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□好き?それとも……
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今日は黒魔道士の村に住んでいるビビがリンドブルム城に遊びにくる日。


そんなわけでリンドブルムの姫、エーコは朝から機嫌がよかった。
それから午後になってリンドブルム城にビビが来た。


『ビビ〜遅いわよ!!』

『え!?一応時間通りに来たんだけど……』


と少し驚いているビビにエーコは『冗談よ』と笑って言った。


それからエーコの部屋へ行き、色々話したりしていた。



『やっぱりエーコが黒魔道士の村に行けば良かったわ。お城だとあんまりはしゃげないもの。』


『う〜ん。たまにはこんな風ににゆったり話したりするのもいいんじゃない??あんまり城を抜け出すのは良くないし……』


エーコはむう、と頬をむくらました。


(あんたに会いに行くために城を抜け出してるんだけどーー!?)


『エーコ??』


『別に何でもないわ〜。』


エーコは心の中で『このニブチン!』と思いながらも少し笑って見せた。




それから2人はどちらかが言ったわけでもないのに、エーコの部屋にある本棚の本をとって読み始めた。

エーコは自分のベッドに寝っころび、ビビは椅子に座った。



少しの間の沈黙。
聞こえてきたのは数分に一回、本のページをめくる音と兵士達や城にいる者が話す声。


ビビは飽きたのか本を本棚にしまい部屋にある大きな窓から空を眺めていた。



それから数分後、ベッドに寝っころんで本を読んでいたエーコが、むくっと起き上がりこんな事をビビに聞いた。


『ねぇ。「好き」と「愛してる」、言われたらどっちが嬉しい??』

おそらくエーコの読んでいた本に「愛してる」や「好き」などという言葉が出てきたのだろう。


ビビは少し照れくさそうにかぶっているとんがり帽子をおさえて


『僕、愛してるとかよく分からないから、好きって言われた方が嬉しいかな。』


『やっぱりビビはそう言うと思ったわ〜。』


と、エーコは溜め息混じりにそう言った。


『エーコはどっちが嬉しい??』


今度は反対にビビがエーコに質問した。


『もっちろん!「愛してる」の方が嬉しいわっ!!』


腰に手をあて、胸を張って言ったエーコ。
そんなエーコにビビは


『どうして??』


と聞いた。


『愛してるって好きより上ってことだし、一番の愛情表現だと思うの。それに好きには色々あるじゃない??』


『うーん……。』


『………まあ、人それぞれって事ね!!』


『うん、そうだね。』


それからエーコはうんと頷き、再びベッドに寝っころび本を読み始めた。

ビビはそれと同時に、再び空を眺めた。



それから数十分後、エーコが再びビビに質問した。


『ねぇ、ビビ。』


『うん??』


まだ空を眺めていたビビは、目線をエーコへと移した。



『エーコのこと…好き??』


その質問にビビは、頷きながら


『もちろん「好き」だよ??』


自分で聞いておきながらエーコは頬を赤く染めた。それに自ら気付き、両手で頬をおさえた。


『うん、エーコも!!』


嬉しそうに笑って言ったエーコ。

『そっか……よかった!』


ビビも嬉しそうに言った。



(ねぇ、ビビ。その「好き」っていうのは「友達」として?それとも「恋愛」の好き??)


エーコは分かっていた。


(多分……友達としてだろうな。)


『エーコ??どうかした?』


少し顔を俯かせていたエーコを心配するビビ。


『好きって色んな意味があるわよね…。友達としてとか……。』

『うん?』


(……エーコには「愛してる」はまだ早いかな。)


エーコは頷き、こう言った。


『やっぱり好きって言われても嬉しいわね!!』

にっこり笑ったエーコ。



(例え、それが恋愛の「好き」じゃなくても。)



『うん!好きな人に言われたらもっと嬉しいね。』


『当たり前よ!そんなの!!……あー城の中ってやること無いわね!!街に遊びに行きましょ!あっ護衛はもちろん無しよ!!』


『え!?いいの??怒られない?』


なんたってエーコはリンドブルムの姫。

街に行くときは兵士の護衛が必要だ。


『あんなの(護衛)がいたら遊べないでしょ??それに……』


とエーコはビビを見る。


『??』


『ビビがエーコを守ってくれるでしょ??』


にかっと笑ったエーコ。

苦笑いをしたビビ。


しかしやがて、力強く


『うん、分かったよ!』
ビビも笑って言った。



それから二人は手を繋いで街に出掛けた。


リンドブルムの大公、またエーコの義父であるシドもビビがいるということで二人で街へ行かせた。

『あっ分かったわ!!』

街へ向かう途中エーコが何かひらめいたように言った。


『何が??』

ビビは不思議そうにエーコに聞いた。


エーコは首を横に振り、嬉しそうに


『何でもないわ。』
と言った。



(「好き」や「愛してる」って言われたら確かに嬉しいけど……)


エーコは繋いでいる手を上に挙げた。


『わっ!?』



(「好きな人」といる……これ以上嬉しいことはないのね!)



エーコは繋いでいる手を見て微笑んだ。
そんなエーコを見てビビも小さく微笑んだ。



END
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