パロデ
□声すら愛しくて
1ページ/1ページ
「コレ、俺の番号」
そう言って手渡せれたは良いが、どうやって電話すれば良いか分からない。
どうやって、って云うか何の用事で?
それに、相手がもし電話に出てしまったら、普通に"もしもし"って始めて良いのか。
いや、何か、こう、"もしもし"ではいけない気がしてならなくて。
なんつーか、自分らしくない。
すっごく、女々しい気がする。
「あー、どうすっかなー」
やっぱり、いきなり俺なんかから電話掛かってきても迷惑なだけなんじゃないかな。
リナリーや綺麗なお姉さん達からの電話なら別だと思うが。
「うしっ!!電話、掛けてみっかな」
気合いを込めて携帯を握り締める。
手は、じんわりと汗で滲み、携帯を握る手は馬鹿みたいに震えている。
電話を掛けるだけなのに、馬鹿みたい。何に怯えているのかさえ分からない。
あぁ、もう、焦れったい!!
自分で自分に叱咤して、もう一度、携帯を見つめ直す。
先生から貰ったメモに書かれた乱雑な数字をゆっくりと、間違えないように携帯に打ち出していく。
ふぅと、緊張して息を吐き出して、通話ボタンに指を伸ばす。プルプルとボタンに伸ばされた親指がさっき以上に震え出す。
「…っ、えいっ!!」
押しちまったさ…、ってそれより、通じてんの?
携帯に耳を当てると、プルルル、と無機質でエンドレスな通話音が流れていた。
なぁんだ、繋がんないんじゃん。
ちょっと、ホッとした。と同時にちょっと、寂しかった。
せっかく人が勇気を込めて掛けてやったのにさー。
ガチャ、と云う音と共に先生の面倒くさそうな"あー?"と云う声が聞こえた。
が、俺はいきなりの事にビックリして、無言で電話を切ってしまった。
「…やっちまったさ」
無言で切るとか最低じゃん!!
馬鹿っ、俺のバカーッ!!
絶望に打ちひしがれていると、ブブブ、と携帯が震えている。
色んな色で点滅している携帯を開け、ディスプレイに目を付けた。
「ん?登録されてない番号からさ…、怖いなー」
恐る恐る、通話ボタンをゆっくりと押す。
「っはい」
勢い良く返事をすると、見知った声が耳元で響いた。
「さっきの、お前だよな?」
「…、スイマセン」
「やっぱりそうか。何で何も言わず切った」
「…いやー、その。…何つーか」
「何だ、言え」
軽く命令口調ですか。
「だって、その…、照れくさいじゃん…、電話って」
「…ぷっ、何だ、そんな事か」
…人の苦労を笑ったさ。頑張ったのに。
「そんな事じゃないさっ!!俺にとっては」
「まぁ、そんな怒るな」
「…人の話遮るなさ。…んで?何のようさ」
「簡潔に言うとだな、ラビの声が聞きたかった」
「……、言われたコッチが恥ずかしいさ」
「ん?そうか?」
「もう、先生に電話掛けませんーっ」
「ま、そう言いながらも泣きながら掛けてくるだろうな」
「っ、バカッ」ブツリッ
ふん、兎にしては良い度胸だ。バカの一言残して切りやがった。
今度、会った時は絶対許さねェ。
まぁ、燃料補給になったしこんなガラクタにも使い道が出来たな。
数日後
…、あんの兎。
また、電話してきやがったか。
……、うるせェ。
クロスよりもラビの方が頻度に電話を掛ける様になりました。
教訓;何事も程々に。
END
―‐―‐―‐―‐―‐―‐
焦れったいラビが
描きたかったんです…
予想以上に長くなったorz