ー龍達の宴ー

□−受け継がれていく奥義−
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「瑠宇」
「目を開けていいか?」
「いや、このまま目を閉じて聞いてほしい」


和純は、瑠宇を抱き締めた。

「黒龍を倒して、僕が大人になったら、もう一度あの曲を君に送る」
「……え?どういう意味だ」
「瑠宇、耳をすましてよーく聞いてね?」


和純は深呼吸して瑠宇に囁いた。

「好き。だから、僕と共に戦って?」

それを瑠宇は満面の笑みを浮かべた。

「分かった。やっとお前の気持ちが聞けた。私も一緒に戦う」
「ありがとう、世界でたった1人の僕のファーストレディー」
「うん!!」

和純はそう言うと黒龍の方へ振り向いた。

「ここでは場所が悪い。どこか別のところへ行きませんか?」
「それもそうだな。和純、お前は死ぬことを分かってて俺と戦うのか?」
「…いえ、死にたくはありません。でも、あなたが何故そこまでこの世界滅ぼしたいかを知りたいんです。僕はそれを知りたいんです」
「ならば、1週間経つまで待て。そして1週間後、白百合の花畑に来い。何人連れてきても構わないぞ」
「分かりました」


黒龍は、消え去ってしまった。







しばらくしてレバインは、和純を見てこう言った。

「和純?」
「はい」
「本当に無傷なのか?」「………」

すると瑠宇は、レバインにこう言った。

「無傷とは言えない。和純はいったん冥界に行った身だから…」
「そうか…」

レバインは、うなだれた。

「私は…また許されぬ罪を…」
「いえ、大丈夫ですよ。僕はちゃんと生きてます。それより…」

和純はレバインの瞳を見た。

以前彼の目を見た時は、綺麗なエメラルドグリーンだったが、今は赤い。

「和純…時間はない。私が龍化するまでもう時間がないんだ」
「話は、クリスタルキャッスルで聞きますから」

すると3人はクリスタルキャッスルに着いた。

「瑠宇!!無事やってんなぁ〜」

雅也と玲奈が待っていた。

「なんとかな」

すると、レバインは玲奈を見た。

「あなたが、レバインさん?」
「いかにもそうだが、お前は?」
「和純兄さんの双子の妹の玲奈です」
「デーモン一族の末裔か?」
「そうです」
「そうか。大変不本意だが、黒龍を倒すためには、お前の闇の力も必要らしい。どうか協力してくれ」
「いいですわ。雅也くんにも頼まれたし」

すると、ジュニーU世がやってきた。

「ついに集結した」
「集結?」
「レッドドラゴン・ガーディアンズ・オブ・レジェンドの5人だ」

5人は互いの顔を見た。

「そのリーダーは和純。お前が率先して、指示を出す。そして龍王様…」
「分かっている。少し早すぎるが第2代目紅龍を継ぐ」
「やっと決心してくださったのですね。それではさっそく、儀式を行います」

レバインは魔方陣を描いた。

そして立て膝をついて目を閉じた。

ジュニーは、彼の真正面に立った。

そしてレバインの額に右手を翳した。

すると、彼の背中から、深紅の翼が生えてきた。

「これが…龍の洗礼……」

すると、ジュニーはこう言った。

「龍王。いやレバイン・トニーは今日から、2代目紅龍として生きることを誓いますか」
「はい」

その瞬間、レバインの体が光り出した。

そして急に強烈な閃光を放ち周りにいた人間は全て吹っ飛ばされた。


レバインはゆっくり目を開けた。

「龍王…」
『ジュニー…私は?』
「2代目紅龍だ。にしても綺麗な瞳をしているな』

一同、紅龍になったレバインを見た。

『瑠宇…私は…』
「ちゃんと紅龍になった。とても綺麗な姿をしている」

レバインは、自分の翼を見た。

『これが紅龍の翼…』

深紅に覆われた翼は、この世のものと思われぬ綺麗で艶やかな輝きを放っている。

『和純』

ジュニーとレバインが同時に彼の名前を呼んだ。

「はい」
「レバイン、いや紅龍を守ってくれ」
「分かりました」


しかし、しばらくするとレバインの体は元に戻ってしまった。

「完全に龍化できなかったのか?」

ジュニーは否定した。

「いいえ。龍化しています。ただ龍王の場合は、龍人族なため、トランス以外では人間の姿をしているのです」

すると瑠宇はジュニーに駆け寄った。

「なら私もトランス状態になれば、龍化するのか?」
「瑠宇の場合は半人半龍になる。いかんせん瑠宇の能力は漣が預かっているから」
「漣?銀龍のことか」
「あぁ、漣がお前にその力を手渡せば、お前も龍王のように完全に龍化する」

瑠宇は少し悲しい顔をした。

「私は龍化したくない」
「やはりそう言うと思ってた。和純が気になるんだろ?」
「そうだ。でもしなきゃならんのだろ?」
「いや、瑠宇は任意だ」
「ならならない」
「そうか」

瑠宇とレバインは、王室からバルコニーに出てしまった。

他の人間も各々の場所に向かった。







「瑠宇…」
「どうかしたのか」
「やはり私には紅龍は向いてはいない」
「何故そのようなことを言う?」

レバインは手すりを掴んでこう言った。

「紅龍は平和の象徴だ」
「確かにな」
「しかもその平和は誰にも分け隔てなく与えなければならない」
「………」
「でも、私は瑠宇がいればよかったんだ。平和でも平和でなくても」
「なんで」
「心の平和が欲しかった」

和純は2人の会話を、バルコニーの一階上のベランダから聞いていた。

「心の平和?」
「私は、物心つく頃には人との接触が苦手な人間となった。でも人間には人間に甘えたい存在だ。だから…道に迷ったお前をその安らぎの対象として誘拐した」
「なるほど」
「平和になれば、私は1人で断罪の旅に出かけなければならない」
「………」
「1人が怖いんだ」
「誰だって怖い。私もあの時レバインが、そばにいたから今日の私がいる」
「でも、和純を好きになったのだろ?」
「あぁ、レバインにとっての安らぎは私だったが、私にとっての安らぎは和純なんだ」
「黒龍戦で、彼は死んでしまったらどうする?」
「そうだな…」

不気味な暁色の月が二人を照らす。

「そうなったら、私は和純の分まで生きていく道を選ぶ」
「そうか、てっきり死ぬ道を選ぶかと…」
「そうしても和純は喜ぶわけがない」
「………」
「レバイン」
「なんだ?」
「もし、この会話を和純が聞いてたら恥ずかしいな」
「…何故?」
「和純にさっき好きだと言われた」

上の階で聞いてた和純は慌てて自分の部屋に戻った。

そして彼の顔はうっすらと赤く染まっていた。

「ついに言ってしまったんだな和純は」
「あぁ。正直言ってもらえるとは思わなかった。でも、なんで極限状態で私を好きだと…」
「極限状態だからだ。あいつはそういう男だ」
「私と彼の仲を認めてくれるのか?」

レバインは苦笑した。

「残念だが、私はそこまで心の広い人間じゃないしそれだけは認めない」
「和純がデーモン一族だからか?」
「違う。瑠宇を連れていかれそうで怖いからだ」

レバインは、空を見上げた。

彼の横顔は、哀愁に満ちていて、瑠宇がふだん見る威圧的なオーラが微塵もなかった。

「旅に出るのだろ?」
「え?」
「龍使いになりたい。昔瑠宇はジュニーにそう話したことがあるだろ?」
「…うん」
「きっとお前は、和純を連れてゆきたいのだろう」

瑠宇は急に胸を締め付けた。

「なんでそれを…」
「知ってるさ。長年同じ環境で過ごした仲だろ?嫌でもお前の気持ちが分かる」
「ごめんなさい。和純とももう約束している」
「分かってる。ただし3年後、和純が私とのデュエルで負けたら、その願い事はなしにさせてもらう」
「相変わらず強引だな。けど和純も簡単に引き下がる人間じゃない。なんてたってダークナイトの孫だからな」
「私もだ」
「分かった。じゃあもう1つ願い事を言ってくれ」

レバインは即座にこう言った。

「お前と結婚する。これが願い事だ」
「なるほど、分かった。条件を飲もう。ただし万が一和純が勝ったら…」
「和純の願い事を聞く」
「聞くだけじゃないだろ?叶えて」
「和純が勝てばな」

レバインは、そう言うと瑠宇の頬に触れた。

「レバイン?」
「後何回、お前の頬をこうやって直に触れることができるだろうか…」
「どうして?」
「和純が瑠宇を連れていくのなら、もう会えないからさ」
「一緒には行けぬだろうな…」

すると、バルコニーのドアが開いた。

2人は慌てて振り向いた。

「ごめんなさい…」
「和純、聞いていたのか?」
「は…はい」

レバインは、彼を手招きした。

和純は遠慮がちに2人の後ろに向かった。

「和純?」
「レバインさん…」
「お前は俺のこと嫌いか?」

予想外の言葉に和純は、言葉を失った。

「レバイン!?」
「瑠宇、ここは和純の意見を聞きたいから何も言わないでくれよ」
「うん」

瑠宇は和純とレバインを2人きりにするため、バルコニーから室内に戻った。

「すまない」
「え?」
「一度殺された男になんて…」

レバインはうなだれた。

「あなたは瑠宇を守るために僕を…」
「でも、私はお前を殺めた…」

和純は、レバインの手を握った。

「和純…」
「僕は大丈夫です。けど、あなたがそんなに気を病まれるなら、僕はどうしたらいいんですか?」
「え?」
「あなたは自分が思うより、ずっと優しくて繊細です。だから、ずっと平和になってもこのことを後悔するに違いない」
「私は優しくない。優しくなんて…」
「いえ、あなたは…」

レバインは、和純の口をふさいだ。

「今、気配がする」
「ん!?」
「しゃべるな」

するとそれは霊魂として現れた。

「誰だ?後ろにいるのは」
『礼、迷っているのか?』
「その声はダークナイトか?」
『いかにも』

レバインは安心したのか和純を解放した。

「じいちゃん?」
『悪いな。あいにくもう自分の体には戻れない身なんだ』

すると、レバインは俊也にこう言った。

「何故、来たのだ?」
『じじいから、最後の技の伝承を頼まれた』
「ジュニーにか?」
『あぁ、幸い今2人しかいないし、ここでやろうか』

すると、俊也は自分の体を具現化した。

『時間はない。だがシンプルかつ迅速に言う』
「はい」
『お前達は、幸いどちらもジュニー一族の末裔かつ、男同士だ』
「確かに…」
『まあ、本当は禁じ手だし、時空追放もんだから教えたくないけどな』

2人は俊也を見た。

「じゃあなんでそんな技を僕達に?」
『お前達はいずれ王になる身分だ。まあこれを言えば、衛が憤慨しそうだけど。王様は殺人以外の罪はある程度免罪されるんだ』
「だからかぁ。でもどうして僕達に?」
『お前達だからこそだ』
「ダークナイトよその技を教えてほしい」

俊也は2人の耳元でこう言った。

『ジョイント』
「ジョイント?」
『お互いの気持ちが1つになり、そして本来の潜在的な能力が引き出せるトランスの時、我々ジュニー一族はジョイントをする』
「方法は?」
『ただ1つ。クリスタルと幻のクリスタルを合わせるだけだ。それが唯一黒龍を倒せる方法だ』
「でも…幻のクリスタルは銀龍が持っている」
『銀龍召喚をお前達以外の誰かがしなければならないな』
「そうですね」
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