ー龍達の宴ー

□ー迫る闇の世界ー
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彼女は、トランスの反動で、体力を消耗した。

「はぁ・・・まさか相殺するなんて」
「玲奈、ここは僕に任せて」
「でも・・・」
「友達を見殺しにできるほど僕は、冷酷な人間じゃない。僕だって、黒龍は許せない。だから、玲奈は雅也のそばにいてあげて?」
「う・・・うん」

玲奈は、眠る雅也の元に駆けつけた。

「ほほう、妹だけでも生かすのか」
「いや、みんなで生きるんだ」
「だが、俺様にかなう人間などいない!」
「何も人間ばかりが、あなたの相手ではない」
「なんだと!!」

和純は真正面から、黒龍に切りかかった。

「それで攻撃したつもりか?甘いわ!!」

黒龍は、突風で和純を飛ばした。

だが、和純は果敢に黒龍にせまっていく。

「なんだこのしつこさは!!勝てる可能性もないというのに」
「じいちゃん仕込みです!!じいちゃんは世界で一番執念深い人ですから!!」
「なるほど。だが、執念深すぎるのは感心できないな!!」

黒龍は和純の剣をへし折った。
さらに、和純の首筋を再び締め付けた。

「所詮、剣士は剣士。剣がなければただの人間も同然」

しかし和純はいたって平然としている。

「それはどうかな?」

和純は不敵に笑みを浮かべた。

「何がおかしい」

その瞬間、霧が現れた。

その間に、和純は『練成』を唱えて、剣を複製したのだ。

「貴様何者だ!!」
「僕は佐伯和純だ!!それ以上でもそれ以下でもない!!」

洞窟にいた、景は、彼の声を聞いてあることに気づいた。

「まさかあの声は、あのオバケ先輩なの!?」

景と一緒にいたクラスメイトも同じく驚いた。

「あの根暗で有名な源先輩が、クリスタルキャッスルの第一王子である佐伯和純と同一人物だったなんて!!なんて偶然」

景はあることを決心した。

「私達も、先輩達をサポートしよう!!」
「景がそう言うならしよう」

すると、景達は雅也に駆けつけた。

「あなたは・・・」
「戸川雅也の妹です。私達に出来ることがあれば言ってください!!」

玲奈は、景にこう言った。

「今すぐ、雅くんを助けてあげて。私には暗黒魔法しか使えない。それに雅くんが必要なの!!」
「分かりました、すぐに治します」
「そんなことできるの? 」
「えぇ、私達はエスパーが使えますから」

景は、『心からの治癒』を唱えた。

するとみるみるうちに雅也の傷が消えていった。

彼が目を覚ました時、玲奈はこう言った。

「妹さんが治してくれたのよ?」
「景が?そうなん?」
「うん!お兄さん、オバケ先輩がんばってるから、私もがんばってみた」
「さよか、ありがとうな。なら、景らは、逃げ遅れた難民を最果ての町までテレポートで送ってくれるか?」
「うん!やってみるよ」

景達は、難民を助けるために去っていった。

雅也は玲奈に合図した。

玲奈は、南に行った。

『1』

『2』

「『魔方陣・闇包み』」

すると再び、巨大な魔方陣が現れた。

しかし、突然その魔方陣が消えてしまった。

黒龍が無効化を唱えたのだ。

「甘いな。一度使った技ならどんな技も打ち消すことが、この俺様にはできるのだ!!」

すると、黒龍は玲奈と雅也の影を踏んで動きを封じてしまった。

黒龍は玲奈の方に向かった。

「先にお前から死なせてやろう!!」
「やめんかー!!」

雅也は叫んだ。

「残念だがその体で、お前に何ができると言うのだ」
「玲奈ちゃんには指1本触れるな!!」
「何故?」
「俺の唯一の希望の光だからや!玲奈ちゃんは俺の太陽や!!」

黒龍は雅也の発言に驚いた。

「加えて言うなら、和純は月。優しく包む月や!お前なんかな…お前なんか…へでもないわ!!」
「雅くん!それ以上挑発しちゃだめー!!」


しかし時すでに遅しだった。

黒龍は雅也目掛けて、巨大な暗黒玉を投げ付けた。

雅也は、白百合の花畑の敷地から数十メートル飛ばされた。

「いやぁあああああ!!」

玲奈の悲鳴が響いた瞬間、和純の体に異変が起こった。

(まさか…あの雅也が!!)

彼の瞳が青白く染まった。

そして、和純の結わえていた髪が解けた。

(雅也を傷つけた黒龍に対する、怒りは半端じゃないってことか・・・和純)

しかし、彼の瞳が青から紫に変わった。

(まさか・・・闇トランスをする気か!?)

彼の身の危険を感じた瑠宇は、言うより早く彼の背後からだきしめたのだ。

「ダメだ!!トランスをすぐにやめろ!!」
「止めるな!!瑠宇」
「でも、闇化すれば黒龍の思う壺だろ!!!」
「でも、止まらないんだ。君まで巻き込んでしまう!!」
「それでも、私は止める!」

すると、オーラだけで瑠宇を飛ばしてしまった。

それを見たレバインはなんともいえぬ怒りを覚えた。

「和純!!貴様!!瑠宇に何をした!!」

レバインは彼に剣を向けた。

和純は、瑠宇を見た。

「そ・・・そんな」
「やはり和純もデーモンの血が流れている!!だから瑠宇を吹き飛ばした」
「違う!!これは・・・」

その間に、デーモンは和純の眼を羽で隠した。

「やはり、お前も俺様の血が流れていた。はははあわれなものだな。他の一族には軽蔑され、影として生きる道しかない。だから、俺様と一緒にこの世界を闇に染めようじゃないか。そうすればお前は散々馬鹿にされた輩を見返すチャンスじゃないか!!」

すると、瑠宇が起き上がった。

「マインドコントロールする気だ。和純!!騙されるな!」
「でも、そう言えば、僕は誰かに必要とされた自覚がない」
「そうだろ?闇族だけで、こんなにも不条理な扱いを受けるだろ?どうだ。俺様と手を組めば、他の人間も解放してやれるが」

黒龍は、わざと甘ったるい声を出して、和純の心を乱す。

「たしかにこれ以上戦っても、死人が出るし、戦い自体に意味がない気がする・・・」
「だろ?」
「だから、僕・・・」

瑠宇はいてもたってもいられなかったのか、和純に近づいた。

「瑠宇・・・」
「今のお前は本当のお前なんかじゃない!!」
「!!」

瑠宇は、和純の頬を何回もぶった。

「お前は、大切な人の仇を討つために強くなったんだ!今、それをやめてはならん!!ダークナイトも春代さんもドラゴンたちも浮かばれない!!」
「でも、戦いは・・・したくない」
「分かってる。だが、男は死ぬと分かってる戦いでも行く。それが、男だとダークナイトは、教えてくれた!!」
「やめて、僕を戦わせないで!!」

彼は激しい頭痛に襲われた。

「残念だが、こいつは俺様の術中にはまった、なんて素直で操られやすいやつなんだ。笑いさえ起こってくるぞ!!わはははは」

瑠宇が手を出す前に、レバインが黒龍の頬を渾身の力をこめて、はたいた。

しかもその衝撃が強かったので黒龍は一時的に気絶した。

そこでマインドコントロールの術が切れた。

「和純、そのまま目をつぶって質問に答えろ」

和純は、目を閉じた。

「お前は、どっちの味方をするんだ?」
「僕は・・・・」
「答え辛いか?迷っているのか?」
「・・・」
「素直に言って構わない」
「迷ってます。どちらについても僕の立場はあのころのまま」
「ならば、どうして瑠宇を吹き飛ばした」
「それは・・・分からない」
「分からない?」
「雅也が、吹き飛ばされて、急に怒りがこみ上げてトランスしたら、急に視界が真っ黒になった」
「そうか、故意ではなかったのか」
「故意どころか、僕はいまだに信じられない・・・」
「無意識なのか?」
「えぇ・・・。時々黒いものに襲われる感覚があるんです」
「それが闇化トランスだ」

和純は目を見開いた。

レバインは和純を連れて、黒龍から離れた。

「あの・・・あの技は?」
「たいしたことない。一時的な脳震盪を食らわせただけだ。後・・・瑠宇!」

瑠宇は、レバインの方を向いた。

「雅也は無事だ。和純は?」
「マインドコントロールは切れたみたいだ。でも、彼の奥底にある心の傷が深い。多分それが癒えない限り、彼はジョイントができない」

レバイン以外のメンバーは絶句した。

「あれは、双方の強い意志が続かないと、保てない技だ。だが、今の和純にはそれができない・・・」
「僕・・・」
「とにかく、黒龍が目覚めるまで私は和純のもとにいる」


雅也は反論した。

「今のうちに、倒せばええんとちゃうん?」
「あいにく、彼は潜在能力も高い。眠っていても力を遺憾なく発揮してくる」
「だから、眠ってる間は何もせえへんのが、得策なんか」
「あぁ、作戦会議も練り返せるからな」

レバインは一旦、和純を催眠術で眠らせた。

「雅也と玲奈は、もう一度魔方陣を作ってくれ」

レバインの指示に2人は頷いてすぐに、魔方陣を作り出した。

瑠宇は雅也にこう言った。

「私は笛を持ってくる。それまで保てるか?」
「任せとけ!」
「助かる!」

瑠宇はすぐにクリスタルキャッスルに戻った。

レバインは和純を抱き抱えて、聖なる湖に向かった。

「和純、お前はいったい何者なんだ?」
「ぼ…僕は…」

潜在的に眠る和純の意識が徐々に現れてくる。

「僕は、ジュニー王族とデーモン一族の混血…」
「お前はデーモンの手に染められたか…」
「分からない。でも、黒い靄が僕を襲った」

ここまでは前の答えと同じだった。

レバインはあることを聞いた。

「お前は、何のために戦う?」
「………」
「どうして戦おうと決意した?」

閉じられたはずの和純の瞳から一筋の涙が流れた。

「和純…」
「大切なものを…」
「大切なものを?」
「守るためです。でも、僕にはできない」
「できない?」
「僕はあまりにも無力で、大切な人さえも犠牲にした!!」

ダークナイト達のことである。

「だから僕にはできない」

すると、レバインは和純を抱き締めた。

和純は、体をびくつかせた。

「どうか、私を信じてほしい」
「レ…レバインさん…」
「お前には『聖』という希少価値があり、そして高貴な印がある」
「でも…」
「お前が戦わなきゃ、瑠宇の気持ちも浮かばれないぞ」
「る…瑠宇」
「あいつも、三龍を失ってから本来の明るさが色褪せてしまった。だから、あいつのためにも私を信じて一緒に戦ってほしい」

和純は、黙り込んだ。

レバインは正直焦っていた。

(あの黒龍のことだ。もうじき目を覚ましてしまう。どうにかして、和純を説得せねば)


その瞬間だった。

美しいフルートの音色が、聞こえてくる。

(この音色は!!)

レバインは音色がする方向に、振り返った。

すると、純平と瑠宇がやってきた。

「瑠宇から聞いた。和純は?」
「今、眠っています」
「そう。とにかく、和純の潜在能力をあげなければならない」
「こんな短時間で!?」
「やむを得ない」

純平はまたフルートを吹き出した。

(このメロディーは、私と和純が初めて出会った時に聞いたメロディーだ)

すると、和純は目を覚ました。

「懐かしい音色…」

和純は心底安心した顔で、3人を見た。

「和純、すぐに湖に入りなさい」

和純は半信半疑で湖の中に入った。

「いったい何をするつもりだ?」
「いいから見てろ。礼」
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