ー龍達の宴ー

□序章―運命のコドウ―
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「ということは、レバインは瑠宇を誘拐したことになるんやな」
「それとは違うと思う。レバインさんはそんなに悪い人には見えなかったよ」
「人は見掛けに寄らんのよ?」
「そうだけど…」

すると衛が、和純の部屋に入ってきた。

「こんばんは…お邪魔してます」
「雅也君か。こんばんは」
「お父さん…」
「どうかした?」
「雅也を今日1日泊めていい?」
「いいよ。それと幸次さんから雅也くんを頼まれているからね」
「親父が?」
「雅也くんが心配みたいけど、向こうは遠い国だしね」
「そうですか…」
「もうすぐで夕食できるから、良かったら一緒に食べよう」
「はい」
「和純、雅也くんと仲良くするんだよ?」
「はい」

すると衛は去っていった。

「王様直々に来るんやな」
「僕に対しては過保護だから」
「俺んとこは放任主義やで。でも親父も心配してくれてたわ」
「ふうん。あのさ…雅也って16だよね」
「そやで?」
「同い年だね」
「そやな」
「2人目の友達だね」
「1人目は?」
「瑠宇だよ」
「そっかぁ瑠宇と友達か。俺は玲奈ちゃんと友達や」
「玲奈?」
「佐伯玲奈ちゃんや。めっちゃ可愛いし、瞳とか魅力的やで」
「僕と同じ佐伯なんだ…」
「そう言えばそうやな。でもあの子は遠い国におるし、直接会ったわけやないしな。まあテレビ電話で話したりするけど」
「ふうん」
「女の子に興味ないんか?」
「あんまりないよ。僕そういうの疎いから」
「それは残念な話やで?せっかく綺麗な顔してるんやし、そないなこと言ってたら宝の持ち腐れやで」
「だって…」
「人見知りやもんな」
「うん…。だから雅也とこうやって話せるのも不思議なくらい。なんでだろ」
「気ぃ合うからちゃう?」
「うん」
「性格、正反対やけどな」
「雅也は明るいし社交的だけど、僕は内向的だし暗いし…」
「暗くはないで。まあ内向的やけどな」
「そろそろ夕食食べに王室に行こう」
「うん」

2人は、王室に向かった。

「マサ王子、ようこそ」

メイド達がそう言って、雅也だけを手招いた。

「あれ?和純は?」
「あれは、ただの掃除夫です」

(そっか…。和純がジュニーY世の第一王子って言うのは知られていないんやな。でもなんで掃除夫?)

「僕は別室で食べますから」
「そうしなさい」

すると、衛がやってきた。そしてこう言った。

「和純も一緒に食べよう」
「ですが和純は掃除夫の身分です。王様方とは一緒に食べられません」
「これは王の命令だ。それにマサ王子もいることだしな」
「ですが…」

すると雅也がこう言った。

「みんなで食べた方が楽しいでな?和純」
「………」
「マサ王子もそう言っていることだから、さぁ来なさい」
「はい…」

和純は隅の方に座った。
そして、夕食が運ばれてきた。

「えらい豪華な料理やわ〜。和純って毎日こんなん食べてるんや…」
「違うよ。僕は掃除夫だから自炊するの」
「なんで?あんた王…」

和純は雅也を睨んだ。

「そのことはみんなには内緒でしょ?」
「すまん。でも、あんたの扱いひどすぎとちゃう?」
「仕方ないでしょ…。僕はデーモン族の子なんだから…」
「知られてるんか?」
「うすうす気付かれている。だから他の同じ世代の人よりも身分はずっと下…」
「掃除夫って位はどれくらいなん?」
「う〜ん。まあ王様が社長だとすると、平社員に当たるメイドや兵隊よりも下だね。しかも掃除夫は僕1人なんだ」
「てことはこの城の掃除はすべてあんたがしてるわけ?」
「うん」
「大変な重労働やん。俺なら無理やわ」
「でも集中できるからいいんだよ」
「変わってるな」
「まあね。よく変人だと言われるよ」
「でも、みんなのために頑張ってる和純は素敵やで」

すると和純は顔を赤らめた。

「どないした?」
「僕、褒められ慣れてないから…」
「なんで」
「いつも、みんなに気味悪がられてるし…」
「その眼鏡が原因なんとちゃう?」

そう言うと雅也は和純の眼鏡を外そうとした。

すると和純は思いっきり避けた。

「そこまでして眼鏡外されたないん?」
「うん…。これはお父さんの伊達眼鏡だから」
「衛さんのん?」
「うん」
「そうか。すまんかったな…。にしてもここの料理うまいわ。流石やな」
「まあね」
「食べ終わったら、風呂入らん?」
「そうだね」

すると衛がこう言った。

「和純、マサ王子にこれを」

衛は和純に何かを渡した。

「何これ」
「フェニックスの羽根だよ。置き土産として客人に贈るもの」
「綺麗な羽根やね。ジュニーY世…ありがとうございます」
「どういたしまして。マサ王子、良かったら普通に『衛』と呼んでくれないかな」
「いいんですか?」
「あぁ、君のお父さんと親しくさせてもらってるからね」
「そうですか…」

そして食事が終わった。

「和純、雅也くんを風呂場に連れていってあげなさい」

衛がそう言うと、和純は雅也を風呂場に連れて行った。

そして脱衣所で2人は衣服を脱いだ。

「お前、めっちゃえぇ体してるやん。流石、唯一の掃除夫やな〜」
「えへへ」
「眼鏡外したら?」
「そうするよ」

和純は眼鏡を外した。

「やっぱ、素顔の方が好きやわ俺」
「だから僕は…」
「男やろ?分かってる分かってる。でも、そんなん性別関係ないで?」
「でも可愛い女の子が好きなんでしょ?」
「当然やん」
「いいから。入るよ」

2人は風呂場に入った。

「にしても広いな〜」
「雅也の城の風呂場はそんなに広くないの?」
「ここよりはな」
「あのさ・・・あんまり見ないで?」
「え?」
「人の目線に慣れてないんだ・・・」
「そうなん?」
「僕、昔のことがトラウマで人嫌いなんだ・・・」
「人嫌い?」
「うん。あんまり見られると困る・・・」
「そうか」
「ごめんね?せっかく僕に仲良くしてくれようとしてるのに」
「気にせんでええで?和純が嫌なら見ぃへんわ」

そう言うと雅也は和純から離れた。

雅也はピンを外した。そして直ぐに髪を洗った。前髪がかなり長いが、綺麗なキューティクルが目立っていた。

「綺麗・・・」

思わず和純は感嘆の声を漏らした。

「え?なにが綺麗なん?」
「・・・雅也の髪の毛」
「俺、地毛が茶髪なんよ」
「そうなの?僕は真っ黒」

すると、雅也はピンを和純の髪に止めた。

「素顔も綺麗やけど、髪も肌も綺麗なんやね」
「そうかな・・・」
「俺らの国は南国やさかいすぐ日に焼けるんよ」
「健康的で良いじゃない」
「そうかな。にしても衛さん似ではないよな?和純って」
「うん。お母さん似って言われる」
「じゃあ、めっちゃ和純のお母さん美人なんや」
「分からないよ・・・」
「そうか・・・。俺の親父が遼さんは美人やって言ってたで?」
「遼?」
「そう、和純のお母さんの名前」
「男みたいな名前だね」
「それは・・・和純だって女みたいな名前やん」
「確かに・・・」
「実際女みたく綺麗やし」
「恥ずかしい・・・」
「可愛いなほんま」
「男に可愛いはほめ言葉?」
「まあな」
「そうなんだ・・・」
「そろそろ、俺出るわ」
「僕も出るよ」

2人は風呂場から出て、パジャマに着替えた。
そして髪を乾かした。

「雅也って髪下ろしたら印象変わるね」
「そうかぁ?」
「うん。結構」
「和純の素顔オカルト部に見せたら、たぶんびっくりすると思うで」
「それは無理だよ」
「まあな。眼鏡が和純のステータスやもんな」
「まあね。そういえば明日は発掘捜査じゃなかった?」
「あぁ、聖なる湖やろ?参加してくれるん?」
「うん。なんだか面白そう」
「そうか。バーベラも喜ぶと思うで」
「バーベラ?」
「ハンドルネーム。本名は俺も知らん」
「てことは、雅也の先輩?」
「そうやな。新入部員は自己紹介するけど、先輩らはハンドルネームで自己紹介するから。なかなかの推理やな」
「うん。バーベラさんだけ大人びていたから」
「なるほど」
「他の人は後輩と同じ4年生?」
「そうやな。このオカルト部を立ち上げたんは俺とバーベラやし。バーベラは元々霊媒士やったさかいえらい不気味がられな・・・。ちょうど和純の容姿が怖いのと同じ反応」
「ふうん…。僕、まだ掃除が終わってないから、先部屋に戻っていて」
「分かった」

雅也はそう言うと、和純の部屋に向かった。

和純は眼鏡を掛けて割烹着を着て風呂掃除をし始めた。

すると衛がやってきた。

「今日ぐらいはいいんじゃないか?和純」
「でも…これは僕の役目」
「例え、掃除夫の身分ではあってもお前は俺の息子だし、第一王子なんだぞ?」
「王子がしちゃ悪い?」
「まあね。それに雅也くんを向こうで待たせたらダメだろ?」
「うん…」
「掃除は俺に任せて」
「お父さん?」
「その伊達眼鏡貸して?俺に掃除をさせたとみんなが知ったら大変だし…」
「でも素顔…」
「大丈夫。裏道に行けば誰にも会わないから」

すると和純は割烹着と伊達眼鏡を渡して、自分の部屋に向かった。

(にしても、和純は王子なのにどこか遼に似てるから、臣下に見えるよな)

そう衛はぼんやり思った。

和純は、自分の部屋に帰った。

「えらい早かったんやな」
「お父さんが、代わってくれたの」
「え?衛さんが」
「うん、王子身分である僕がやるのはおかしいぞって」
「いやいや、王様やったら余計にあかんやん」
「そうなんだけど…」

すると雅也は和純の顔を見た。

「眼鏡は?」
「…お父さんに渡した」
「元々衛さんのもんやしな」
「……でも眼鏡がないと落ち着かない…」
「そうか…。じゃあこれ使ったら?」

それは黒縁眼鏡だった。

「これは?」
「俺の眼鏡」
「伊達眼鏡?」
「まあ、そうやな。掛けてみぃ?」

雅也がそう言うと、和純は眼鏡を掛けた。

「うわ、似合ってるわ。流石遼さんの子やな」
「遼…」
「なんにも聞いてないんか」
「ううん…。少しなら聞いたよ。僕らの世界を守るために闇の世界へ行ったって」
「それだけか…。衛さんも秘密主義者やな」
「なんで?」
「実は、遼さんはなここの臣下しててんよ」
「初耳だね…」
「リアクション薄いなぁ」
「今日いろんなことがあって、疲れたの…」
「そっかそっか…。じゃあもう寝よ?」
「うん」

雅也は灯を消して、2人は早めに眠った。




一方、瑠宇は聖なる湖で聖龍と談話をしていた。

「ジュニーはここに来たことあるのか」
『あるさ。リーが封印されたときに、デーモンと戦って飛ばされた場所だから』
「ふうん。ジュニーの時代からデーモンは生きていたのだな」
『しかも今もまだ生きている』
「それが黒龍か」
『奴の魔力は恐ろしい。あの時春樹がいたから倒せたけど…』
「そうか…。そういえばレバインを助けたのは誰なんだ?」
『私だ』
「ジュニーが?」
『確か彼が、5歳の時に漣と美希が亡くなった』
「漣?美希?」
『彼の父親と母親だ。彼らはタイムスリップをしてあの子を産んだ。そして暗黒戦争のときレバインをかばって亡くなった』
「………それで助けたのか?」
『あぁ、レバインも私の子孫だからな。あとレバインは…』
「レバインは?」
『紅龍の血が流れている』
「純血?」
『純血かどうかは分からないが…』
「もしかしたら、レバインは…」
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