文
□えふ様からの頂き物「君を愛す」
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戦艦の上、
紅桜、桂、攘夷、鬼兵隊
……高杉晋助。
君を愛す
高杉と俺。
恋人同士だった。
大好きだった。愛してた。
だけどもう過去の話。
今の俺は、土方のもの。
高杉のことはもう忘れたと思っていたのに。
それなのに、
ニュースで攘夷浪士が捕まったって聞くと、たまらなく不安になる。
街角に貼ってある見慣れた顔の指名手配のポスターにさえドキリとする。
土方に抱かれてる時も
俺の体からアイツの影が消えて、土方の色に変えられていくのが少し悲しくて。
もうアイツは戻ってこないって、わかってるけどもうこの体はアイツ好みの体じゃないから、もう二度と繋がれない気がして。
最悪な俺。
不安定な心のまま土方を受け入れた。
紅桜の一件後、
久しぶりのふたりきり。
「無事でよかった。」
「心配かけて…ごめん。」
優しい土方。
俺をギュッと抱き締めてくれる。
アイツとは違う、煙草の匂い。
この胸が少し痛むのは傷の所為だけじゃないと、わかっていたけど
気付かないふりをして土方に体を預けた。
「……それで、…高杉のことなんだが」
ためらいがちな土方の言葉にドキリとした。
覚悟はしていたのに、いざ問われると怖い。
土方が離れて行ってしまう気がして、
「……」
「おまえ、なんか関係あるんだろ?」
体中の血の気が引いていく。
カタカタと体が小さく震えた。
「……どこまで知ってる?」
俺を抱く土方の腕の力が強くなる。
「お前…攘夷戦争に出てたんだろ」
「……うん」
「白夜叉、て呼ばれてたのも…高杉と幼なじみで戦友だったってことも」
「……そっ、か…」
知られてしまったんだ。
体の力がスッと抜けていく。
「ね…俺を、逮捕する?」
「いや、事情聴取はあるかもしれねぇがそれはない。」
(…土方は俺のこと、)
「それに、」
喉の辺りまで出かかった言葉を押し込めるように土方が続ける。
「何があろうと、テメーが過去に何背負ってようと俺には関係ねぇ。」
「…え?」
「一回しか言わねえからよく聞け、俺は真選組の土方十四郎じゃなくただの土方十四郎として今のお前に心底惚れてる。過去があって今のお前がいるんだ、高杉とどんな関係でもかまわねぇ。その過去ごと愛してんだよ。だからそんな悲しいことは考えるな。」
俺の言わんとしていたことがわかったのか、否か、俺には解せなかったけれど、十分だった。
土方の気持ちが、言葉が、体温が俺を包み込んで…
「…ごめん、」
高杉のこと、ちゃんと忘れられる。
だってこんなにも土方が愛してくれる。
そしてそんな土方をこんなにも愛おしく思う。
「銀、愛してる」
「うん‥俺も。」
2009.04.16
銀と高杉のこと本当は全部知っているんだ。
でも言わない、言えないんだこれだけは。
いつか全てが過去になるまで。
その日まで、俺は君を愛すよ。
fin.