愛を込めてv

□あけおめ!
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「あけましておめでとうございます。」

「…」


年も明けた深夜一時。
突然の訪問者に、私は玄関先で固まった。
ここは紛れもなく地球で日本の私の家の玄関。
後ろでお母さんが、あら彼氏?なんて言いながら通りすぎた所で、はっと我に返る。


「ちょっと、なんで!」

「陛下のお供で。少し時間をもらって来ました。」


にこやかな笑みを浮かべるコンラッドは、気付けば晴れ着姿だった。
…まぁ、だいたい予想がつく。
おそらく有利のお母さんに着付けられたんだろう。


「はつもうで、行きませんか?」

「……10分待って!」

「了解。」




慌てて着替えて、髪を整えて、30分後には近くの神社に来ていた。

…が、コンラッドはどうやったって目立ちすぎる。
すれ違う人すれ違う人が揃って私の隣に目を留めた。
女の人は勿論、男の人だって羨望の眼差し。
はぁ、と一つ小さく溜め息を吐いてコンラッドを見上げたけど、当の本人はそんな事どこ吹く風。
ん?と嬉しそうな笑顔でこちらを窺っている。


「ニ礼ニ拍手一礼のあと、お願い事をするんだよ。」

「分かりました。」


そんな話をしながら人混みに揉まれつつ、
なんとか辿り着き、さっさと目的を果たして帰ろうと、賽銭を投げ入れた。
隣のコンラッドと顔を見合わせながら、言った通りにニ礼してニ拍手して一礼。


とその時、ドンッと何かがぶつかった。


「うわっ!」

「おっと、大丈夫?」


すっぽりと後ろから抱き留めたコンラッドを見上げると、危ないな、と呟いた。
上から見下ろす優しげな眼差しに心臓が騒ぐ。


「だ、大丈夫!ほら、お参りしなきゃ…」


慌てて離れようとすると、両の手を包み込まれてそのまま私の目の前で4つの手が重なった。次いで、頭の上に囁かれた言葉。


「はい、どうぞ。」


…この体勢でお参りしろと言うんですか!
嬉しいけど、周りの視線が痛い…のは、どうやら私だけみたいだ。

今年もやっぱり敵わない。



そんなことを思い知った年の初め。

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