白色ポピー
□夢物語のような
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『…う、』
「おや、起きましたか」
まだ生きていたらしく微かに身じろぐ少女を見下ろした。
「野垂れ死にですか。哀れですね……ん?」
少女が身じろいだときに髪の隙間からのぞいた白い首に何かが見えた気がした。
しゃがみ込んで衿を引っ張ると、刺青だろうか、何か数字が見えた。
「…これは…00…?番号ですか…」
倒れ込んでいる少女は肯定も否定もしない。
それほど衰弱しているんだろう。
このまま放って置けば、確実に明日の日の目を拝むことはない。
首にナンバーが刻まれている、普通のことじゃないのは一目瞭然だ。
この子も、きっと、同じなのだと思った。
誰かの好きなように、弄ばれたのだろう。
「…気が変わりました。君に選択肢をあげます。君はどうしたいですか?」
『…きたい』
ともすれば聞き逃してしまいそうなか細い声が聞こえた。
確かに、いきたい、そう言った。
『生きたい。…生きたい。…私は、死ねない。…いきなくちゃ…ボンゴレに、行って…約束…まもらない、と』
ボンゴレという単語が確かに聞き取れた。
ということは沢田綱吉に聞けば何かわかるのかもしれない。
譫言のようにただ、生きたい、と繰り返す少女にわかりました、と囁いた。
ああ、情に流されるなんて情けない。
それでも、同じ境遇だと思うと捨て置けない。
僕にも普通のひとと同じように同情なんてできたのだと自嘲気味に思った。
安心したからか少女はふと柔らかく笑った。
そのまま少女は瞳を閉じてしまったけれど、その笑顔が頭にこびりついた気がした。