CHANCE

□coffee
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『あ、なんかお茶でも買ってきましょうか?』
「買わなくていいよ。かわりに、コーヒー淹れてくれる?」
『はい!』



コーヒーを二人分淹れて雲雀さんに持っていく。
部屋の中をコーヒーの香りが包み込んだ。
コーヒーっていい香りだよね。
なんて考えてるうちに雲雀さんがコーヒーを飲んだ。
コーヒー飲む姿が良く似合ってていちいちドキドキしてしまう。
かっこいいひとは何をしても様になるのだなと改めて思った。

『雲雀さんはブラックなんですね。私砂糖とミルクないとコーヒー飲めないです』
「そうなの?悪いけどここには砂糖もミルクもないよ」
『えっ…本当に?』

雲雀さんが頷いた。
ブラック…甘党な私にブラック…!?
雲雀さんは平然とコーヒーを飲んでいる。

ちらりと自分のコーヒーに視線を落とす。
うん、なんかいけるかもしれない。
ブラックにチャレンジしてみよう。
もったいないし。
恐る恐るコーヒーを口にしてみる。
口に広がる苦みと酸味、香ばしい香り。

『……苦い』

私が顔を歪ませていると、見かねた雲雀さんが自分のコーヒーを机においてため息をついた。
お子様味覚で恥ずかしい。

「飲めない?」
『が、がんばりますっ』

ちびちび飲んでいこう、そうしよう。
もう一度コーヒーに口をつけた。

「…どうしても飲めなかったら僕が飲んであげるよ」
『…!?…ごほっげほっ』

吹き出すかと思った。
雲雀さんてばあっさりと何を言っるの。
だって飲んであげるってつまり、間接キスだよね。
嫌じゃないよ。
むしろ嬉しいけど、恥ずかしい。
雲雀さんはそういうの気にしないのかな。
それとも、これもやっぱり私が子供なのだろうか。

『だ、大丈夫です!』

動揺している私を見て雲雀さんがまた柔らかく微笑んだ。
かっこいいなぁ。

「…今度は、砂糖とミルク用意しとくよ」
『へ?』
「だから葵、またおいで」

そう言って私の頭を撫でてくれた。
どうしよう。
こんなふうに優しくされたら勘違いしてしまいそう。
真っ赤になった顔を隠すようにふせ、小さくはい、と呟いた。
それが今の精一杯だ。





加筆修正2012/04/13

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