ー宿命ー

□2人の旅
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断罪の旅に出かける前日の日に、春代は王室に漣を呼び出した。

あれから漣はピースオールキングダムの君主として君臨して3年が経ったので、風格も出てきた。

そして、漣は同時にジュニーX世でもある。よって、春代と俊也は実質隠居する身分なのだ。


しかし、2人は断罪の旅をするために、隠居を断ったのだ。

漣は、春代が言う前にこう言った。

「行くんでしょ?」

春代は頷いた。

「棗とハルクの件もあるし…。でもあなた1人を残してゆくのは心苦しいわ」

すると、純平がやってきたこう言った。

「大丈夫だよ。俺と淳希がいるし」
「純平はともかくなんで淳希?」

すると、淳希が2階からやってきた。

「俊也が断罪の旅に出かけた時から、お前も行くような素振りを見せたからね」
「淳希…」
「ゆっくりして行けよ。時間はたくさんあるからさ」
「でも…」
「漣のことは俺達に任せろ」

淳希は春代の肩をもってそう言った。

すると、ダークナイトの姿をした田所俊也の姿が現われた。

「うわ…それで行くのかよ。威圧的」
「言っておくが、俺はダミアス一家の人間だ。春代を護衛するには不可欠だろ?淳希」
「た…確かに。お前なら大丈夫だ」
「当たり前だろ?」

俊也は、不敵な笑みを浮かべて、淳希に言った。

「だから漣に何かあったら淳希、お前のせいにするからな」
「横暴だな。相変わらず」
「当たり前だろ?根本的なところは変わってないんだから」

すると春代がこう言った。

「まぁ、とにかく頼んだわよ淳希、純平。これでも俊也は貴方達を頼りにしてるんだから」
「うん。分かった」

そして、俊也はこう言った。

「漣、困ったことがあれば、純平や淳希に聞けよ」
「はい」
「じゃあ、春代行こうか」
「えぇ」

春代は頷くと、俊也と春代はクリスタルキャッスルを発った。

「春代まで断罪の旅に行く必要があったのか?純平」
「多分、棗とハルクを時空追放したことで、自分を責めているんだろうね」
「あの時は春代には珍しく、感情的だったしな」
「漣はどうして行かなかったの?」

純平がそう言うと、漣はこう言った。

「俺はこの国全体の君主だ。簡単にこの城を空けてはならないから。それにハルクと棗は禁忌を犯したからね」
「なるほど。でも…」
「棗のことなら大丈夫だよ。あいつは1000年後に行っても変わらないし、禁忌を犯すぐらい恐さ知らずから」
「1000年後!?」

淳希は驚いてそう言えば、純平がこう言った。

「クリスタルキャッスルの法律では死刑がなくて、一番罪が重たいのは『時空操作』で今を生きる世界から飛ばされるんだよ」
「なるほど、死よりある意味残酷だな…」
「だからいずれはお母さんも自分で時空操作して棗やハルクのところに行くかもね」
「………そうなったら俺達はともかく漣や俊也はどうするんだ?」
「俺はこの時代に残るよ。ただお父様は、分からないけどね」

そう言うと3人は黙ってしまった。



一方春代と俊也はクリスタルマウンテンに登山していた。

「…俊也」

春代がそう言うと、俊也は何かを察したのか剣を構えた。

するとモンスター達が2人を囲んだ。

「なるほどね。しかし2人ではきつくないか?」

俊也がそう言うと、春代は顔を横に振った。

「大丈夫。私達なら」

春代は、モンスター達に時空操作をした。するとモンスター達がストップした。

「俊也、今のうちに」
「分かった」

俊也は、『スピードカッター』で、モンスター達を一刀両断した。

2人は、モンスターが倒れたのを確認して、先に進んだ。

「そう言えば、前俊也が断罪の旅に行ったとき、どこに行ってたの?」
「じいちゃんとこ行ってた」
「看守だった人?」
「そ。名前はルーカス・ダミアス。和名は田所俊二」
「だから、さっき俊也がダミアス一家の人間だと言ったのね。それで、どんな話をしたの?」
「そうだな…。ここでは話しづらいから、5合目にある小屋に着いてから話すよ」
「分かった」


2人は小屋に着いた。

すると、鍵が閉まっていた。

春代はピッキングをした。

すると、イナーがいた。

「不法侵入とは度胸のある奴だな」
「す…すみません…」

春代がそう言うと、イナーがこう言った。

「なんだ春代さんじゃない。春代さん1人で来たのか?」
「いぇ、主人とです」
「あぁダークナイトね」

すると俊也も入ってきた。

「ダークナイト、断罪の旅に自分の奥さんを連れてくるなんて随分あれなんだな」

すると春代は否定した。

「違うの。ひいじいちゃん。私も行きたいって無理言って連れてきてもらっただけなの」
「そうか…」
「すまないが、ここの小屋を貸してくれないか?」

俊也はそう言うと、イナーはこう言った。

「いいよ。俺も今日城下町に帰るから」

そう言うとイナーは去ってしまった。

「ありがとうひいじいちゃん」

すると俊也はダークナイトの鎧を外して座った。

彼は春代にこう言った。

「春代、さっきの話の続きをしよう」

春代は頷いた。

「俺のじいちゃんはいま白百合の花畑にいる。そしてばあちゃんをめとる前、お前のじいさんと会社をしていたらしい」
「リリアンじいちゃんと?」
「そうだ。リリアンはとっても頭の回転も早かったしなってじいちゃんが…」
「そうなんだ…」
「興味ないのか?」
「違うの…。俊也にはおじいちゃんがいて羨ましいなって…」

俊也は何を察したのか、春代に申し訳なさそうな顔をした。

「樹里の命を奪ったのは俺だな…」
「違うよ。おばあちゃんはネオフェニックスシンドロームで……」
「心労もある。もっと早くに気付けば樹里を死なせずに済んだ…」

すると、春代は俊也を抱き締めた。

「樹里おばあちゃんは貴方を責めなかったわ。いつも貴方を心配していた」
「………でも、俺はお前から大切な物を奪った…」
「確かに奪われたわよ。でも得た物もあったわ」
「漣と棗?」
「そう。でも私は棗を手放した…。その罪は消えない」
「…だからついてきたのか」
「えぇ。覚悟は出来てる」
「…………」

春代は疲れたのか横になってしまった。

俊也は春代の異変に気付いた。

「涙!?」

春代は棗やハルクのことを想って泣いているのだ。

「ごめんね…。私の感情だけで2人を追放して…」
「春代…お前は悪くない。本当なら俺も追放される身なんだ」
「分かってるわ。私達の本当の関係は王族と臣下の関係…。でも、私達は13年もの空白があるの」
「……棗とハルクはそれ以上の空白が出来る…」
「そうね。ならば今すぐ1000年後に行こうか」
「待って。もう一度だけじいちゃんに会わせて?」

俊也が懇願すると春代はこう言った。

「いいよ。私も会いたいから」

辺りはもう暗くて夜になっていた。

春代はリュックの中にある食材で料理し始めた。

その時だった。小屋に何者かが、侵入してきたのだ。

俊也は剣を構えた。

するとモンスターは春代を人質にした。

「この女の命が惜しくば、その剣を下ろせ」

すると俊也は春代にこう言った。

「春代、お前ならどうする?」
「…剣を下ろすわ。でも周りにもモンスター達がいるから…」

俊也は剣を下ろした。

「ふふふ引っ掛かったな。この女を貰ってゆく」

すると、モンスター達が春代を連れ去ろうとした。

「俊也〜!!」

春代の叫び声で、俊也は『スパイラルカット』をモンスター達にお見舞いした。
「人の嫁さん奪うなんて、いい度胸だな貴様ら」

残りのモンスター達も、俊也の威圧的な言葉におびえて逃走した。


そして俊也は春代を抱き抱えて、小屋に戻った。

「怖かったぁ…」
「悪かった」
「ううん。あれは予想外だったけどね」
「まさか俺が引っ掛かるとはな」
「あの時もし剣を下ろさなかったら、モンスターはどうしただろうね」
「間違なくお前を殺していたさ」
「なるほど…。やばいお魚焦がしたかも…」

春代は急いで、キッチンに向かった。

「げ…真っ黒だ…」

すると俊也が盛大に笑った。

「ハッハッハッハッハ。これは傑作だ」
「笑わないでよ。ただでさえ、焦げる魚なんだから…」
「悪かった悪かった」

春代はその魚の身だけを取ってから、ご飯に交ぜた。

「出来たわよ。ありあわせしかないけど」
「あれでよく出来たな」
「うるさいわね〜」
「うるさい?お前の不注意だろ?」
「あれは、モンスター達が」
「言い訳するなよ」
「…もういいわ。食べましょ」
「話は終わってない。いつから言い訳がましくなったんだ?」
「私は元々こうよ。あなたが知らないだけなの!!」
「なるほど」

すると俊也は春代を押し倒した。

「素直に謝るまで離さない」
「………」

春代は顔を逸した。

「でなきゃキスするけど」
「やだ…」
「じゃあ謝れば」
「…何よ!!貴方だっていつからそんな意地悪になったのよ」
「ほう、責任転嫁か。ならこうするしかないな」

俊也は春代に無理矢理キスしようとした。

しかし春代はこう言った。

「ごめんなさい。私が悪かった。だから無理矢理するのはやめて?」
「分かった」

俊也はいったん春代を離した。

「俺も悪かったよ。だからもう…」
「ご飯食べよ?」
「あぁ」

2人は黙ってご飯を食べた。

「あの…」

春代はそう言えば、俊也はこう言った。

「なに?」
「もし、私があのまま謝らなかったら…」
「無理矢理にでもキスをして、素直になるまで…」

急に俊也が赤らめた。春代はこう言った。

「素直になるまで何しようとしてた?」
「体中キスしてた…」
「立派なセクハラね」
「夫婦間にセクハラはないだろ…」
「だって私が了承してないもん」
「まぁ、俺は春代が謝ると思ったからあんなことを言っただけだけど」
「ほら、やっぱり意地悪」
「たくっ。お前だって俺のこと知らないじゃないか」
「うん。空白の13年間で変わってしまったところもあるわね」
「確かにな。それに…」
「何?」
「意地悪になったのもあったけど嫉妬深くなった」
「それはまだ可愛い方よ。私なんて、あの時より刹那的になったわ」
「………春代」

俊也は急に真剣な目をして春代を呼んだ。

「何?」
「今日は大丈夫か?」
「無理」
「危険日だからか」
「違うよ。あの…月1の…」
「生理?」
「はっきり言わないでよ」
「分かった。ならしない」
「したかったの?」
「まあな。俺って変態?」

春代は考えた。

そしてこう言った。

「変態かつドS」
「ドSは否定しないけどな」
「変態も肯定しなさいよ。でも、よく断罪の旅のとき浮気しなかったわね?」
「生憎その気はないな。俺春代限定だから」
「そうなの?」
「あぁ。未だにこんなドキドキしてるのも、抱きたいと思うのもお前しかいない。お前はもうドキドキしないのか?」
「してるよ」
「相変わらず俺達って」
「初…。ご飯食べ終わったら食器持ってきてね」

春代はキッチンに行った。

俊也は素直に食器を持ってきた。

そして2人は洗い物をした。

その後、春代は部屋の灯を暗くしてこう言った。

「…俊也。あなたの別名を教えて?」

俊也は春代にこう言った。
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