reborn3
□ただひとつだけ
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暫く家に帰ってなかった(いや帰れなかった)獄寺はある期待をしつつ玄関を開けた。
辛気臭いオフィスでは決して見られないやすらぐフインキを、妻の顔を。
だが、玄関のドアを開けたに関わらず何の反応もなかった。いつになったら帰れるかわからない、と言ったのは自分だが少し寂しさがあった。靴はあるし何より電気がついているので出かけていることはないだろう。そして寝ていることもないだろう。楽しそうな声がするから。
「あははっ!ステキです!」
靴を脱ぎながら、電話しているのかと思った。誰と?男か?そう考えると仕事の疲れもあって一気に怒りがこみあげた。そしてリビングのドアを開けた。
「おいっ!ハル!」
「はひ!!」
中には驚いた顔のハルと、、、、、、、猫?
「あ、おかえりなさい」
「なんだ、コレ」
「猫ちゃんですっ!」
「見りゃわかる」
眉間にしわを寄せる獄寺にその妻、ハルは猫を抱き上げた。
「庭によく遊びに来るんで、お世話しているんですが。」
にゃぁとハルに擦り寄る猫を見て獄寺はやっぱり眉間にしわを寄せずにはいられない。
「チッ」
「あ!今舌打ちしましたね?!イヤなんですね?!」
「・・・別に」
気に食わないわけがないだろう。いつも笑顔で迎えてくれる大事な妻が、この猫にとられてしまったのだから。イラつく気分でリモコンを手にとりテレビをつけた。後ろからはまだハルがぶつぶつと言っている。それも聞きたくなくハルに背をむけテレビの前のソファに座った。
「もう聞いているんですか?!」
獄寺はもうすべて聞き流そうとした。ハルはあきらめ抱いている猫の目を見る。
「ハルだって寂しかったんです、だから話し相手に、なってもらっていたんですよね、」
今にも泣きそうな声に獄寺は振り向く。見ると案の定泣きそうな顔のハルがいた。
「・・・泣くな」
そういってもハルの目から涙は出てしまった。
「ふぇっ・・・だって隼人さん、ずっと帰ってこないし、」
「悪かった」
ハルに近づき涙を拭おうとした。しかしそれは、先を越されてしまった、こいつに。
「ふぇっ、猫ちゃんっ!」
猫はハルの涙をぺろぺろと舐めた。行き場のなくした手に獄寺は舌打ちをし、猫ごとハルを抱き締めた。
「お前のさ、
くだらない話だとか愚痴だとかさ、聞くから、
帰ったら聞くから、
だから他の奴に言わないでくれよ」
「は、ひ、?」
「俺は仕事から帰って来たらおまえの顔、
お前じゃないとダメだから、
お前しかいないから」
「、つまり、猫に妬いているんですか?」
涙がとまったハルはそう尋ねた。
獄寺はハルを離し大声で言った。
「うっせ!」
「はひ!すみませ、」
「うっせ!そうだ!」
耳まで真っ赤にして獄寺はそっぽを向いた。ハルはその様子を見てくすっと笑った。
「わかりました。隼人さんにもしますね!」
「にも、って何だよ!俺に一番に言え!」
「はひ!それってムリですっ」
「っんだと!!?」
ただひとつだけ
(俺にはお前の代わりなんていないから)
(俺の代わりも作んないでくれ)
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