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□蚊帳の外
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 幸村さんが、目の前で倒れてゆく。
 そのさまを、俺はただ呆然と見てるだけだった。
 駅のホームのアナウンスが、片隅でぼんやりと聞こえては木霊していった。

「赤也!救急車呼べ!」

 先に駆け寄って幸村さんを抱きかかえた先輩たちが、俺に叫んでいた。
 幸村さんは、苦しそうに目を瞑っていた。
 俺には、わけがわからなかった。
 俺は、なにも知らない。
 幸村さんの、なにも知っちゃいない。
 昨日、「部長って呼ぶの、やめな」と言われて。
 馬鹿みたいに嬉しくて。
 大好きで。
 なのに、あそこに横たわって、目をあけないのは、誰?



 俺は結局、蚊帳の外なんだ。

































           蚊帳の外 

















































 幸村さんが入院して二週間。
 どたばたと音をたてて、全ては走ってゆく。
 俺はそれについていけないままだった。
 幸村さんを抜いての全国制覇はできるだろうが、俺は幸村さんがいない全国大会なんかなければいいと思った。
 全国の舞台に立ちたいのは、誰よりも幸村さんだと思う。
 ラケットを握れない毎日が、どんなに悪夢なのだろう。
 俺はそれを思うと、幸村さんの見舞いどころじゃなくなる。
 行ってはいけないのかもしれないと、そう思ったりもした。
 ただ、やっぱり幸村さんはどこか影ができてしまった。
 幸村さんが目覚めて数日後、俺は見舞いにいった。
 彼は俺に「出て行け」と言った。
 幸村さんが、泣くように叫んだ。
 俺はどうしたらいいかわからなかった。
































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