ローギア・ロータス

□剣と黒神編01
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この世界ローギア・ロータスを構築する神々の一柱に"黒い神"と呼ばれる神がいる。
かの神は闇と夜と破壊と死を司っており、世界の根源たる陰の領域を代表する神とされる。しかし、この神の存在をローギア・ロータスの民は知らない。否、限られた者だけが知る事ができるというのが正しいか。

例えば、禁断の魔道書(グリモア)。
例えば、徴を約束された存在。
例えば、脈絡と続く密やかなる血族。
例えば、知識の果て。

その治める領域ゆえに、その揮う力の強大さゆえに、"黒い神"は隠し神とされた。ほんの僅かな足跡だけが赦されて。
やがて同じ神々すらもかの神を忘れていく。居場所が減っていく。

孤独の檻に囲われた神。

しかし、黒い神には対となる双子神がいた。対極の力を司るその神は、独りにされていく片割れに心を痛める。しかし、対極だから傍にいることは赦されない。
積もり募る心の痛み。嘆き。片割れの悲しみに添う事ができない狂おしい程の苦しみ。
やがて痛みは限界を迎える。
気が狂う寸前に双子神は痛みを吐き出した。
すると。
悲哀に満ちた痛みからは、双子神の領分たる一筋の光が生まれた。弱々しく朧気だが、確かにある煌き。

「この光はやがて君を孤独から解放する」
自分から生まれた光を手に黒い神へと告げる。
光は応える様に一瞬だけ煌きを強くして、やがて人の世へと降り立った。
「千の苦しみを超えて、あの光はやがて徴を得る。そうしたら迎えにいくといい」
黒い神は頷くと、その夜よりも闇よりも深い眼差しを一度だけ人界へ向けた。



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