ー龍達の宴ー
□−受け継がれていく奥義−
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すると俊也は、レバインにだけこう言った。
『礼、和純がミスを犯したとしても寛大な心を持ってフォローしてやってほしい』
「どうして?」
『いかんせん彼はメンタル面はまだ強くはない。それに戦に慣れてるのはお前の方だからな』
「でも…」
『礼、お前が和純をリードしてほしい』
「私はまだ彼を」
『許したわけじゃない?違うだろ?信じられないんだろ?』
和純は俊也の話が気になった。
「じいちゃん?」
『あぁ。すまない礼と話していた』
「なにを?」
『さあな』
レバインは和純に近寄った。
「レバインさん?」
「和純。いや未来のジュニーZ世となるお前と協力するのは、これが最初で最後だから」
「え?」
「だって平和になれば、私達は瑠宇を巡って本気でやりあう運命にあるのだから」
「えぇ。だから、レバインさんよろしくお願いします」
2人は初めて握手を交わした。
「あぁ、早速だがジョイントの練習をダークナイトに教わろう」
俊也は純平を意識交信した。
純平はそれを察知してすぐさまバルコニーに向かった。
『純平、例の技をするぞ』
「禁じ手をするのか?そんなことしたら、お前の魂は本気で地獄に落ちてしまう。そして姉さんと永遠に離れてしまうんだぞ?」
俊也は純平の発言に苦笑した。
『春代と約束したんだ。例え、天空と地獄と離れたとしてもお互いを忘れない。そして俺は平和のために敢えて罪を犯す。純平、お前も地獄落ちするかもしれないから、あいつに知らせとけよ』
「分かってる。俊也、目閉じろ」
俊也は目を閉じた。
純平は彼の向かい合わせに立って目を閉じた。
その瞬間だった。
2人のオーラが光った。
さらに2人の印が光った。
2人の周りには強烈な風が吹き荒れて、バルコニーの窓がガタガタなり響いた。
和純とレバインはただその様子をじっと見守っていた。
しばらくして俊也と純平は目を開けて、同時にこう叫んだ。
『ジョイント!!』
その瞬間だった。
2人のオーラが2人を包み込んだのだ。
そしてオーラが完全に交ざり合った。
「こ…これがジョイント!!」
俊也と純平のオーラが消えた時、2人は完全に1人になっていた。
「これがジョイントだ」
「でも…2人の息が合わなければこの現象は起こすことができないはず…」
「その通りだ。しかもこのジョイントの持続時間は10分。後、2人の息が合わないと技も相乗効果を成さない」
すると、1人になった個体は2人に分かれた。
「な…なんで?」
「流石に霊魂とのジョイントは初めてだからな。まあ俺と俊也は元来気の合わない者同士だから、持続時間も短い」
『そういうことだ。つまり、どれだけ相手を信頼して戦えるかがこの技の鍵だな。後、必殺技を使う場合同じ技は相乗効果になるが、属性の違った技は相殺されてしまう』
すると、俊也の体が徐々に消えていく。
「じいちゃん!!」
『和純、あとは任せた』
「ダークナイト…」
『礼、最期まですまなかったな』
「俊也…」
『先に待ってる。でもあまり早く来るなよ』
「分かってるさ」
俊也の霊魂は完全に消えてしまった。
「悲しみにふけてる場合じゃない。ジョイントの練習だ!!」
それから純平の指揮をもとに和純とレバインは、奥義のジョイントを練習した。
しかし2人の息は少しも合わず、オーラすら交じり合わなかった。
純平は、困り果てた2人を見てこう言った。
「もう少し相手を信じてやれ。礼」
「………」
「和純は、お前のオーラと懸命に合わせようとしている」
すると、それを眺めていた雅也がこう言った。
「和純、レバインがオーラ合うまで目つぶっといたら?」
「うん!!」
和純は目を閉じた。
レバインは和純の真正面に立った。
「レバインさん、お願いします」
「分かった」
2人は深呼吸した。
「合図決めましょうか」
「そうだな」
和純はレバインの耳元でこう言った。
「1・2・3で2人に目を閉じるんです。このとき何も考えなくていいですから」
「あぁ」
2人はいったんお互いの目を見た。
「行きますよ」
『1』
『2』
『3』
和純の3の合図で2人は目を閉じた。
すると、前まで交じり合わなかったオーラが僅かながら交じったのだ。
雅也は純平のもとに駆け寄った。
「流石同じ血を引く人間らですね」
「まあね。しかし時間はそれほどない。後3日で黒龍はこの世界を滅びに現れる」
「俺達、勝てるでしょうか」
「それは正直分からない。だけど気持ちの上で押されては勝てない相手だよ」
すると、レバイン達のオーラが完全に消えてしまった。
「…やはり私達では無理な技なのか」
「はぁ…はぁ…はぁ」
2人は、疲れ果てていた。
すると瑠宇が聖龍に乗って、偵察から帰ってきた。
かなり慌てた様子である。
「和純!大変なことが起こった」
「とにかく王室で詳しく話して」
全員王室に行った。
「瑠宇、大変なことって何?」
「黒龍が、白百合の花畑にいる」
「じゃあそこが戦いの拠点になるんだね?」
「それに、黒い結界がかかって入れないんだ」
すると雅也は、かなり動揺した。
「あそこには妹の景やおとん、おかんがおるんよ。どないしよ…」
「今のところ害は与えてないみたいだから心配はいらん。それに黒龍のターゲットは、和純とレバインだ」
一同騒然となった。
「なななななんで僕達なの?」
「唯一脅威となる存在らしい。どうやら、和純やレバインが死ねばみな滅ぼされる。そしてそれを食い止めることができる人間はただ1人いやしない」
「じゃあ俺らは…」
「外の人間の安全を確保する。あとあの結界は日に日に巨大化している。全ての世界にあの黒い結界が広がった場合、無条件でこの世界は死滅する」
「じゃあはよいかんと…」
「雅也、いくらレバインや和純が強かったとしても、黒龍はそれを凌ぐ能力を持つ暗黒のドラゴンだ。うかつに行っても死ぬだけだ」
「けど、何もせえへんとこのまま世界の死滅を待つなんて絶対いやや!!」
雅也は、じだんだを踏んだ。
「雅也、今は落ち着こう」
「和純、あんた死ぬと分かってて偉い冷静やねんな」
「死ぬ?誰が決めたの?」
「誰が決めたのって?そんなんレベルの差だって凄まじいんやろ?負けるん必至やわ」
「いや、そうとも限らないわよ」
玲奈は皆より少し遅れて、王室に入った。
「玲奈ちゃん?」
「黒龍も元は人間だった。きっと彼にも弱点はある」
「例えば?」
「あの人だけには敵わないとか、これだけは嫌だとか」
すると、ジュニーがあることを思いついた。
「そうだ。黒龍は昔、私の恋人だったハリルに求婚してた」
しかし、和純が反論した。
「じゃあ、なぜ彼女を殺す真似をしたのですか?好きだったらなおさら・・・」
「そうやな。和純はそれを間近で見たんやし」
すると、瑠宇が顔を歪ませて、残酷なことを言った。
「愛より憎しみが増してしまう。そして自分ではどうすることも出来なくなった。だから、黒龍はハリルさえも殺した」
レバインは激しい憤りを感じた。
しかし、あることが脳裏をよぎった。
(私も、瑠宇を愛するあまり、彼女を叩いたこともある。それに瑠宇が大好きな和純にも・・・)
1人うつむくレバインに玲奈は心配そうな顔をした。
レバインは彼女と目が合った瞬間、
「どうかしたのか?デーモンの末裔よ」
「その言い方やめてくださいよ。あなたがあまりにも悲しい顔をなさるから」
「いや、これはお前に関係ない」
「あら、そう・・・」
「すまない。えっと・・・」
「玲奈です。呼べないならかまいません」
「いや、その・・・お前は、憎しみとか愛とか・・・」
「ないとは言えないです。だって、私は・・・」
怜奈は、最後まで言おうか言わないか迷った。
そんな様子を見た雅也が、怜奈のもとに駆けつけた。
「怜奈ちゃん?」
「なんでもないの」
「レバイン、なんか言ったんか?」
「ううん。ちょっとね・・・」
「話しかけるのは構わへん。やけど怜奈ちゃん困らせんといたって?」
「お前はデーモン一族であるこの娘が好きなのか?」
玲奈はますます困った顔をした。
「デーモン一族とかそんなん今は関係ないやろ!!」
雅也はレバインの胸倉を掴んだ。
玲奈ははじめて見る彼の怒りの表情に絶句した。
雅也はレバインの発言が、気に食わなかった。
彼は、血筋とかで好き嫌いを判断しない性格だ。
むしろ、そのことを言われるのを彼女が嫌うことを意識交信をしている雅也が、一番知っている。
だからこそレバインの発言が許せなかった。
「すまない。言葉が悪かったな」
「二度とそんなこと言わんとって?玲奈ちゃん困ってる顔見たないんよ」
「あぁ」
「じゃあ、ええわ。すまん。ささいなことで激昂して」
雅也は、レバインを解放した。
「話戻しませんか?」
「そうだな、黒龍の弱点についてもっと考えなきゃ」
しかし、誰も彼の致命的な弱点を探せぬまま、1日が終わってしまった。
翌朝、早朝に玲奈は雅也を呼び出した。
雅也は、玲奈とバルコニーに行った。
「どないしたん?」
「昨日、ありがとう」
「あぁ、あれか」
「私ね、正直言うとレバインさん苦手なの」
「俺もや」
「だって、血筋のこと平気で言うもん」
「そやな。でも、今は仲間やからあんまり言わんとこ」
「うん」
「で…話って?」
玲奈は途端に深刻な顔をした。
「実は、昨日お父さんに呼び出されて…」
「呼び出されて?」
「万が一、兄さんが死んだら、私がジュニーZ世を継がないといけないみたい」
雅也は絶句した。
そしてしばらく間を置いて、話し始めた。
「それは、玲奈ちゃんにとっては嫌やねんな?」
「うん。元々私、デーモンキャッスルにいた人間だし、クリスタルキャッスルの人々は、デーモン一族を酷く憎んでいるとお母さんに聞いたから。そう思うと怖いの。お兄さんだってそのことで昔集団暴力を受けたらしいから」
「そういう人もおるんは事実や。でも玲奈ちゃんは玲奈ちゃんや。もし王様になったとしても全力でサポートしたるし、なんか言ってくるやつはコテンパンにしたる」
「コテンパンは大袈裟だよ」
「いやいや、玲奈ちゃん傷付けるやつは絶対許さんもん」
雅也は至極真剣にそう言うので、玲奈はどきっとした。
「でも雅くんってトニーズキャッスルの第一王子じゃない?いずれはあなたも王様になるんじゃないの?」
「いや、俺はすでに王位を放棄した身や。まあ親父にはかんかんに怒られて猛反対食らったけどな」
「何のために、王位を放棄しちゃったの?プレッシャー?王族の暮らしに嫌気が差したの?」
玲奈の問いに雅也は否定した。
「プレッシャーとかそんなんは感じたことはない。俺には夢があるからな」
「夢?こんな世界で?」
「こんな世界やからこそ、希望や夢を持たんとやってやれん。俺の夢はスタイリストや。みんなに喜んでもらえるスタイリストになりたいんや。だから、俺は王位を放棄した」
「それだけのために?」
すると、雅也は玲奈のそばに近付いた。
「それだけのためやないわ。あんさん意外と鈍感やねんな?」
「鈍感?」