SS


□バレンタインデイ・キッス
1ページ/1ページ

2月14日。

時計の針が10時40分を指していて、カーテンの隙間から覗くのは黒く染まった夜の色。


「欲しいんだろう」
「バカいるかよ」
「強情なやつだ」
「お前に言われたかねーな。俺はもらってやってもいいんだぜ」

遡ること3時間程、こんな会話を繰り返している。
バカで強情なのはお互い様、分かりきってはいてもこうなってしまった以上引っ込みがつかなくなっていた。
俺のポケットの中には、このまま行けば恐らく渡せず終いになるであろう少し溶け始めたチョコレートがあって気持ちだけが焦ってしまうばかりだ。
こういうとき、素直に渡せるような雰囲気を作ってくれたっていいのに。
相変わらず気の利かない男だ、と心の中で毒づいてみる。

俺の気持ちなんて、きっと知る由もない。
グリムジョーの視線は窓の向こう。

何を考えているのかなんて知りたくないし考えたくもなかった。



沈黙を破らないまま1時間が経った。
もう帰ろうか。
どうせ渡せないのだから、このまま居たって同じことだ。

腰をあげた俺よりも先に何故か立ち上がっていたグリムジョーに手首をがっちりと掴まれた。
「何だ」
「…コンビニ行くか」
ぽつりと呟く。
聞き間違いではなく、確かにそう言った。
「何故」
「チョコ食いてえ」
「……………」
何も言えずに黙る俺には特に触れず、掴んだ腕を引っ張り外へ出た。
2月の半ばということもあり風が冷たい。
冷たい、けど。
前を歩く彼の体のおかげで俺にはほとんど当たらない。

無意識なのか
優しさなのか

わからないけど、うれしくて目の前の背中に抱き付きたかった。
つまらない意地が邪魔をして、それは叶わなかった。

ぽつん、ぽつんと街灯が弱々しく照らす公園を歩く。
真ん中くらいまで来たところで突然、力いっぱい引っ張られた。
下ばかり見て歩いていたから抵抗もできずにただ働いた力の方向へ飛び込む。
「何、」
「……悪かった」
背骨が軋むんじゃないかというくらいに抱き締められて息が詰まる。
「ウルキオラ」
「………………」
「チョコ食いてえよ」
さっきも聞いた。
「だから、コンビニ…」
「嫌だ」

お前のがいい。
耳に押し付けられた唇から囁かれた言葉に体が熱くなる。
見透かされていたんだろうか。
素直になれない俺も、
渡せずにいたチョコレートも、無くしてしまいたかった距離もすべて。

「…くれよ」
「……………」

グリムジョーの腕の隙間からポケットの中身を取り出して、直接渡すのは照れ臭いし何だか今更な気がして彼のコートのポケットにそれを滑り込ませて、胸に顔を埋めた。

「ウル、」

今日初めて、重なる唇
甘い甘いチョコレートと二人、このまま夜に溶けてしまえたらいいのに。


END.

はい!
よくわからない!

何かイベントの最後の方になってやっと雰囲気出てきて名残惜しんでるイメージ(なにそれ)

は、はっぴーばれんたいん!

もっと幸せそうなやつ書けばよかった;;;

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ