すとろべりぃパフェ

□球技大会
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――五月

春の爽やかさも薄れ、日差しは暖かく、初夏を知らせる季節。











リノ「納得いかない!!」




あたしの言葉にお弁当を食べる手を止め、全員視線を寄せる。




三上「何度目だよ、そのセリフ」

リノ「だって納得いかないんだもん!」

渋沢「そう言っても、既に決まってることだしな…」




あたしが不貞腐れ、怒っている理由。
それはこの時期に行われる球技大会について。



文武両道を掲げる武蔵森だが、それだけではなく他人との信頼関係を築くため、様々なイベントが設けられている。


その一つが球技大会。


この球技大会は、主に新入生が早く周りと親交を深められることを目的としているらしい。



主旨については別にいい…


あたしが言ってるのは競技だ。




リノ「男子だけサッカーなんてずるい!」




球技大会の競技は、男子は野球とサッカー。
女子はバレーとバスケ。


どうしても、これに納得いかない!




リノ「女子だってサッカーにしたらいいじゃん!」

笠井「希望する子が少ないんじゃない?」

リノ「あたしがいるよ!」

三上「お前一人でできねぇだろ」

リノ「なんとかなる!」

三上「ならねぇよ!!」




あたしの言い分にため息をつく面々。




リノ「なによ、自分たちはサッカーできるからって!」

藤代「俺、サッカーじゃねぇよ」

リノ「は?」

笠井「部活種目になるやつは、クラスで一人って決まってるんだよ。誠二と水野と俺は同じクラスだからサッカーは水野だけだよ」




そんな決まりあったんだ…
そういえば、うちのクラスのバレー部の子たちも言ってたような…




竜也「だいたい、サッカーすることになったら、リノ無茶するだろ?」




色々思い返しているところで、竜也の言葉を聞いてムッとする。




リノ「そんなことないよ。ちゃんと限度を考えてやるもん!ねぇ、あい!」

あい「え?!」

三上「いきなり遠藤に振ってもわかんねぇだろ」

渋沢「遠藤さん気にしなくていいから」

あい「いえ、大丈夫ですよ。それよりも、リノ」

リノ「ん?」

あい「リノってサッカーできるの?」

リノ「うん!中学のときは女子サッカー部だったんだよ」




ブイサインつきで答えると、あいはみるみるうちに目をキラキラさせていく。




あい「すごい!!」




顔の近くで両手を握りしめ、普段より大きな声で言うあいに少し驚いた。




あい「女の子でサッカーできるなんて、かっこいい!」

リノ「いやぁ、そんなことないよ〜」




あいに褒められて、悪い気は一切しない。

よしっ!決めた。




リノ「あたし、やっぱサッカーやる!男子に交ざってでも」

竜也「リノっ!」

あい「あ、でもね。サッカーできちゃうくらいだから、他のスポーツでもリノはかっこいいと思うの。だからバスケ頑張ってね」




………………………………。








リノ「あたしバスケやる!!」

藤代「切り替え早っ!!」

リノ「あいに言われたらやるしかないでしょ!」




そうと決ればすっきりした!!お昼の続きをしよう!

あたしはウキウキしながらお弁当に手をつける。




三上「…お前、工藤扱うの巧いな」

あい「え?!あ、扱ってなんてないです!私は思ったことを言っただけで…」

藤代「遠藤のそういうとこが可愛いんだよね〜」

あい「え!?」

リノ「藤代く〜ん?あたしの目の前であい口説くたぁいい度胸ね。これでも食らえ!」

藤代「ぎゃー!人参はやめてぇ!」




左手のフォークに刺さる人参を無理矢理藤代の口に入れ込んだ。


油断も隙もあったもんじゃないわ。


人参を口に放り込んで藤代も静かになったところで、あいの方を見てにっこり笑う。




リノ「さ、お昼再開しよっ」




あいは戸惑ってるけど、竜也たちは藤代を可哀想な目で見て、何にも言わないで昼食を再開する。





さぁ!あいにかっこいいとこ見せるためにも頑張んなきゃ!





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