってしまうと、なんだかとても虚しかった












私と武は世間一般でいうところの幼なじみというやつだ



小さい頃からいつも一緒で、私は物心つくころには自分の恋心を自覚した



付き合い始めたのは中学に入学してすぐ



告白は私からだった



きっと武は私に対して私とおんなじような恋愛感情抱いてなかったんだろうな



武の“好き”は恋愛のそれじゃなくて、友愛とかその類いだったんだと今となっては理解できる



学校からの帰り道、自転車を武と二人乗りしながら私はそんなことを考えて自嘲した



目の前の大きな背中にコツンと額を押し付ければ前から呑気に私を呼ぶ声がして、適当に返事を返す



「久しぶりに公園にでも寄っていかねーか?」



『うん、行く』



よしっ、と一つ気合いを入れてから武は自転車のスピードをあげた



風をきる感覚が心地よくて、私は胸のうちの感情もすっきりしないかなとしょうもないことを考えた













公園についてすぐ私は自転車から飛び降りるとブランコに直行した



小さい頃、ここで武とよく遊んだな



「懐かしいのな」



武はニコニコしながら私の隣のブランコで立ち乗りをし始める



ぐんぐんとスピードをあげていく武とは逆に私の座るブランコは止まったままだ



『武さ…最近沢田たちと仲いいよね』



「そうだな」



武が屋上から飛び降りようとしたあの日、結局私の声は届かなかった



武に声が届いたのも、武を救うことができたのも、私じゃなくて沢田だった



…どうしてだろう



いつも傍にいたのは私の方だったのに



武のこと、誰よりもわかってるってずっと思ってたけど…本当は違ったんだね



『沢田って…どんなやつ?』



一際大きくブランコを漕ぐと、武はこたえた



「いいやつ!俺、ツナのおかげで変われた!
…きっともう二度と死のうなんて思わねー!」



沢田は武に生きる意味を与えたのかもしれない



武は、大切なものに気づけたんだ



それから武は笑っていった



「ツナは俺にとって神様みてぇなやつなんだ!」



眩しい笑顔の武を見て私はわかってしまった



ああ、そうか私は



君の神様にはなれなかった

(君の生きる意味に、なれなかったんだ)





暗いわ…。
山本の自殺騒動はヒロインが止めてもダメでした。
ツナだけが山本を救うことができた。
その事実がヒロインに、山本にとっての自分はその他大勢とたいして変わらないとしらしめてしまって、苦悩する、みたいな感じです。
本当に大切なものに気づかせてくれたツナは山本にとって絶対的な存在…という…。
文章にするの難しい…




 

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