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□消える温もりを
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この世界では、何より『強さ』が必要とされ、『金』を欲する。
俺はひたすら『強さ』を求めていた。
他者を信じず、
ただ生きるか死ぬか。
そんな日々だけが続く。
そんな世界に、ただ一人
変わり者がいた。
裏稼業界で、女は殆ど居ない。
ラニの様な奴もいるが、普段は雑魚扱いされる。力では圧倒的に女が不利だからだ。
でもそいつは、女だからというのに捕われず、確実な名声を手に入れていた。
用心棒じゃない。
殺し屋だった。
トレノで、噂を聞いて初めて会った時。
一番に目に映った、血に濡れて染まった様な艶やかな赤毛と瞳。
全身に纏う、黒い服。
そして微かに匂う、
血の、匂い。
印象的な、赤と黒。
言葉を交わす事は無かった。
お互いに目も、合わせなかった。
ただ、少しだけ興味が沸いた。