story

□drops
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カラカラ

カラカラ


そんな音に目を向ければ、楽しそうに缶の中を覗き込む

時任の姿があった。


「飴が食いたい」


時任が最近、嵌ったもの。

それが、どうやら今度は飴のようで。

凝りやすく、飽きっぽい時任の為に買ってきたのは、

色んな味がある缶入りのドロップス。

時任の興味が俺からドロップスに移ってしまったのがちょっとアレだけど、

楽しそうに缶を振ってる姿を見ると、どうしても顔が綻んでしまう。


「時任、俺にも一つちょうだい?」

「んー……久保ちゃん、ちょっと目瞑って」

「どうして、目を瞑るの?」

「食うまで何味か分かんなくて、楽しいだろ?」

「ああ、なるほど」


言われたとおり目を瞑ると、口元に飴が充てがわれた。

その飴を、時任の指ごと口に含んでしまう。


「久保ちゃんっ!俺の指まで食うなー!」

「だって、目瞑ってたんだもん。どうせなら、口移しでくれればいいのに」

「やるか、バカ!飴、何味だった?」

「イチゴ味」

「ふーん。普通だな」


そう言って、時任も目を瞑る。

缶を振り、手にした飴を口に入れた瞬間。


「げ、ハッカ・・・」


端正な顔を顰めて、そう呟いた。


「時任、ハッカ嫌い?」

「べつに、嫌いじゃねーけど」

「そう?」


でも、時任は「どうしよう」って表情をしたまま動かない。

嫌いなら嫌いって言えばいいのに。

ほんと、強がりなんだから。


「時任、こっち向いて?」


涙目で振り向いた時任の唇をキスで塞ぎ、ハッカと苺の飴を移し替える。


「口直し。ね?」


その後、ドロップスの缶を振る音が聞こえてくる事は無かった。

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