Short2
□Busker's a happy tone.
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Busker's a happy tone.
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ジタンは迷っていた。
それは道にとかでは無く、二つの選択肢である。
一つは、デート。この前会った可愛い女の子との約束。
もう一つは――女神の歌声と謳われる、ガーネット・ティル・アレクサンドロスの野外コンサート。
一月分のバイト代すべてを叩いて手に入れたチケット。
国の大手企業の社長令嬢であり、人気歌手の彼女がやる、初めての一般人向けの野外コンサートなのだ。
「だいたい、デートでそのコンサートに行けばいいじゃねぇか。」
「残念。チケットは一人分。前売券も普通のチケットももう完売したらしいしな。究極の選択って訳。」
「何が究極の選択だ。もう決まってるも同然のくせによく言うぜ。」
ハッ!とカウンターでグラスを磨いていたブランクがニヒルな笑みを零した。
「お前がそんなもんに興味があるなんて知らなかったな。」
「失礼だな、これでも音楽家の端くれなんだぜ?」
「たたが場末の喫茶店のピアニストだろ。」
「楽器ならほぼ演奏出来るんだけどなー!」
「歌に興味はなかったんだろ?」
「ああ。でも……彼女の歌は、よくわからないけど、凄く惹かれたんだ。」
そう、初めて彼女の歌声を聴いたときから――…
「んじゃ、時間に遅れるしもう行くな。言い訳は頼んだ!」
「誰が頼まれるか。」
そう言ってジタンは喫茶店を出て、コンサート会場へ向かった。