ー龍達の宴ー

□序章―運命のコドウ―
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「分かった」
「それとあの女を…」
「遼を?」
「助けに行ってくれ」
「……本当に?」
「今、はっきりとした。遼は、ミスティの子ではあるが、彼女はデーモン一族ではない。れっきとした私の臣下だ」
「確かジュニー一族の臣下はみなダミアス一族だもんね」
「彼女には数え切れない恩義がある。生きろと言ったのも彼女で、私をかばってくれたのも彼女だ…」
「分かった。すぐに和純に話すよ」
「…瑠宇、和純に闇の世界へ行かせるのだ」
「再会をさせるのか?」
「あぁ」
「そして遼の娘を…」
「………」
「地上世界に連れていくのだ。彼女とは何度か意識交信したことがある。どうやら、最近あの女の様子がおかしいらしい」
「どういうことだ」
「私と同じ内容の悪夢を見るらしい。それが意識交信となって私を見せている…」
「レバイン、今日はちゃんとそばにいる。明日から、私は龍達と和純と玲奈を連れて行く」
「頼んだぞ」
「レバイン…。私は…」
「瑠宇…もしも帰ってきて黒龍を倒せたら、結婚しよう」
「…できない。私は、レバインと結婚できない」
「………」

レバインは苦笑した。

「やはり和純が好きなのか」
「私達は唯一の友達同士だ。見捨てるわけにはいかない」
「……そうか」
「だからごめんなさい」
「力ずくでも、瑠宇と結婚したいんだ…」
「どうして…」
「瑠宇がいれば、私は1人にならずにすんだのに…」

レバインはそう言うと涙を流した。

「レバイン…。お前は何も分かってはいない」
「何も?」
「ドラゴン達がいる」
「でもいずれ彼らは死んでしまう」
「それを食い止めるのが、竜王だろ?」
「あぁ…」
「それにジュニーは、レバインのこといつも心配している。一人で何もかも背負いすぎだって」
「ジュニーが?」

レバインが見た時はジュニー達はいなかった。

「帰ったのか?」
「気を利かせてくれたみたいだね」
「瑠宇…」

レバインはそう言うと瑠宇の頬を触った。

「本当にお前は汚れることなく、育った。そして綺麗になった。だけど私に心を許してはくれなかった」
「レバイン…」
「どうして和純に心を許したのだ?」
「和純は勇気がある。それに優しい」
「…それだけか?」
「瑠宇は瑠宇だと言ってくれた」
「………」
「だから私は和純が好きだ。自分自身を認めてくれたのはあいつ唯一人だからな」
「なら今すぐに出て行って」

瑠宇は驚いた。

「出て行け!!帰ってきた時は、お前と無理矢理結婚する」
「それは、本当なの?」
「…あぁ。だから出て行って。これ以上あいつの話をされたら嫉妬心で、いっぱいになるから」
「分かった…」
「………」

そして、レバインは眠ってしまった。

レバインはずっと涙が止まらなかった。


するとジュニーが入ってきた。

「私、レバインを傷付けてしまった…」
「仕方ない。これはどうしようもないからな」
「私は行くべきなのか?」
「もちろんだ。レバインはハル達が慰めてくれるから」
「行こう」


ジュニーと瑠宇は、ドラゴンキャッスルに出て、聖なる湖へ飛び発った。











そして、運命の日…

和純は先に起きて朝一の掃除を始めた。

すると衛は、和純に昨日借りた伊達眼鏡を返しに来た。

「昨日一日ありがとう。おかげでみんなにバレずに掃除出来たよ」
「ごめんなさい。僕の仕事なのに」
「謝るのはこっちだ。いくら和純がデーモン一族の子であって掃除夫をさせていたけど、昨日初めて自分でしてその大変さに気付いたよ」
「僕は好きでしてるんだよ」
「いや何か考え事をしているようにしか見えない。まさか遼のことか?」
「お母さんのことは致し方ないです。僕には雅也君以外に友達がいるんです」
「瑠宇ちゃんだな」
「はい。彼女の安否が不安です」

すると雅也が起き出して、和純にこう言った。

「まあ今日はとにかく聖なる湖へ行こう。あの小屋に誰かが住んでるらしいし」
「分かった」

すると和純は伊達眼鏡を掛けた。そして、朝食を早めに済ませると学校に向かった。

「やっぱりその眼鏡か」
「うん。落ち着く」
「今日は午前中に授業が終わるから、昼休みに地下室来てな。バーベラ達も待ってるから」
「はい」

するとバーベラがやってきた。

「おはようオバケ」
「オバケ…はい、おはようございますバーベラさん」
「バーベラはハンドルネームだ。私の本名は花嶋棗だ」
「あ…僕のお父さんの本名の名前も棗です。花嶋家って操さんと透さんの…」
「1000年前に封印されてたから、私も1000年前の人間だ」
「その時赤ん坊やったわけですな。バーベラ」
「そういうことになるな。一応私は印がない。両親にはあるがな」
「なるほど…」
「確か、操さんの妹と冴子さんは、僕のお母さんと仲が良かったそうですね」
「まあな。冴子おばさんも遼さんと仲が良かったと言っている…。まさかお前って…」
「ハルクの息子なんです」
「そっかぁ。だからお前心的障害で眼鏡がないとダメなんだ」
「どうしてそれを…」
「私は霊媒士だ。お前のオーラがそう語るんだ」
「じゃあお母さんのこととか分かりますか?」
「あぁ。遼さんは無事だ。だが、不穏な動きがあった…」
「まさか黒龍?」
「そう呼ばれる恐ろしいドラゴンが遼さんの近くにいる」
「大丈夫なんですか?」
「そこまでは分からない。やばい。もうこんな時間だ。早く教室に行こう」

そう言うと棗は、すぐにスクールに走ってしまった。

そのあと和純達も走って教室に行った。

すると、生徒達はまた和純を見て逃げ出した。

「相変わらずやな」
「慣れてしまったよ」
「今日、小テストの返却日やわ…」
「そうだね」

すると、周りの生徒達はヒソヒソ話をした。

「戸川って本当に変わり者だよな」
「うんうん。源とか話し掛けるなんて無理だぜ。あの容姿からして不気味だぜ」
「しかも、いつも1人でいるみたいだよ」
「にしても戸川ってオカルト研究部だろ?あいつ、源みたいな奴らと部活動してるんだぜ。有り得ねぇ」
「もしかしたら源も勧誘されたんじゃない。見た目からしてオカルトだし」


すると、透がやってきた。あれから猛勉強して、和純が編入した日と同じ日に晴れて城務科教師になったのだ。

年はとったもの彼特有の物腰の柔らかさに女子だけでなく男子の好感を得ている。

和純もまた透が好きだった。

「おはよう。みんな」
「おはようございます、中川先生」
「今日はこの前やった城務科基礎知識テストを返す」

すると透は、黒板に最高点と平均点を書いた。

「最高点は100点。平均は56,5点だ。基礎知識だからって甘く見た結果だな。各自よく復習するように。いまからテストを返却する」

すると、名前が次々と呼ばれていく。

落胆する者がほとんどで、みな点数が良くなかったらしい。

「戸川雅也」
「はぃ」

雅也は透にこう言われた。

「ケアレスミスは注意しろよ」
「はい…」
「でも、よく頑張った」

透は微笑むと雅也も微笑んだ。そして雅也は答案用紙を貰った。

「どうだった?雅也」
「95点や。どうやら今回は爪が甘かった」
「じゃあ100点って誰なのかな…」

そうしてる間にも次々と返されていく。

そして和純の名前が呼ばれた。

「源、お前よく分かったな」
「へ?」
「クリスタルキャッスルの内部の問題」
「城の内部ですか」
「そうそう。あの問題が正確に解けたのはお前1人だな」
「そうなんですか」
「本で調べた?」
「違います。あの内部の話は僕しか知らない話ですから」
「分かった。とにかく返すよ。この調子で頑張って」

透は和純に答案用紙を返した。そして雅也がこう言った。

「何点やった?」
「…まだ見てない」
「見せろ」
「うん…」

和純は恐る恐る雅也に答案用紙を見せた。

「100点!?」
「嘘!?」
「お前どんだけマニアックやねん」
「内部の話でしょ」
「そうか…。和純は掃除夫やから隅々まで城の内部知ってるもんな」
「うん。だから雅也がとりこぼした点数は、必然的であったわけ」
「なるほどなぁ。そりゃ現場してる奴は違うわ」

すると、透が解説しはじめた。

「最も平均点が悪かった所は、クリスタルキャッスルの内部の話だ。ほとんど全員間違えた問題だが、これは国立図書館の2階の本にある。また階段の数もあいまいな者が多かった。それと100点をとったものはこう書いた」

みんな興味津々で黒板を見た。

「『階段の段数は年々増加したり減少するといった改装工事がされている。また去年の段数は5000段であったが、今年は増える傾向にある』城務科の中でクリスタルキャッスルに勤めている生徒もいるようだから言うけど、たまにはキャッスルの中を散策しろ。そして謎に迫ること」
「はいっ」
「源、戸川、後で話があるから、職員室に来なさい」

そしてチャイムが鳴った。2人は透のいる職員室に入った。

「失礼します」
「うん。入ってきて」
「あの僕ら何か悪いことしました」
「そうじゃないよ。ただ源に聞きたいことがある。しかし源は対面恐怖症だと親御さんに聞いたから、戸川を呼んだ」
「なるほど」
「ここじゃなんだから、休憩室に行くよ」
「はい」

3人は休憩室に入った。

「源は偽名だろ?」
「…はい」
「本名は」
「佐伯和純です」
「やはりハルクの息子だったんだな」
「はい…」
「ところで彼女には会ったか?」
「いえ、まだ一度も」
「もうすぐ夏休みが始まる。この機会に会いに行ったらどうだ」
「中川先生ってどうして僕のお母さんのこと…」
「操から聞いた。ハルクは闇の世界に消えたって」
「操さんは棗先輩の母親ですよね」
「棗を知ってるのか?」
「戸川君が、オカルト研究部に勧誘した時に先輩がいたから」
「そうか。今日は聖なる湖へ行くと戸川から聞いたが」
「先生なんで知って…」
「オカルト研究部の顧問だからね。まさか源も入ったの?」
「半ば強制で」
「また戸川に言われたんでしょ」
「…はい」
「ダメだろ強制勧誘は」
「すみません…。でも源も乗り気でしたよ」
「本当?」
「はい…」
「なら、話は早いな。今日は2人とも頑張ったから、俺も行ってみるよ聖なる湖に」
「先生が行くんですか」
「悪いか?俺もお前達ぐらいの時、聖なる湖に恋人と行ったんだよ」
「操さん?」
「そうそう。今操は、主婦を専念しているけど、昔はバリバリのガンナーだったからいつ殺されるか分からなかった」
「クレイジーな彼女やな」
「春代さんも言っていた」
「僕のおばあちゃん?」
「もしかして、源はジュニー一族なのか」
「…はい。恥ずかしながら…」

すると透がこう言った。

「ということは、今のジュニーY世の第一王子なんだな」
「…はい。でも身分は掃除夫をしています」
「………」
「デーモン一族の血も受け継ぎましたから」
「血筋は関係ないけど、ますます気に入ったな。お前は確か衛の息子だな。漣の息子は天空の世界にいる」
「息子?漣おじさんに」
「あぁ。戸川美希の…」
「じゃあ俺達2人も繋がってるんですね」
「少なからずな」
「先生、その子の名前は?」
「徳川礼。お前のいとこにあたる」
「まさかレバインさんのことですか」
「あぁ。レバインは天空の世界の時に名付けられた名前だからな」
「そうなんですか…」
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