連載

□空回りの愛をあげる
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この街はおかしい

人と人が啀(いが)み合い、疎ましがり、関わらずに済む様距離をおく。
…それが、ド田舎から出てきた俺の率直な感想だった。
こんな街今すぐにだって出ていきたいし、里に帰りたい。

けれどやっとの思いで就職が出来、それゆえの上京なのだから文句は言えまい。
まあ、そこまでは良かった。一応。
社員、それと採用者多数と多額の借金を残し会社自体が倒産してしまったこと以外は、だが。
つまり田舎に帰ることもできなければ職もない、冷めきったこの土地で暮らしていくことを余儀なくされてしまったのだった。

いきなり途方に暮れてしまう青年、結構今更だが名をグリムジョーと言った。

「あー…迷ったな、コレ」
此処までくる前の下準備にしっかり書き留めたはずの新居までの地図は、まるで役に立たない。
その新居も採用の際に会社側が用意したマンションだという話だから未だ存在しているかどうかも正直怪しいところだが。

家にも着けない
歩きまくったおかげで足はヘトヘトだし、心だって折れてしまいそうだ。
こんなことになるなんて知っていたら、死んだって来たりはしなかったのに。


(この街の薄汚れた空気が肺に取り込まれていくのかと思うと、思わず涙が出た)





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