Short2

□Diva's love Song.
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Diva's love song.



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ホテルの一室から見える夕日に、ガーネットは溜め息をついた。


女神の歌声と呼ばれる彼女の歌のコンサートが夜からあるのだ。ガーネットはもう衣装に着替え、化粧も施してあり、あとは時を待つばかり。

しかし、ガーネットは憂鬱だった。



会社の社長である母。そして恵まれて育った私。昔から歌が好きで、母に褒められて、もっと上手くなって沢山の人に聴いてもらいたいと――思っていた。

それは叶ったわ。今私は、個人のコンサートが開催できるようになり、国の誰もが知る歌い手になった。


でも―……



「私……私は…――」



ガーネットは俯き、強く目をつむった。



いつも、礼儀正しくありなさい。誇り高い歌い手でありなさい。
私の、娘らしくありなさい――


じゃあ、自分は…?
自分らしくあってはいけないのかしら。一人の人間として、己をさらけ出す事は恥――なの?



「私、……私がわからないわ………お母様……」



ガーネットの唇から零れた呟きは、歌姫としてではなく、一人の少女の不安だった。


しかしそれも、暗くなりゆく広すぎる部屋に、誰にも聞いてもらえること無く静かに消えた。





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