Short and Request

□小話
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「やっぱりここから見る海が一番綺麗だ」

「そうだな……」

 俺の隣に並んで立つ金髪の女性の言葉に賛成の意を込めた返答をする。

「本当によかったのか?」

「ん?」

「その、あいつと一緒に行かなくて……」

 嗚呼、そんな事。

「別にいいんだ。あいつ……いや、”あいつら”も好きだけど、それ以上に大切にしたい奴がいるからな」

 自分でも驚くくらいくさい台詞が口から出る。
 思わず口に手をあててしまったのは内緒だ。

「それに……ここじゃなきゃこの景色が見れないしな」

 いつも気晴らしに来る、俺とこいつしか知らない秘密の場所。
 潮の薫りがする、頬を撫でる風。雲がゆっくりと流れる青い空。砂浜に寄せる波の音。やっぱり本物がいい。

「だが……」

「いいんだ。俺はお前を支えると自分自身に誓ったから」

 尚も言い淀む彼女の手を握る。
 暖かい。太陽みたいな暖かさ。金髪だしなぁ――なんて馬鹿な事を考えていると、手を握る力が強まった。

「私はっ、独占欲が凄いぞ?……それに男みたいな性格だしっ」

 そんな事か。まぁそんな事を言ってしまえば、ピンクのお姫様も、栗色のジャーナリストも、紅い姉妹も、皆独占欲が強いし、下手な時なんかは俺よりも男らしい。

「……カガリ」

「なっ、なんだ?!」

 そんなに身構えるなよ。少しショックだろうが。

「ラクスやミリィやルナやメイリンが何を言おうと、俺が愛しているのはお前だけなんだよ――カガリ・ユラ・アスハ」

「――っ?!」

 面白いくらいに顔を真っ赤にする彼女。女らしいじゃないか。

「お前は?」

 それが何だか面白くて、カガリの気持ちを分かっていながら返答を待つ。

「わわ、私もっ!……お前を、愛して、いる」

「くくく……よく出来ました」

 尻窄みな言葉ながらも、ちゃんと言えた彼女にキスを贈る。
 ふと感じる。
 今なら恥ずかしくて言えなかった理由を――何故、何の為に戦かったかを、金髪が眩しい彼女に言える気がするんだ。

「俺は……海を、空を、人を、この世界を――カガリとの世界を護る為に戦ったんだ」

「……本当に、お前は私を泣かせる天才だな」

 そういったカガリの頬には一筋の涙の後が。

「ん?悲しいか?」

「いや……幸せだっ!」

 最高の泣き笑いを魅せ、勢いよく抱き着いてくるこいつを一生護ると、俺はこの景色に誓った。



 ちなみに後日、何処からかこの日の出来事が周りの連中の耳に入ってしまい、カガリは暫く青い顔をしていた(ラクス、ミリィとホーク姉妹から、トラウマ的な何かを植え付けられたとかなんとか)。
 きっと、キラ、アスラン、シンはとばっちりを喰らっただろう……憐れ。瞼の裏に映る戦友達に合掌。




(なんつーか……やっぱり平和だな)







 

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