駄文長編

□闇の太陽《革》
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その目付きは狂気に満ちて……



余りにも妖艶で……



全てモノをを狂わせる……





「グリムジョー…全然足りねぇ…もっとやろうぜ……」


ウルキオラを嘲笑うかのような挑発……舌を舐め擦り、グリムジョーの襟を掴み引き寄せた。


自ら滴る舌を突き出しグリムジョーの唇を濡らして行く……


その舌は受け身から攻めに変貌した。



「待て…てめぇっ!!」



グリムジョーの言葉を噤み舌を潜入させ、息も吐けぬ程深く絡め付けて来る……


甘く痺れる感覚に再び駆り立てられる欲望…


身体の芯が熱く疼き出す……



「そんなにヤリてーんなら、ブチ込んでやるぜっ!!」



一護の腰を掴み上げた瞬間、手が弾かれ一護の身体が宙に浮いた……



「……止め…ろ…!」


低く静かに響いた声は微かに震えていた…



「ウルキオラッ!てめぇ何しやがるっ!!」



グリムジョーの言葉に耳を貸す事も無く、一護の溝内に拳を放った……


「ゥグッ……」


「クソッ…あと少…し…だった…の……」


一護の意識は途絶え、ウルキオラの腕の中に崩れ込んだ……



目の前にある浅葱色が掴み掛かって罵声を上げる……



「黙ってねぇーで何とか言えっ!!」



「気付かなかったのか……?」

「今のは黒崎一護じゃない……」



静かに無感情の声が言う……



「チッ…じゃあ何だってんだぁっ……!!」



行き場を失った熱が感情になり、グリムジョーを苛立たせた。



「奴は……」



「黒崎一護の内に存在する虚だ………」



ウルキオラの言葉の意図が理解出来ずに険しい表情を見せる……



「言ってる意味が分からねぇ……どっちも黒崎一護に変わりねぇーだろがっ!!」





「無知だな……」


「奴は俺たちとは違う……一護と虚は一体化している訳では無いって事だ……」



「別の人格が在るって事か……?!」



「そういう事だ……」

「普段は巨大な霊圧で虚を平伏しているが、ザエルアポロの施した処置で、極限まで押さえ込まれた霊力では虚を平伏す事が出来なくなったって事だ……」

「元々一護の霊力を喰らって存在している虚だ……喰う物が無ければ、自ら思考を乗っ取り餌に喰い付くのは本能だろう……」

淡々と言葉を吐きながらも、表情は深刻な面持ちだった……



「餌を喰う……?」



「己の霊力を回復する為に、お前の霊力を喰らって事だ……」



「………っ!!」



グリムジョーが精を放った瞬間、黒く淀んだ霊圧が一護の身体に渦巻いた事が脳裏に甦った。


「奴の霊圧は既に一護の霊圧を上回っている……ただでさえ虚の霊子が濃い虚圏に居る以上早かれ遅かれ一護が虚になるのは時間の問題だ………」



ウルキオラの見解はまるで一護が虚になるのを拒むかのように聞こえた。



「好都合じゃねぇーかぁ…!」

「そもそも手駒にするつもりで、ここに連れて来たんじゃねぇーのかよっ!!」

「お前の口振りじゃあコイツが虚になるのが嫌みたいに聞こえるぜ……」



「…………」



グリムジョーの問い掛けに返事は無く、地面に有るシーツを拾い上げ一護を包み込むと抱き上げ歩き出す……



「ウルキオラ――ッ!」


「答えろっ!!」



足を止め振り返り、グリムジョーに問い掛ける……



「お前は何故一護が欲しかったんだ……?」



「何だそりゃ…?」



「何故抱きたかったかを聞いているんだ…」




漠然とした質問に直ぐに答えを出せずに口籠る……



「遣る相手なら腐る程居る……もう一護に近寄るな……」



「じゃあお前はどうなんだっ!!」

「何で…そいつに……黒崎一護に執着するっ!!」



一護を愛惜しむ眼差しで見つめ言う……



「俺にとって一護は無を照らす光……」

「存在する理由を導く者だ……」



胸を針で刺されたような痛みが走る……



(存在する理由……それが何だってんだ……っ!)


(俺がアイツを欲しいと思ったのは……)



包み込む暖かな……


闇を照らす……


さまよう道しるべの…





……………光…?





「完全に虚化すれば光は全て閉ざされる…」


「俺は光を護りたいだけだ……」


「その為なら手段を選ぶつもりも無い……」


再び歩き出すウルキオラの背中を見つめながら、揺るぎ無い決意の堅さを感じていた……



「もう…どうにもならねぇ……」


「藍染に逆らえる訳がねぇだろが……」



「クソッ………」



自分でも気付かなかった一護への感情……


絶大なる力の前に平伏すしかない無力さに打ち拉がれていた……





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