万のお部屋

□毎朝の日課
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「…ん……」

微睡みの中、瞼越しに感じる、朝の光。

まだ眠っていたくて、暖かな布団を手繰り寄せる。

「…あきら……」

「……ぅん………」

夢の中、柔らかなものに包まれている感じ。

「…あ〜…きら…」

「…ん…くすぐったい………」

何かが顔に触れてるようで、気持ち良くて、だけど、くすぐったくて、体を捩る。

「…かーわいいな、明……」

頬に、額に、耳朶に。

何度も何度も、それは触れて。

「…な、に……」

重い瞼をどうにか開ければ、眩しい朝日と、見慣れた笑顔。

「…あ、起きた?」

「…のー…とん……?」

名前を呼べば、のーとんは微笑み、俺に口付けで返す。

「…ぅ…ん………」

覚醒前の俺の頭は、正常には働いてくれなくて、ただぼんやりと、その行為を受け入れる。

「…っ…のーとん……なに、して……」

さらさらと、俺の頭を撫でるのーとん。
気持ち良くて、また眠ってしまいそうだ。

「…何って、……おはようのチュー?」

そう言うと、ただ押し当てていただけのキスから、激しいキスへと変わる。

「…っん!!」

少し開いた口内に、のーとんの熱い舌がねじ込まれ、いまだ寝ぼけた俺の舌に絡ませて、吸い付く。

「…っのー、とんっ…!」

その強過ぎる刺激に、俺は一気に覚醒する。

「…っやめんか!ボケェー!!朝っぱらからーー!」

「ゲフーーッッ!!」

思い切りのーとんの顔に鉄拳を食らわす。

「ひどいよ、ひどいよぉぉ!!殴るなんて、明のばかぁぁぁぁ!!」

「やかましい!お前が朝から変なことするからだろ!」

「変なことじゃないもん!おはようのチューだもん!」

そう言って、飛びついてきたのーとんに、今度は蹴りを食らわせる。

「ひーどーいー!さっきの明は、あんなに可愛かったのに!」

「黙れ、エロ生物!」

「…明、もっかいしたい」

「………何を」

「おはようのチュー……」

「ダ・メ・だ!」

「…明……」

「…う……」

熱を持った、真剣な瞳に見つめられて一瞬怯む。

こいつ、顔だけはいいからな。

「明……」

「…だ、ダメなものはダメ!」

俺がそう声を上げれば、のーとんは諦めたのか、身を屈め。

明らかに落ち込んでいる。

少し腫れた頬が痛々しい。

……ちょっと、言い過ぎた、か?

「…のーと……」

「あ、じゃあ、それがダメならおはようのセック……」

「余計いかんわぁぁぁ!」

前言撤回!

「何さ!明のケチ!勃ってるくせに!」

「んな!!あ、朝なんだからしょーがないだろ!!そーいうお前はどうなんだよ?!」

「うん?僕?僕も勃ってるよ」

「は………」

恥ずかし気もなく言ったのーとんに、言葉が詰まる。

「明の寝顔見てたら勃っちゃった。ほら……」

「へ……?」

手を取られ、そのままのーとんの下半身へと導かれる。

「なっ!何触らしとんじゃ!ボケェッ!!」

手を振り払って、殴ろうと思うのに、思ったより力が強くて、振り解けない。

「ね、明……。しようよ」

「や、…だ………」

のーとんの顔が、すぐ近くに来る。

あ、キスされそう…。

「…明…」

「…だって、…昨日もした…」

「今日もしたい」

「…そん…な……」

「明日もしたい。明後日もしたい。毎日したい。ずっと、してたい……」

囁きながら、優しいキスを繰り返す。

「……のーとんの、あほ………」

結局最後は、キスも、のーとん自身も受け入れてしまう。

「明、好きだよ……」

「…うん……」

俺も、のーとんが好きだから。





《終わり》
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