ー龍達の宴ー

□−受け継がれていく奥義−
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和純はそう言うと、テレポートしてジュニーから離れた。

「今はデュエルの時間です。昔話をする場合じゃないですよ」

和純はジュニーを真直ぐ見据えた。

ジュニーも和純を見た。

「そうだな。よし、いまから奥義を幾つか見せる。習得できるできないかは和純次第だがな」

ジュニーは、剣に念を込めた。

すると剣の周りに白く光るオーラが見えてくる。

「奥義その1『ギガホーリーバースト』この技は見たら分かると思うが、自分の念を剣に込めてから放つ技だ」

ジュニーは剣を振り下ろした。

すると和純の体ごと吹き飛ばしたのだ。

和純はなるべくダメージを受けないようにその技を避けた。

ジュニーは次の奥義を繰り出すために、一旦目を閉じた。

「奥義その2『インサイト・ザ・スカイ』眼力だけで相手を吹っ飛ばす、高等な技だな」

和純はジュニーが目を開ける前に剣を盾にした。

「無駄だ」

ジュニーは目を開けた瞬間、青い瞳が和純を捕らえて一瞬にして吹き飛ばしたのだ。

「目を合わせるとだめだぞ…」
「はい」
「和純、お前が覚えてる奥義はなんだ」

和純は頭を抱えた。

思い付かない様子だ。

「まさか、まだないのか?」
「ないというか思い付かない…」
「なんだって?俊也と互角に戦ったのだから、てっきり奥義の1つや2つは…」
「分からないんです。僕、どうやってデュエルしてきたか」
「なるほど…そういうことか」

ジュニーはある考えに達した。

和純は意図的に戦ってるのではなく、本能で戦っていた。

また、奥義も取得していないということは、素の力で俊也と互角に戦ったということだ。

ジュニーは確認のため、彼にジョブカードを見せるように要求した。

和純は、素直に彼を見せた。

すると恐ろしいことに彼のレベルの数値は、70を達していたのだ。

「この年で70だと!?どうやってそこまで…」
「わかりません。でもレバインさんは85ぐらい行ってますよ」
「分かってる。なのにどうしてそんな高い数値なのに奥義を覚えてないんだ?」
「………」
「もしかしたら潜在的に覚えていたりするのか?」

ジュニーは不思議でならなかった。

すると和純がギュッと目を閉じた。

その瞬間だった。彼の額に『聖』の印がくっきりと現れたのだ。

すると彼のオーラが先ほどと違い神々しいまでの白いオーラが沸いたのだ。

「え?なにこれ…」


当の本人は、自分の姿に驚いていた。

さっき来ていた戦闘着と違って、白い布着に包まれていたからだ。

ジュニーはただその姿を見ていた。

「ジュニーさんこれは?」
「和純の真の力だよ。『聖』の意味はあらゆるものを浄化するんだ。そう、お前の闇化を浄化したのもその印が関係する」
「でも…」
「和純、迷ってる暇はない。さっきの奥義は序章だ。さて、近付いておいで」

和純はジュニーに近付いた。

「和純。お前は瑠宇が好きか?」

突然の問いに戸惑いを隠せない和純。

「え?」
「だから、瑠宇が好きか?」
「好きです」
「どれくらい?」

和純に迷いはなくなった。

「どれくらい…。もしも世界が滅びても彼女さえいれば大丈夫なくらい好きです」
「分かりにくい例えだな。でも、それくらい好きなんだな」
「はい。大好きです」
「なら、彼女を守りたいと思うな?」
「…はい」
「よし。ならばこの技を教えよう」

ジュニーは、和純の胸元に、念を送った。

すると和純の胸元が白く光ったのだ。

「こ…これは?」
「剣技ではない。これは『クリスタル・ティア・アクア・ラブソディ』だ」

すると、和純の胸が苦しくなった。

「ジュニーさん…」
「この技は、一度しか使ってはいけない。何故なら、この技を放つたびに相手の悲しい思い出が引き出されるんだ。だから、絶対にもう無理という時まで使ってはならない」
「………」

和純は気を失った。

ジュニーは医務室まで彼を運んだ。

(やはり和純には酷な技だったのか…)

しばらくして、ベッドに横たわっていた和純が目を覚ました。

「ジュニーさん。僕に悲しい思い出はなかったよ」
「リンチだって…」
「あったけど。瑠宇とジュニーさんが助けてくれたから」

つまり、ジュニーの技が利かなかったのだ。

ジュニーは信じられないという顔をした。

「僕が悲しいのは、失うことじゃないんだ。本当に悲しいのは、これからあなたが死んでしまう未来があることなんです」
「和純は優しいな」
「優しくなんかない。僕は…ただ未来が怖いんだ」
「誰だって怖いさ。先行き不安な未来は誰でも恐れる。でも怖がったところになにがある?」
「………」

すると、和純はせき止められていたはずの涙が流れた。

「僕は嘘つきだ。さっきは失うのは怖くないって言った。けど、本当はじいちゃんやばあちゃんがいなくなって、悲しくて寂しくてそれでも泣けなくて…そんな自分が嫌で嫌で…」

和純の頬には、大粒の涙の滴が流れている。

ジュニーも和純にもらい泣きした。

「ジュニーさん…涙」
「和純が泣くからだろ…」
「ごめんなさい」
「全くだ。私より強かったあの子達が、黒龍に殺された。私は何もできなかった。俊也はずっと悲しい宿命を背負って生きていた。春代だって、俊也のこと最期まで気をかけて…2人はほぼ同時に旅立ったんだ。本当なら私が先に行くべきだったのに…。なんで私だけが生き残ってしまった?なんで…なんで…」

和純はジュニーを抱き締めた。

「ジュニーさん…」
「すまない。奥義を教えると言ったのに」
「ううん、奥義ならちゃんと伝わった。だから、もう大丈夫」
「無理しないで」
「ジュニーさんこそ。何も気負いしなくていいんだよ。1人で抱え込まないでください…」
「ありがとう…」


その瞬間だった。

「和純…」

和純は、その声の主を見た。

「レバインさん!!」

レバインは苦笑しながら、こう言った。

「許してくれとは言わない。けど、黒龍を倒したい。だからお前と手を組みたい」
「…はい」

するとレバインは、ジュニーを見た。

「ジュニー?」
「龍…王…?」
「生きてたのか」
「はい…」
「1つ頼みがある」
「はい」
「もう一度手を貸してくれないか?」
「もちろんですよ」


すると、雅也と玲奈もやってきた。

「和純ー!!」
「どうしたの」
「大変や!!瑠宇が…」
「瑠宇がどうしたの!?」
「俺らをかばって自ら犠牲に…」

和純はすぐに戦闘着に着替えた。

「すまん。和純…」

和純は何も言わず、ただ雅也の肩を置いた。

「和純?」
「僕はレバインさんと瑠宇を助けに行く。だから玲奈と父さん達を頼んだ」
「まさか2人だけで行くんか?無茶や!!」
「無茶だと分かっていても、瑠宇を見捨てるわけにはいかない」
「まさか死ぬ気か?」
「さあね」

和純はそう言うと、ジュニーからダイヤモンドソードを持って、レバインと白百合の花畑に向かった。


「和純の目…あれは憤怒の目やった」
「じゃあ、瑠宇さんのことお兄さんは」
「間違なく、和純は瑠宇が好きや。そうでなきゃあんなリスク侵してまで行かんわ」







一方、道の途中で和純とレバインは確認のためあの話をもう一度した。

「和純、瑠宇はお前にとってどんな存在だ?」
「唯一無二の存在です。彼女は僕の初恋の人ですから」
「やはり、そうだったな。私が瑠宇に手をあげたときもその目をしていたから」
「気付いていたんですね」
「あぁ。だが瑠宇は簡単には渡さない。本当に愛しているのなら3年後またデュエルをしよう。ただし、私に勝って初めて瑠宇をお前に渡す」
「えぇ。臨むところです」
「だから黒龍戦は勝とう。勝って祖母や祖父の敵を討とう」
「瑠宇から聞いたんですか?」
「あぁ。だからよけいに黒龍が許せない」
「僕も黒龍だけは許したくない」
「…和純」
「はい」
「私の父親が危ないんだ」
「え?漣さんが?」
「瑠宇が、父親を守ってくれたんだ」

和純は目を見開いた。

「幻のダイヤモンドを誰にも奪われないように、彼女は1人で守ってきたんだ。確かに私は彼女を誘拐した。けど彼女は私を責めなかった。責めもせず、私を兄のように慕ってくれた。だから愛してしまったんだ」
「レバインさん…」
「分かってくれとは言わない。けど瑠宇を奪ったやつは誰でも、許さない」

レバインの目がエメラルドグリーンに光った。

「和純、協力してくれるか?」
「えぇ」

2人は、瞬時に例の場所にテレポートした。







一方、瑠宇はドラゴンキャッスルの地下室に囚われていたのだ。

「ふはははは!!」

黒龍の笑い声で、瑠宇は目覚めた。

「ここは…」
「ドラゴンキャッスルの地下室とでもいおうかネウロ第一王女」
「何故私を捕らえた?黒龍」
「もちろん、和純とレバインをおびき寄せるためだ。お前のことになれば血の気を変えて駆け付けてくる」
「待て。私をおとりにしてなにをする気だ?」

黒龍は冷笑した。

「お前の目の前で、2人を殺す。そしてお前をめとる」
「ふざけるな。誰がお前なんかと結婚するか!!」
「ほぅ、あの2人の中に好きなやつでもいるのか」

瑠宇はあることに気がついた。

ここで和純の名前を言えば確実に殺される。

しかしレバインを名前を言った場合、自分の気持ちに嘘を吐いたことになる。

瑠宇は葛藤しだした。

黒龍はそんな瑠宇にこう言った。

「言いたくないのか?ならば、幻のダイヤモンドのありかを言え」
「断る!!」
「言わなければ、お前がドラゴンということをあの2人にばらすぞ?それでもいいのか?」


すると天井から、ある声が聞こえた。

「そんなのとっくに知ってるさ」

黒龍は天井を見上げた。

「ほぅ、思ったより早いじゃないか。レバイン」
「気安くその名前を言うな!反逆者」

レバインは天井から飛び降りた。

そして瑠宇を繋いだ鎖をクナイで断ち切った。

「大丈夫か?瑠宇」
「ごめん…」
「無事ならいい」
「和純は?」
「和純なら…」

レバインが、全て言う前に、黒龍はレバインを影縛りで動けなくした。

「おしゃべりする時間はない。和純よ、そこにいるのだろ?」

しかし和純はなかなか出てこない。

「強情なやつだ。しかしこいつら2人の命がどうなってもいいのか?」

しかし、それでも和純は出てこない。

「ならば仕方ないな」

黒龍は、レバインと瑠宇に死眼を向けた。

「目を合わせるな!!」

2人は反射的に目を閉じた。

「お前!!何故その技を知ってる」

和純はようやく、姿を現した。

「瑠宇、ごめんね…」
「目を開けちゃだめか?」
「開けないで聞いて」

黒龍は和純の行く手を阻んだ。

「サピエルさん、どいてください」
「死んでもいいのか?」
「死ぬ前に彼女に言いたいことがあります。それを言わせてください」
「…分かった」

黒龍は、和純を前に通した。

「ただしそんなに時間は、やれんぞ」
「分かってます」


和純はレバインに向けてこう言った。

「今いうことは聞かないでください」
「え?」
「彼女だけに伝えたいんです」
「分かった」

レバインは、地下室を一旦出て行った。
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