すとろべりぃパフェ
□成敗
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三上「で?これがお前の言う考えか」
あいの話を聞いた翌週の日曜日、あたしと三上先輩は電車の中にいた。
そう、あたしの考えとは同じ曜日、同じ時間の電車に乗り、痴漢野郎と接触を計る…いわば囮作戦なのだ。
三上「同じ電車に現れんのかよ?」
リノ「痴漢野郎はあいの件が大した騒ぎになってないから決して失敗とは思ってないはず。なら、この時間、同じ電車で再犯をする可能性は極めて大きい。…必ず現れるわ」
混み具合、女性が一人で利用することが多い時間から考えても、また実行できると踏んでいるはず。
三上「だからってなんで俺まで一緒に来なきゃなんねぇんだよ…」
リノ「こういうのには目撃者が必要なんですよ!!」
三上「俺じゃなくてもいいだろ。藤代とか水野が行きたがってたじゃねえか」
リノ「……藤代は車内で騒ぎそうだし、竜也はあたしのこと徹底的にガードしそうだし。だから笠井くんには二人がついてこないように監視役を頼んだんです」
三上「渋沢は?」
リノ「渋沢先輩は駄目ですよ。なんか珍しく熱くなってるから。そう思うと判断力あり、視野の広い三上先輩が最適かなって」
腕を組んで頷きながら言うあたしに「わかってんじゃねえか」とご満悦な様子の三上先輩。
リノ「ハイハイ。じゃあそういう事で」
三上「なんだその適当な返しは!?」
今度は怒りだした三上先輩は放っておこう。
「まもなく○○駅ー。左側のドアが開きます」
リノ「とにかく、次の駅からは混雑が予想されるんで、あたしから少し離れて周りの様子を見ていて下さいね」
三上「へーへー」
三上先輩が返事をするや否や左側の扉が開いた。
…でも
三上「うおっ!」
リノ「ぎゃっ!?」
あたしたちが予想した以上の人が乗り込んできた。
リノ「…三上先輩」
三上「あ?」
リノ「あたしから少し離れてって言いましたよね?」
三上「しょうがねぇだろ。押されたんだから」
リノ「こんな扉側に追いやられたら囮になった意味ないじゃないですか」
三上「だから!しょうがねぇだろうが!予想以上に人が入ってきちまったんだから」
今、あまりの乗車数にあたしは開いた扉とは反対側の扉に背を付けていた。あたしの顔の横に三上先輩の腕がある。
つまり扉と三上先輩に挟まれ物凄く近い状態。
三上「ったく、いくらなんでも多すぎだろ」
リノ「…三上先輩」
三上「んだよ?」
リノ「…耳元で喋んないで下さい」
三上「…へぇ〜、何?お前耳弱いの?」
リノ「っ!違いますよ!」
三上「へぇ〜」
と言いながらさらに耳に近づいて話す三上先輩。
やっぱりこの人性格悪いな…
そう思い、少しでもこの状態を逃れようと三上先輩を押し返していると、知らずうちに次の駅に着いていたらしく、さらに人が乗り込んできた。
リノ「ちょ、近いんですけど!」
三上「こればっか仕方ねぇだろ!」
人が増えあたしたちはさっきよりも密着する。
三上先輩の胸元に顔を埋める形になったまま、あまりの人の多さにため息をつき、ふと視線を横に向けると一人の女の子が目に映る。
その子は持っている鞄を握りしめ何かに耐えるような、今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべている。
それを見てピーンっと感じとった。
リノ「ち…」
三上「ち?」
リノ「痴漢よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
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