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□言えない二文字、伝えたい五文字
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目を覚ますと、眠りに落ちる前に私の隣にいた人物がいなくなっていた



寝惚けたままに、そこにてを伸ばせば、まだぬくもりが残っていた



ぱさ、と衣擦れの音に目を向ければ綱吉がワイシャツに袖を通しているところだった



『もう行くの?』



「あ、ごめん起こした?
…もう行く
今日も仕事だから」



『…そう
次はいつ会える?』



「一週間は仕事が詰まってるから会えないな
…また連絡する」



綱吉は着替え終えるとベッドに歩み寄ってきて私の頭を軽く撫でてから額にキスをおとした



『朝ごはんは?』



「悪いけど、本当にもう行かないといけないから…じゃあな」



私が見送るためとベッドから出ようとするとそれは綱吉に制される



「まだ眠いでしょ
…じゃあね」



私が返事を返すより早く綱吉は部屋から出ていった



私はごろりと転がってさっきまで綱吉がいたそこに移動する



もうぬくもりはほとんど残っていないけど、僅かに彼の匂いが残っている



私は枕に顔を埋めた








私と綱吉が出会ってからもうそろそろ3年が経つ



よくわからないままに流されて今のような関係になってからは2年半くらい



たまに綱吉から連絡がきて、一緒に過ごしたり今日みたいに泊まっていったり



いわゆる、愛人…なんだろうか



私たちの関係はお互い明確な言葉にはあらわしたことがないけれど、つまりはそういうことなんだろう



綱吉は仕事が忙しくてなかなか会えないと言っているけどそれも本当かどうか



ベッド脇においてある時計を確認すれば6時9分をさしている



こんな時間からスーツ着て、どんな仕事だというのか



…もしかしたら、本当は奥さんいるのかも知れないな






そう考えると胸が締め付けられた



私は綱吉が好きだ



綱吉が私のことを都合のいい女だとしか思っていなくても






恋人になりたいなんて望まない



面倒くさいと思われなくない



綱吉の傍にいられるなら愛人だって、都合のいい女の一人だって、なんだっていい



独り占めしたいなんて思ったら、きっと綱吉はどこかにいってしまうから



だから絶対、私は自分の気持ちを伝えないって決めたんだ




気持ちはこんなに溢れてくるのに、私は今日もそれを呑み込む






言えない二文字、伝えたい五文字

(すき)
(あいしてる)

お題提供:Aコース







続きます











 

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