駄文短編
□苛立…《焦》
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ここに来て何日立ったのだろう……
一日中暗がりで、時間の感覚も薄れ、有るのは意味を持たない無限の時の流れと、失望感だけ………
「はぁ………」
ため息と共にベッドに沈む……
「ギィーィィ…」
扉が開き音も立てずに近寄って来る……
そして同じ言葉を吐く……
「起きろ…食事だ…だろっ!!」
「うっせーよっ!」
「バカの一つ覚えてみてーにっ…!!」
「どうした?機嫌が悪いな……」
食事を手にし、ベッドサイドに立つウルキオラの姿……
ふてくされた子供の様に反対側を向く…
サイドテーブルの上に食事を置くと響く声…
「食え……」
これも何時もと同じ言葉……
何時もなら「あぁ…」とやり過ごすのに、今日は反発する…
「要らねぇ…」
一護の顎を掴み、視線を絡ませる…
「食わないなら、押さえ付けて捩じ込むまでだ……」
「食いたくねーって言ってんだろっ!! 」
罵声する一護の襟足に腕を回し、掴み起こし低く言う…
「わかった……」
カップを手に取り自らの口に液体を含むと、一護の口に強引に流し込んだ。
不意を付かれた行動に、飲み込め無かった液体が、口角を伝って首筋を流れて行く…
「ゲホッ…ゲホッ…」
「なっ…何すんだよっ!」
掴まれた手を振り払うと、眉間に皺をよせ睨み付けた。
「今日はヤケに絡んで来るな……」
「うっせーよっ!」
「さっさと藍染のとこにでも行きやがれっ!」
「夕べ俺がここに居なかったのが、拗ねてる理由か……?」
(えっ……?)
自分でも気付かなかったイライラしていた理由……
「バッバカ野郎…っ!!」
「そんなんじゃねーっ!!」
強く言葉を返す程に、身体が熱くなる…
混乱する…何故だ…?
片時も離れずに側に居るウルキオラ…
なのに夕べは一晩中居なかった……
いつもある腕……
いつも聴こえる鼓動…
いつも感じる温もり…
独りの時間がこんなに不安で虚しいなんて…
ほとんど眠れ無かった……
「目が充血している…寝てないのか…?」
見透かされた様で羞恥心が襲い、顔が紅くなる…
コイツがドコで何をして様と、俺には関係ない……
でも気になって…
苛々して…
ムカつく…
(クソッ!何考えてんだ…俺は…?)
揺れる思い…
混乱する思考…
高まる感情…
堪えきれずに、口にする言葉……
「てめーは夕べ、ドコで何してやがった…?!」
「俺は大事な人質じゃねーのかよっ!」
「人質ほったらかして夜遊びかよっ!いい気なもんだぜっ!!」
皮肉たっぷりに悪タレを吐く…
呆れた様な眼差しで、小さくため息を付きながら、トレイに手を伸ばす…
「これを手に入れる為に、現世に行っていただけだ……」
ウルキオラが手にした見覚えのある物…
四角い板状の焦げ茶色の包に金色の文字…
「食いたいって、騒いでいただろう…?」
余りにも予想外の転回に、恥ずかしさに苛まれる…
「………ι」
言葉が出ない……
真っ赤なった顔を隠す様にシーツで覆う…
「食わないのか…?」
「………」
(バッカじゃねーの俺…ガキみてーにギャーギャー騒いで…)
(やべぇ…顔合わせられねぇ…クソッ!)
ビリビリと包を破く音が聞こえる…
甘いカカオの香りが、鼻腔から脳を刺激し、身体が欲する…
「おい……」
「食うよっ!」
シーツの隙間から手だけ出し伸ばす…
(まったく…どうしようもないガキだな…)
一護の姿に思わず口角が緩む…
伸ばした手首を掴み、ベッドに沈めながらシーツを剥がす…
耳まで紅くし、羞恥に揺れる瞳…
「パキッ…」
ウルキオラが口にし、それを割る……
音に反応し、見つめる一護に覆い被さる様に迫り、鼻先で止めた。
鼻先に有る欲を煽る香りに、吸い付けられる様に貪り付いた…
甘くて…
濃厚で…
蕩ける舌…
音を立て離れる唇…
「あぁ…」
物足りないと、言わんばかりの顔…
「もっ…と…」
「どっちを…?」
「両方と…も…」
「欲深いな……」
「だっ誰がっ!」
「口の回りがチョコだらけだ…」
「お前がやったんだろっお前が綺麗にしろよっ!」
「文句ばかりだな…」
「早く…くれよ…」
「で…久しぶりの味はどうだった…?」
「癖になりそぅ…」
二人の甘い時間はまだまだ続く……
end