ー龍達の宴ー

□序章―運命のコドウ―
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その瞬間だった。

銀色のドラゴンがやってきた。

「レン!!」

そして、誰かを乗せていたようで、すぐに和純の元に来た。

「和純!!」
「お父さん!!」
「大丈夫だったか?」
「・・・」
「どうした?」
「怒らないんですか?」
「どうして?」
「勝手にはぐれたのは僕なんですよ?」
「いや・・・俺の不注意だ。しかし、この傷はなんだ?」
「・・・」
「言えないのか」
「はい・・・」
「とにかく、その女の子に礼を言いなさい」

すると瑠宇はこう言った。

「礼はいらない」
「でも・・・」
「いいから」

レバインが衛を見てこう言った。

「あんたは、ジュニーY世だな」
「ああ、そうだ」
「なぜ、デーモン一族の女と」
「それは関係ないだろ?」
「大いにある」
「どうして」
「それは、ここでは言えない。だが二度とあんたの息子をここに来させてはならない」
「デーモンが憎いからか?」
「そうだ。たとえこいつがその気が無くても、我らはデーモンを許さない」
「分かった。約束しよう」

レバインと衛は、契約書のもと約束をした。

「今日1日は、許してやろう。だが」
「分かってます・・・」
「和純・・・」
「瑠宇、今日はお礼になにかさせて?」
「いいのか?」
「うん」

そう言うと2人は城の中に行ってしまった。

「あの子は?」

衛がそう言うとレバインはこう言った。

「捨て子だ。あの子が3歳の時に私が拾った」
「捨て子?本名は?」
「知らない。瑠宇という名前しかな」
「あんたは・・・」
「レバイン・トニー」
「父母は?」
「暗黒戦争で亡くなった」
「そこで、ここに避難したわけだ」
「そう言うことになる」
「ちなみにあんたの年齢は?」
「17だ。あんたは?」
「今年で32になる」
「なるほど」
「え?」
「なんでもない」
「でも、いいのか?」
「何がだ?」
「和純を泊めても」
「瑠宇が気に入ってるからな」
「そうか・・」
「それより、あんたは泊まらないのか?」
「・・・」
「国が放っておけないか?」
「まあな。だが和純のほうも心配だ」
「あの性格じゃあな」
「あの子は、遼似の子だ」
「遼?あのデーモンの末裔の?」
「正式にはハルク・ダミアス」
「ダミアス家の女か」
「あぁ。ミスティの子でもあるがな」
「待て・・・。ならそのハルクはミスティに騙されている!!」
「母さんも言っていたが、どういう意味だ?」
「私にも、分からない。だが悪い予感がする」
「こんなにも平和なのに?」
「ああ・・・」
「それがミスティに関係してるなら、遼と玲奈が危ない!!」
「玲奈?」
「俺のもう一人の子だ。あの子も遼といる・・・」
「すぐに行け」
「断る」
「どうして?」

すると、衛は真剣な顔をしてこう言った。

「和純が、自力で遼に会いに行かない限り、俺達は会わないと約束してしまったからだ」
「いますぐ、その約束を取り消せ!!」
「無理だ。聖属性の俺が行けば、間違いなく死ぬ」
「だから、闇・聖どっちの属性を持つあいつでないと無理なのか」
「正解。だから、このことは」
「あいつには黙ってほしいか?」
「もちろんだ」
「分かった。しかし・・・」
「あの約束は守るさ。じゃあ、俺は帰る。和純に言ってくれ」
「分かった」

そう言うと和純は銀のドラゴンに乗って帰っていった。

一方、和純は瑠宇に手当てをしてもらっていたのだ。

「にしても、よく泣かなかったなお前」
「泣いても無駄だから」
「感情は素直に出さないと駄目だぞ?」
「どうして?」
「何を考えてるか分からないからな」
「そうなの?」
「そうだ」
「うん・・・」
「俺は、和純気に入った」
「・・・」

すると、和純が涙を流した。

「よく我慢したな。お前」
「違うの・・・。初めて友達が出来て嬉しかったから」
「俺?」
「うん・・・。僕人見知りだし、あまり自分から話しかけないから」
「そうか、じゃあ俺達は友達だな」
「うん・・・。でも瑠宇、君は女の子だよね?」
「俺って言っちゃあ駄目?」
「ううん。でもちょっと変」
「そうか・・・。私って言えばいいのか?」
「そうだよ」
「あのさ・・・」
「なあに?」
「その腰につけてるものはなんだ?」

すると、和純はそこからフルートを出した。

「お母さんがくれた、ホリーフルートだよ」
「フルートか・・・」
「初めて見る?」
「うん。なにか音が出るものか?」
「うん」
「じゃあ、お前の好きな曲を吹いてくれ」
「分かった」

和純は立ち上がってフルートを吹きだした。

それは瑠宇にとって生まれて初めて聞く音色だった。
和純は終始嬉しそうな顔をして吹いている。

まるで、さっきの暗い顔していたのと別人だ。

そのフルートの音が帰路中の衛にも聞こえた。

(和純、本当にフルート吹くのが好きなんだな)


そして、ドラゴンキャッスルの住人達も聞き入っている。

(なんて、いい音色だろう)

そして、ジュニーがハリルにこう言った。

「懐かしい音色だね?リー」
「えぇ、私の生前はよくあなたの音色で癒されたのよ」
「あのメロディーは『小さな幸せ』だね」
「そうね」

そして、和純は吹くのを止めた。

「すごいな。和純は」
「ううん。僕、これしか出来ないよ」
「十分だ。さて今日は遅いから休むんだ」
「瑠宇は?」
「レバイン兄ちゃんのところへ行く」
「そうか・・・」
「寂しいのか?」
「ううん」
「そうか」

そう言うと瑠宇は、レバインの部屋に行った。

すると、レバインは眠っていた。

瑠宇はそっと毛布をかけてやった。

「瑠・・・」

レバインは瑠宇の気配で起きた。

「レバイン兄ちゃん・・・」
「和純は?」
「眠った」
「そうか・・・」
「ここのところ兄ちゃんの様子がおかしいよ?」
「そうか?」
「何か嫌な夢でも見たの?」
「夢か・・・夢ならマシだ」
「どういうこと?」
「瑠宇にはまだ難しすぎるから、また今度な」
「うん・・・。でも心配」
「すまない」
「寝るなら、三つ編みほどいてあげるよ」
「うん」

そう言うと、瑠宇はレバインの髪を解いた。

彼の髪は、彼の臀部まで伸びていた。

また、長い間三つ編みをしていたためほどかれた髪は緩いウェーブがかかっていた。

その彼の顔は終始安心しきった顔で、和純の前で見せた厳しい顔からは想像できないほど穏やかな顔をしていた。

「瑠宇」
「どうしたの?」
「和純はどんな奴だ?」
「初対面だからよく分からないけど悪い奴じゃない」
「でも、あいつはデーモン一族の子だ」
「それは関係ないと思うよ」
「そうなのか?」
「種族なんて関係ないよ?俺・・いや私達だってドラゴンたちと共生し合っているから」
「私?・・・いつから自分の呼び名を変えた?」
「和純が、おかしいって言ったとき」
「そうか・・・」
「いやか?」
「不愉快だ」
「どうして?」
「瑠宇が、私から離れていきそうだから」
「兄ちゃん・・・」
「だから、もう会っちゃ駄目だ」
「離れていくのが怖い?」
「あぁ」
「意外と寂しがり屋だな兄ちゃんは」
「誰だって1人は寂しいさ」
「和純も・・・」
「あいつには父親がいる」
「兄ちゃんには・・・」
「いない。だから瑠宇、私を見捨てるな」
「うん」

そう言うと、レバインは憂鬱は顔になった。

「どうしたの?兄ちゃん」
「世界の終末が来るまであと8年か・・・」
「世界の終末?」
「あぁ・・・黒龍が封印から解き放たれた時この世界は滅亡する」
「それまでに・・・どうしたらいい」
「瑠宇、お前は何も心配しなくていい」
「でも・・・」
「私がなんとかする」
「兄ちゃん・・・」
「だから、もうここから外に出るな?いいか」
「嫌だ!!」
「どうして?」
「私だって、やれること見つけたい」
「瑠宇・・・」
「それに、和純だって力を貸してくれるはずだ!」
「無理だよ・・・」
「どうして?」
「あいつは」
「デーモンの末裔だから?どうしてそこまでこだわるの?」
「デーモンは破壊の象徴だ。幾度もこの世界を滅茶苦茶にしてきた」
「だからって、あいつは・・・」
「そうしないって言い切れるか?」
「でも、あいつは私のためにフルートを吹いてくれた」
「まさか・・・」
「知らなかったの?」
「だから、あんなに眠りたくなってしまったのか」
「あれは睡眠の歌か?」
「違う・・・。とても心地よい音色だ。でも、あいつ・・・」
「いずれにせよ、そんなに敵視しちゃ駄目だよ?」
「瑠宇・・・」
「それと、私はレバイン兄ちゃん好きだからずっといてあげる」

レバインはその時、普通の少年のようにただ顔を赤らめていた。

「兄ちゃん?」

瑠宇が彼の顔をのぞきこんだ。

「なんでもない。今日は疲れたみたいだから寝るな?」
「分かった」

そう言うと、瑠宇は出て行こうとした。

「待って?」
「ん?」
「おやすみは?」
「おやすみなさい。レバイン兄ちゃん」

そう言うと、レバインは笑顔になった。
安心したのかすぐに彼は眠ってしまった。


瑠宇は、ドラゴンキャッスルの外に出た。


「毎日大変だね」


その声の主はジュニーだ。

「ううん。レバイン兄ちゃんには世話になってるから」
「そうか」
「それに。私の帰る家はここしかないから」
「私もだ」
「ジュニーは、どうしてドラゴンになったの?」
「今の瑠宇には、分からないよ」
「意地悪」
「大人になったら、話してあげよう」
「うん」

2人は城の階段の上の座った。


「ジュニーは、寂しくないの?」
「寂しい?ううん。寂しくないさ」
「どうして?」
「今は、ハリルがいるからね」
「じゃあ、生前はずっと寂しいままだったんだ」

ジュニーは頷いた。

「他の女性と結婚して子供も授かって幸せだったけど・・・」
「いつも、心の中にハリルがいた?」
「鋭いな。瑠宇は」
「直感力だけは優れてるから」
「リーはいつも私の太陽だった」
「ふうん」
「多分、春樹もそれに気づいていた」
「春樹?」
「私の妻だった女性」
「その人は?」
「私の生前に亡くなった」
「その人は、きっと寂しかっただろうね」
「あぁ、私のせいだ」
「・・・」
「リーも、春樹も結局守れなかった・・・」
「だから、ドラゴンになったわけ?」
「8歳にしては上出来な答えだね」
「そうか・・・ちょっと外れてたか」
「うん。でも、瑠宇も私は好きだよ」
「ありがとう。ジュニーは優しいから好きだ」
「レバインも優しくないのか?」
「兄ちゃんは同情で・・・」
「違うと思うぞ?レバインは、お前のこと好きだぞ?」
「好きかあ」
「まあ、いずれすべて分かる」
「そうだな。ハリルはいいのか?」
「リーは、今眠っている。夜は早く寝るから」
「ふうん」
「瑠宇は寝ないのか?」
「眠れない」
「和純と一緒に寝たらどうだ?」
「兄ちゃんが怒りそう」
「1日だけなら許すんじゃないのか?」
「ならいいけど」

そう言いつつも、瑠宇は和純のいる寝室に向かった。

彼は、起きていた。
夜空を眺める瞳は悲しみを現した。

瑠宇はそれが『寂しさ』だとすぐに分かった。

そして、和純は瑠宇に気づいた。

「瑠宇」
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