SS


□投げ文、恋文
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ぎゅむ。
生暖かい感触。

驚いて振り返ると遠ざかっていくあいつの姿があった。だんだんと小さくなっていく背中と自分の手のひらとを交互に見やって首を傾げた。
俺、紙なんか持ってたか?
わざわざ確認するまでもないそんな疑問が浮かんだのはあのすれ違い様に誰にも気付かれることなく紙を握らせるという所業を為し遂げたあいつの妙な器用さを現実に起こったこととして受け入れがたかったからだ。

「何だコレ、手紙か?」

くしゃくしゃに丸められたそれを広げると、
“昼休み 屋上“
とだけ書きなぐってあった。
ウルキオラは字が下手だ。惚れていようがお世辞だって上手いとは言えないぐらいに下手。
そして本人に自覚はない。

素っ気ない手紙だが伝えんとすることは分かったし、これを書いていたであろう姿を思い浮かべると何だか可愛くてだらしなく緩んでしまった表情が元に戻らず、こんな顔で戻ってロイ共に冷やかされるのは御免だ。

……先屋上行ってっかな。

4校時目始業のチャイムもお構い無しに高々と聳えるフェンスを乗り越え貯水タンクの上に腰を下ろした。
「おい」
「…んー、何だもう昼か?」
「だから俺がいるんだろうが。何処でも寝るなと言ってるだろう馬鹿め」
「あ、そーだ。読んだぜ手紙」
たまにはカワイーことすんじゃねえか、と思ったままを口にすれば脇腹を爪先で蹴られた。痛い。
「お前も書け」
「書けって何を」
「俺が書いたようなことをだ」
「手紙で渡すぐれぇなら直接言った方が早くね」
「お前と話しているところを藍染教頭にでも見られてみろ、俺まで時代遅れなヤンキーだと思われてしまうだろう」
「おい俺はヤンキーじゃねえ」
「冗談だ。まあ、しっかりやれよ」
「いやお前聞けよ」

俺の隣にごろんと寝転んで背中を向けるとそのまま眠り始めた。何処でも寝るなとか言ってたヤツの行動じゃねえと思うんだけど。
寝顔見てやれーと思って覗いたけど両腕でうまいことガードされててまるで見えやしなかった。

ちょっと悔しかったので、ささやかな仕返しをしようかと思う。

5校時目は生物。
教師の目を掻い潜ってノートの切れ端に文字を書き込んで同じくぐしゃぐしゃに丸める。
授業の終わりを狙って少し前を歩いていたウルキオラのカーディガンのポケット目掛けて丸めた手紙を投げ込み様子を伺う。
「?」
違和感に気付いたらしく、間髪入れずポケットの中の手紙を取り出して広げ、中身を読んで…
追い掛けてきた。
よほど恥ずかしかったのか顔は赤を通り越して何だろうアレ何色なんだろ?
とかのんきなこと考えてたらとっくに追い付かれてたらしく、足引っ掛けて転ばされた。

「痛ってえェェエ!!」
「この塵が海の藻屑にしてやろうか!」
「そんな怒んなよなー“愛してるぜウルキオラ(はあと)byグリムジョーさま“って書いただけだろーが」
「誰かに拾われたらどうするんだ貴様!ご丁寧に名前書くな!」
「だからよ、言っただろ俺」
「何がだ!」
「直接話した方が早ェってよ」
「………はあ」




END.

そうですね!!(右フック)
これを最後に手紙制は廃止になったとかむしろ逆に流行ったとかそんなことない←わかりづらい

もっと初々しくてキャッキャしてるやつが書きたかったのにおかしくなってしまった…!
神巳さんごめんなさい!
こんなんでよかったらどうぞお納め下され…遅くなってすみませ!

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