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□キライになれない理由
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 キライになれない理由








































「俺って、そんなにドジに見えるかの」
「はい?」
 突然何を言い出すのかと、柳生はずれた目がねを指先で直す。
 当の仁王は、溜息ひとつ空を見上げるばかり。
 肩を並べて歩きながら、ぼんやりと仁王は真田を思い浮かべた。






































 真田にドジだと言われた。
 確かに、普段から考え事をしているとぼーっとして物に当たったりする。
 この間も、ふらふらと廊下を歩いていて、他の生徒にぶつかりそうになったときに真田に助けてもらった覚えがある。
 そのときに、言われた。

 確かに、ドジなのだろうが、そんなことを言われたのは初めてで、しかし嫌ではなかった。
 珍しく、口元に困ったような笑みを浮かべて言った、あの真田の顔を忘れられないだけだ。
 ただ、それだけだ。














 真田が、とてつもなく好きで、たまらないのだと気づいた瞬間、仁王はうずくまってしまった。
 顔が真っ赤になる。
「あー、好きなんじゃ」
 それが、たとえ電車の中であろうと、子供に「へんなおにーちゃんがいる」と指をさされようと、そんなの関係ない。
 ごとごとと揺れる。
 気持ちも揺さぶられるようだった。









































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