27のお部屋

□雨のち、?。
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本日は晴天。


――ザザァァーー……


…ではなくて、バケツをひっくり返したような土砂降りの雨。

「うーわー、サイアク……」

俺は今日も居残り補習で。

いつもはいるはずの獄寺君や山本も、急用があるとかで帰ってしまった。

「………この雨の中帰るのか……」

雨が止むまで学校で待っていてもいいけど、この雨はちょっとやそっとじゃ止みそうにない。

「………仕方ない」

俺は覚悟を決めて、雨の中を走り出した。

(……あれ…?)

校門を潜ろうとして、見知った顔を見つけて立ち止まる。

(………ヒバリさん)

真っ黒い傘を差して、壁に寄りかかるようにして立っている。

何してるんだろう。
そう思ったけど、触らぬ神に祟り無し。

さっさと通り抜けて――。

「――沢田綱吉」

ビクッ

目が合ってしまった。

「………………。
わお。濡れ鼠かい?さすがは草食動物だね」

からかっているのか、いや、たぶんきっと特に何も考えていないんだろうな。
さして興味も無さそうにそう言う。

ザァァーー……

大量の雨が体を打って、服が絡みついて気持ちが悪い。

「………傘は?」

「………忘れました」

「君、馬鹿?今日は雨降るって言ってたでしょ?」

「置き傘が、あるはずだったんです……」

ふう、って、ため息が聞こえて、自分が差している黒い傘を見つめる。

「……ヒバリさん?」

パサっと傘を閉じ、俺の前に差し出す。

「………え?」

もしかして、貸してくれる……のか?

「…あ…ありが……」

スッ。俺が手を出すと、ススー。と、傘ごと手を引っ込めるヒバリさん。

「へ?」

「貸さないよ」

“カサ”だけにですか?ヒバリさん…。

……て、ヒバリさんがそんなサムいギャグ言わないよな。

いや、そんなことはどうでもよくて。

そうですよね。
ヒバリさんに限って。
他人のものを奪うことはあっても、貸すなんてことはありませんよね。

「君、今、失礼なこと考えたでしょ?」

「いいいいえっ!そんなっ滅相もない!!」

「気に入らないね」

グイ、腕を取られて、ズンズン歩き出すヒバリさん。

「うわっ!?ヒバリさん!?」

無言のまま、俺の手を引いて早歩きで歩いていく。
俺は躓いて、何度か転びそうになった。

「ひ、ヒバリさん??……あ、あれ?!傘は?!差さないんですか?」

傘は閉じられたままで、そんなに時間は経っていないのに、ヒバリさんの学ランは、もう大量の雨を含んでいて。
ヒバリさんも立派に濡れ鼠だ。
そんなこと言ったら、咬み殺されちゃうだろうから、口が裂けても言えないけど。

「また失礼なこと考えたね?」

「い!?いいいいえっ!!」

「………たまにはこういうのも悪くない」

「――…え?」

「濡れて帰るのも、ね」

雨は全く止む気配はなくて、もう全身びしょ濡れで気分は最悪なのに、ヒバリさんはなぜかどこか楽しそうで。

その横顔に、不覚にも見惚れてしまって。

抵抗することさえ、忘れてしまっていた。

まあ、怖くて抵抗なんて、できないんだけどさ。




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