ー龍達の宴ー

□序章―運命のコドウ―
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『いずれか紅龍になるだろう』
「じゃあハリルの子孫なんだな」
『そうだな』
「和純は?」
『和純は、混血』
「確かデーモン一族の子と聞いた」
『あの子は、あのころの私とそっくりだ』
「あのころ?」
『私も少なからず、友人には恵まれなかった時期があっていつも人を避けていた』
「うん」
『それを見事に当てたのが、リーだった。まあ彼女もまた1人でご飯を食べるような人だったからね』
「なるほど、気が合ったんだな」
『そうだな。和純にも少なからず友達がいたらいいが』
「和純…」
『淋しいか?』
「まあな。だけど今はジュニーがいるから大丈夫だ」
『そうか。ところで瑠宇の両親は?』
「知らないと言ってるだろ?」
『すまない…。年のせいか忘れやすくなってるみたいだ』
「実際85歳だろ?」
『いや、1085歳だ』
「ドラゴンになって長いんだな」
『そうだ。けどもう私も長くない…』
「………」
『だから、それまでに黒龍を倒さないといけない』
「黒龍は今どこにいる?」
『デーモンキャッスルだ。いまハルクが、3代目のミスティとして黒龍を保護している』
「ハルクと言うと…」
『和純の母親の正式名称だ。彼女は女だが執事をしていたからね』
「だから、和純は母親と会ったことがないと…」
『彼女も苦渋の選択を選んだわけだ』
「じゃあ、ジュニーも苦渋の選択でドラゴンになったのか」
『違う。リーとの約束だから』
「約束かぁ。私もレバインとしたぞ」
『和純と会ってはいけない』
「でもさ、私は会いたいぞ」
『私も会いたいな』


すると、満月が急に赤くなった。

『不吉な予兆が続くとは…』
「レバインもこの月の時によく悪夢を見る」
『いったん、帰ったほうがいい』
「そうだな。私1人で行くから、ジュニーは待ってて」
『テレポート出来るか』
「なんとかな。じゃあ行ってくる」

そう言うと瑠宇は、ドラゴンキャッスルにテレポートして戻った。


するとハリルがいた。

「ハリル!!」
「大変よ。レバインが」
「レバインに何があった?」
「とにかく来て」


2人はレバインの寝室に向かった。

そして瑠宇はドアをノックした。

「入っていいか…」
「その声は瑠宇か?」
「あぁ。心配になって帰ってきた」
「とにかく入れ」


そう言うと瑠宇はドアを開けた。

レバインは汗だくになっていた。

そして、瑠宇はこう言った。

「レバインどうした…」
「悪夢を見た。今回もこのドラゴンキャッスルのドラゴン達が…」
「………」
「全員滅ぶ夢…」
「嘘だろ?」
「違う…。背後に黒龍がいた…」
「じゃあジュニー達もみんな死んでしまう…」
「ハリルが死ねば、この世界は終わる…」
「紅龍だからか」
「…あぁ」
「レバイン…。私、和純に会う」
「会っても無駄だ」
「でも、あいつならなんとかしてくれる」
「私には頼らないのか」
「………」

(紅龍の件を言えばレバインは、きっと嘆くだろうな)

「なら、どうして戻ってきた」
「ジュニーが行けと言ったからだ」

すると、レバインはいきなり瑠宇に切り付けた。

瑠宇は驚いた。

「ジュニー…」
「どうした?」
「私の血にも彼の血が流れている」
「……」
「少なからず、和純とも血縁関係にある。それを思うと…何かに取り付かれたようになる。あいつは破滅の使者だ!!」

そしてまた瑠宇を切り付ける。

「私を置いてゆくのか?あぁ、お前は私の気持ちが分からないと言ったよな?和純と会うなら今すぐここで死ね!!」

瑠宇は危険を察知したのか、レバインが持っていたナイフを奪った。

「一つ聞く。レバインはどうして私を拾った?」
「………本当は誘拐した」
「やはりな。私ももう大人だ。これは胸のうちに秘めておく。だが私の自由を束縛するな。私は私だ。あんたのものじゃない!!」
「なんだと!!」

するとレバインは瑠宇の背後に立った。

その瞬間、瑠宇は振り向いて、レバインを切ろうとした。

しかし実際に切れたのはレバインのおさげだった。

髪がパラパラと落ちていく…。

我に返ったレバインは自分の髪を触った。

「ない…おさげが…」
「レバイン?」
「切った?」
「ごめんなさい……」

するとレバインは瑠宇を抱き締めた。

「瑠宇…ごめんなさい」
「………」
「今まで、騙してた」
「………」
「私は…私は…1人になりたくなくてお前を誘拐した」
「………」
「あの時、私は帰る場所がなかった…」
「…もういい…」
「瑠宇…。行くなら行けばいい。でも…私を忘れないで」

レバインは、初めて涙を流した。

「忘れない。レバインもこの天空の世界も」
「ありがとう」
「髪の毛……」
「いい」
「でも大事な髪の毛だったんだろ?」
「瑠宇…。その髪の毛を貸しなさい」

瑠宇はいったん離れて、レバインに髪を渡した。

すると、レバインは何かに髪の毛を具現化してしまった。

「この槍を持っていけ。そして、万が一和純がお前を殺そうとしたら、それで防衛しろ」
「レバイン…」
「まだ完全に和純を信じたわけじゃない。だけど、瑠宇。お前の唯一の友達だから、会いにいけ」
「やっと許してくれた」
「許したわけじゃない。ただ、彼も瑠宇に会いたがっていた。笛の音色がいつも聞こえてくる。あれはジュニーが教えてくれた『英雄の行進曲』だな」
「レバイン、丸くなったな」
「太ったって言いたいのか」
「違う。雰囲気が前より優しくなった」
「でも切り付けたんだぞ」
「なぁに。私は平気だ。白魔法が使えるからな」
「そうか…」
「取り敢えず、レバイン。その髪の毛切り揃えるから鏡の前で座って」
「分かった」

レバインは椅子に座った。

瑠宇は、レバインの髪を器用に切り揃える。

「瑠宇、私おかしくないか」
「おかしくないぞ。似合ってる」
「良かった…」

そのままレバインは眠ってしまった。

レバインの寝室の窓から、ジュニーがテレポートしてきた。

「ジュニー」
「眠ったみたいだな」
「そばにいてやってもいいか?」
「構わないぞ」
「レバイン、最近何かに取り付かれたみたいになるんだって」
「多分、紅龍の血だな」
「人の心じゃなくなるんだな」
「確かにな。しかも彼は今、迷っている」
「何を」
「分からない。ただこの世界のことだ。きっと私達にも関係する」
「ならば早く宴をしなければ」
「あぁ…。和純も呼びたい」
「レバインが許してくれない」


するとジュニーはレバインの額に手を当てた。

「瑠宇、氷枕作って」
「何故だ」
「レバインの額が熱いんだ。早く!!」

ジュニーはレバインをベッドに寝かせて、瑠宇は氷枕を作ってレバインの頭にしいた。

「急に熱くなった…」

するとハリルがやってきた。

「リー」
「彼もまた紅龍の血と闘っている」
「つまり、変化前の状態か」
「そのまま熱が引かないと、紅龍になってしまう…」
「不都合なのか?」
「黒龍がいるからよ。なんとしてでも、レイを助けて」
「レイ?」
「この子の本名は徳川礼。れっきとしたジパング人よ」
「じゃあなぜブロンドヘアーなんだ」
「隔世遺伝よ。私の血が流れているの…」


「父さん…母さん…死なないで!!」

レバインはまた夢を見ている。

「リー。レバインを助けてくれ」
「分かったわジュニー」

するとある女性がやってきた。

「私がやるわ」
「秋さん!!」
「久し振りですね、ジュニー」
「とにかくあれを」
「はい」


すると、秋美はレバインの胸の当たりに手を当てた。

そして『心からの治療』を施した。

「………」

レバインは穏やかに寝息を立てている。

「ありがとう。秋さん」
「久し振りね。秋」
「そうですね。ハリルさん」
「あなたも龍になったの?」
「えぇ、主人が亡くなってから…」
「イナー先輩はいつに亡くなってしまったのだ?」
「確か、漣王子が即位した年だと思います」
「じゃあ棗が生まれたころだな」
「でも、どうして今に…」
「黒龍が完全復活してしまったからです。私もあなたがたと一緒に戦いたいんです」

すると瑠宇がこう言った。

「あの…名前…」
「すみません。私の名前は佐伯秋美。生前は秋美クリスと言われていました」
「和純と同じ名字?」
「えぇ。私達はジパングに飛ばされたハルクの第二の親として派遣されたのです。しかし主人はハルクを拾った日に亡くなりました。そして、私は主人からの手紙で自分の本名が分かったのです」

するとレバインが起きてこう言った。

「確かリリアンというシーフの親だな。秋美は」
「はい、レバイン竜王。彼は若くしてこの世を去りました」
「もしかしたら、彼が私に悪夢を見せているかもしれない」
「それはどういう意味ですか?」
「佐伯遼を忌み嫌っているのをあの世で彼は知っている。だから」
「違うと思います。彼は、そんなこと気にしないと思います。それに悪夢を見せてるのはリリアンではありません」
「じゃあ誰?」
「あなたが最も忌み嫌っている佐伯遼自身なのです」
「そこまでして私を思い詰めたいのかあの女は」
「違う。遼はお前に危険を意識交信で教えているんだ」

ジュニーがそう言うと、レバインはこう言った。

「まさか…あの女が?」
「彼女はデーモン一族ではあるけど、この世界の平和を守った善人よ」
「嘘だ!!私の父親と母親を殺すような真似をしたのに」
「違う!!漣も美希もハルクとは家族ぐるみで仲が良かった。ハルクは…漣と美希が守れなくて、せめてお前を助けようと榴弾に当たった」
「遼が私を助けただと?」
「彼女は棗、つまり今の衛が赤ん坊の時に離れてしまったから、お前だけは助かってほしいと必死で私を呼んだ」
「そして…あなたと遼は別れてこの世界に生きているの…」
「今まで…私は誤解をしていたのか」
「そういうことになる。だが、このことであなたの本当の名前が分かったの」
「レバインじゃないのか」

するとジュニーはこう言った。

「レバインはリーが付けたもう1つの名前だ。本名は、徳川礼。お前は元々クリスタルキャッスルのジュニーX世の第一王子だった」
「じゃあ今のジュニーY世が、私の父親の弟なのか」
「正解だ。暗黒戦争がなければ、確実にお前はジュニーY世になれた」
「そうだったのか」
「そして、和純はお前のいとこ」
「つまり…私もデーモン一族なのか」
「違う。お前はれっきとしたジュニー一族だ」
「………」
「ショックか?」
「いや。ただ和純が私のいとこだとは知らなかった」
「和純も知らない事実だ」
「だから、あなたにも和純の力は必要になると思う」

レバインは間を置いて、こう答えた。

「だが私は混血の奴に、手を貸したくない」
「いずれそう言っていられなくなる」
「時が近付いてきたのか」
「えぇ、いつ黒龍がこの世界に来てもおかしくない」
「瑠宇、帰るぞ」

ジュニーがそう言うと、レバインは悲しそうな顔をした。

「レバイン?」
「………」
「淋しいのか…」
「この年になってもまだ淋しい…」
「大丈夫だ。瑠宇はお前を見捨てたりするような子じゃない。それに彼女には重要な役割があるからな」
「…クリスタルの収集と…」
「龍達をここに連れてくることだ。世界各国に龍達がいるからな。それに和純の笛で龍達を集めるから、彼の力が必要だ」
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