駄文長編

□闇の太陽《喪》
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闇の中を漂っている…



ここは何処だ…?



誰だ…お前…?



俺…は…誰だ……?






「……護………」



(何……?)



「一…護……」



(誰……?)



「一護!!」



声のする方へ意識が向かう……
ピクッと指先が動くと、ゆっくりと瞼が開いた。



まだはっきりと覚醒していない琥珀色の瞳に、ぼんやりとした光が差し込む……



「大丈夫か?」



人の気配を感じ、ゆっくり視線を向けると、翡翠色の瞳の白い男が覗き込むように立っていた。



上手く焦点の合わない琥珀色の瞳をもう一度瞬きし、辺りを見回す……



(何処だ…?)



「一護っ!」



強い口調の言葉に翡翠色の瞳に視線を戻し、ぼんやりと見つめる……



「今回の一件は、俺の管理能力の無さが招いた……」

「俺の責任だ……」



(すまない……)

最後の言葉は口にはしなかったが、心の中で呟いた……



反応を示さない一護が横たわるベッドに腰を下ろし、白い指が頬に微かに触れた。


「痛っ…!」


声にならない声と、痛みに歪む顔…
ビクッと身体が反応するが、その瞬間全身を物凄い激痛が襲った。


(身体が動かねぇ…)


「動くな……」



淡々と言葉を発する翡翠色の男からは、何の感情も感じられない…


だか、触れた所を包み混む霊圧は嫌ではなかった……
むしろ癒しさえ感じていた。



一護の身体から警戒心が消えて行く……



頬にあった焼ける様な痛みは、いつの間にか感じなくなっていた…


「わり…ぃ…」

掠れた小さな声が途切れ途切れ響く…



「喋るな…」

「傷口が開く…」



無感情で絶対的な口調にムッとなったが、今の一護は素直に言うことを聞くしかなかった…



それでも礼だけは言いたかった。



「誰か…知らねぇけど、手当てしてもらっ…ありがと……な。」





「………?!」





一護を包んでいた霊圧が消え、翡翠色の男は一護の発した言葉が、理解出来ない様な表情で琥珀色の瞳を見つめた。



「一……護?!」



確認する様に、その名を口するが、眉間に皺を寄せながら一護の口から出た言葉に耳を疑った。



「わ…りぃ…」

「それは…俺の…名前か…?」



翡翠色の瞳は動揺を隠せずに大きく見開いたまま、頬に触れていた白い指先は小刻みに震えていた……


「なっ何を言っている?!」

「黒崎一護っ!!」



「そぅか…黒崎…一護か……」



「ふざけてけているのかっ!!」



「わり…ぃ…マジで解らねえんだ……」

「ここが…何処かも…なぜ…ここに居るかも…」

「なんでこんな…ボロ…ボロかも……」



「ゴホッゴホッ……」


一気に出た言葉に噎せかえる。



「もう…いい…」

「喋るな…」



言葉もなく呆然とする翡翠色の男……
余りの空気の重さに耐えきれず、一護は再び言葉を口にした。



「なぁ…名…前…聞ぃて…もぃぃ…か?」





「………」





「お…ぃ…? 」



光を喪った様に冷たく淋しい翡翠色の瞳が揺れる…氷の様に冷たい掌が頬を包み込みながら、呟いた。





「ウルキオラ…シファー…」





「あり…がとな… 」

「ウルキオラ……」



慣れ親しんだ声で呼ばれているのに、そこにはいつもの暖かさも優しさも感じ取れなかった………


藍染様は何を考えている……
いったい何をしたんだ……



無意識に出た溜め息の様な吐息を吐きながら、ベッドから立ち上がると、扉の方へ歩き出した。


「ウル…」

「食事を持って来る」



一護の声を遮る様に、背を向けたままウルキオラが呟いた。



路頭をさまよう仔犬の様な声に、すがる様な琥珀色の瞳……



何にも屈しない強い意思と、眩しい位に光を放っていた一護の姿は欠片も残っていなかった。



扉が閉まる重い音がし、ウルキオラの気配が消えた。



独りになり困惑する思考に耐えきれずに、再び意識を手放す一護だった……





藍染の命で現世に赴いていたウルキオラ…いったい何があったのか、詳しい事情を聞かされていないウルキオラは真意を問う為に、虚夜宮の藍染の居る部屋へと向かっていた。






 

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