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□あいつの横顔
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暫く話しながら歩いていると
「着きましたよ。ここです」
そこは町を一望できる丘の上だった
心なしか空が少し明るくなってきた気がする――
しんと静まり返っている町を見ていると
「後10分ってところですかね」
古泉は自身の腕時計を見ながら呟いた
何がだ?
「日の出の時刻ですよ。今日は6時52分に太陽が出てくるんです。…ご存知なかったのですか?」
あぁ、知らないね。
今日はゆっくりと寝てる予定だったから、太陽が昇ってくる時間なんて
「そんなこと仰らず。凄くきれいなんですから。…ぁ、きました」
古泉の発した言葉と同時にあげた視線に移ったのは、
丘の下に佇む町全体が赤く染まり、水平線の向こうはまるで燃えているかのように真っ赤になっている光景だった。
その光景を見た瞬間に、俺は今までの気だるさから開放され
きれいだな
とぼそっと呟いていた。
その間も太陽はどんどん昇ってきて――
真っ赤に燃える水平線から段々と町を覆っていった。
太陽は昇るにつれて円の形へと成して行くのが分かった。
完全に水平線から顔を出した太陽が真っ赤な円となって俺の目の前にある。
こんなにゆっくり日の出を見たのは何年ぶりだろう。もしかしたら初めてかもしれない。
「明けましておめでとうございます。」
あぁ、あけましておめでとう。
太陽の色が変わり始めたころ、
俺たちは毎年のように交わす新年の挨拶をした。
古泉はそう言うとまた水平線に目を向けた。
俺も古泉に合わせるように水平線に目をやった