ー宿命ー
□最終決戦・父と子の和解
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「『嘆きの天使』を吹くなんて度胸ある小娘ね。でも、それ程度で私を殺せると思ったら大間違いよ」
すると、ミスティは止めに2人めがけて『デス』を唱えた。すると、2人の体は、動かなくなった。そして、ミスティは2人の体を聖なる湖まで、投げ落とした。
「これで、私の勝ちね。やっとやっと念願のデーモンキングダムが誕生するのね」
一方、美希と漣は、湖の深い所まで沈んでいた。すると、先祖の霊達が彼らの名前を呼んだ。
「漣、美希」
すると、美希は目を開けた。
(私ら負けたんや…)
すると、黄金の髪の青年がこう言った。
「まだ、負けてないよ、美希」
「あんた誰?」
「ハル・トニーだよ」
「ハル王?でもなんで」
「ここは意識内の世界。君達は死んでしまったんだ」
「やっぱり…」
「でも、まだ黄泉の世界に来るのは、早すぎる」
「でも、もう私らは…」
「姉さんに頼んで、現世に連れてもらった」
「ハリルさんに?」
「彼女の肉体は、死にはしたけどフェニックスとして転生した。だから、2人を生き返らせてもらった」
「…」
「それに、君達はやらなきゃいけないことがあるだろ?」
「ミスティを倒すこと?」
「そうだよ。だから、まだ死ぬのは早い」
すると、漆黒の髪の青年がこう言った。
「私達は、いつでも君達を見守っている。だから、不安になるな」
すると、ハルU世とジュニーU世は消えていった。気がつけば、美希達は湖のそこに沈んでいた。美希は急いで、漣を抱えて陸に上がった。
「漣!しっかりしぃ」
しかし、漣はまだ目を覚まさない。美希は、強行手段にでた。彼の唇を自分の唇でふさいで、息を吹き込んだ。すると、漣は水を吐き出した。そして、ゆっくりと目を開けた。
「美希…」
「良かったぁ。ご先祖様が生き返らせてくれたんよ」
「そうか…」
「動けるか?」
「ちょっと無理」
「分かった」
そう言うと美希は漣を抱えて、小屋の中に入った。そして、濡れている彼の体をふいた。
「でも、なんで封印されへんかったん?」
「分からないよ…」
「そうか。今日はもう休んだほうがよさそうやな」
「すまない…」
「ううん。気にせんとき」
美希は、そう言うと漣の髪を撫でた。
「体冷えてるし、毛布でも被っとき」
美希はそう言うと、漣に毛布をかけた。すると、漣は美希の体を引き寄せた。
「美希も体冷たい」
「そやな」
2人はそれ以上は言わずに、眠ってしまった。気がつけば、夜になっていた。
「そういえば、美希。俺にキスしなかった?」
「あれは、キスとちゃう。人口呼吸や」
「あのさ、それしなくても俺あの時、気がついてたんだよ」
「なら、はよ言え!恥ずかしかったんやからな」
「美希、キスして?」
「偉い甘えたさんやな」
「感触が忘れられないんだ」
「将来、変態呼ばわりしたんねん」
「いいよ」
漣は心底嬉しそうな顔をした。
「なら、平和になったらしたるわ」
すると、漣は美希の体を近付けさせた。
「美希、今して?」
すると、美希と漣は目が合った。漣の顔は濡れぼそっていたため、かなり色っぽく見えた。美希は、ドキドキした。
(あかん。このままやったら、ムードに流されてキスしてしまいそうや)
「ねぇ?お願い」
(これ犯罪やでぇ。なんとか断らないと)
「なら、俺からする」
漣はそう言うと、美希の唇を寄せようとした。すると、美希はこう言った。
「ちょっと待って」
「ん?」
「キスは…」
「キスは?」
「結婚してからやと、爺ちゃんが言ってた」
「今時そんな人なんていないよ。古いなぁ美希は」
すると、漣は美希の唇を自分の唇に寄せようとした。しかし、美希は必死で止めようとする。
「あかん!」
「は?」
「心の準備がまだ出来てへん」
「でもあの時は、したよね?」
「あれはキスとちゃう。人口呼吸やと言ったやろ?」
「分かってる。でも…」
「キスしたい?」
「うん…。こんなに美希を求めるのは、初めてかも」
そう言う漣の顔は酷く艶っぽい。美希は自分の体の体温が上がるのを感じた。
(私、漣見て体温上がってる。もしかして、私変態?)
「あかん。私、漣見て体温上がってるような変態だから」
「美希は変態じゃないよ。俺も美希見て体温上がってるんだから」
「漣…」
「もう一度言うよ。キスして?」
「分かった」
美希は、ゆっくりと漣の唇に自分の唇を重ねた。漣は、目を閉じた。
(漣の唇、柔らかい)
すると、2人は倒れ込んだ。美希は力が抜けた。漣は自分の手を美希の手に擦り込ませて、重ねた。
「んっ…」
美希は息苦しくなって思わず、声を漏らした。そして、漣はゆっくりと唇を離した。
「漣…」
「気持ち良かった…?」
「あんたそんなこと思ってやってたん?」
「まあね」
「変態やろ?」
「変態かもね」
漣はそう言うと笑いだした。
「あんたも大概やな。ハルクのこと言われへんのとちゃう?」
「まあね。でも、美希も…」
「はいはい、気持ち良かったですよ。力抜けてもうたし…」
「そう。大人になったら、その程度で終わらないからね」
「分かってる。大人の事情やろ?」
「うん」
「今日はもう寝よ」
そう言うと、美希は眠ってしまった。漣は彼女を起こさないように、に単身でデーモンキングダムに向かった。そして、ミスティが現われた。
「あら、まだ生きてたんですの。彼女は?」
「美希を巻き込みたくない…」
「分かったわ。始めましょ」
そう言うと、ミスティはトランスし始めた。
「あなたも出来るはずよ」
「出来ない…」
「ならば死になさい」
ミスティはそう言うと、漣の首を締め付けた。
「抵抗できるのも今のうちよ」
「うぐっ」
漣は、ミスティの手を離そうとする。すると、ミスティは漣の鎧を木っ端微塵にした。
「これであなたを守るものはすべてなくなったわ。せっかくだから、死に方だけでも選択権を2つあげるわ。1つ目は一瞬にして死ぬこと。2つ目はゆっくりと苦しみを味わいながら、死ぬの。どっちがいい?」
「どっちもいやだ!!」
「なら、ゆっくり死なせてあげる」
ミスティはそう言うと、漣の首をゆっくりと強く締め付けた。
「はぁ…はぁ…」
「苦しいでしょ?楽に死にたい?」
「いやだ…。死にたくない…」
「そう、ならもっと苦しみを味わいなさい」
ミスティはそう言うと、意地悪な笑みを浮かべて『スパーク』を唱えた。漣の体中に電流が流れる。
「くわぁああ」
漣は苦しみのあまり声を漏らした。ミスティは、漣を押し倒した。
「あなたの苦痛に歪む姿、たまらないわよ。本当お兄さんそっくり。なんか快感を覚えるわ」
「兄さんだと?」
「貴方のお父様は、私の兄よ。本当、強情なところがそっくり」
「俺とあの人を一緒にしないで」
漣は、目を閉じた。
「観念したようね。最初からそうすれば楽になれたのに…」
すると、漣はこうつぶやいた。
「美希…ごめん…」
「死にそうになっても、まだ言うのね」
「俺…無理…」
漣はもはや正気を失っている。そして、彼の目が空ろになっていく。
「美希…」
「よっぽどその娘が好きなのね」
「あぁ…。好きだよ。だから巻き込みたくなかった」
漣の目から涙が流れる。
「だめなんだ…。俺、死にたくない…。死にたくない」
一方、美希は起きたばかりだ。小屋に置き手紙があったので読んだ。
『親愛なる美希へ
これを読んでいる頃には俺はもうデーモンキングダムに行っている。お前をこれ以上巻き込みたくない。だから、俺だけで行くよ。もしも俺が死んだら、その時は美希がミスティを倒してほしい。最後に1つだけ言うよ。美希、最後までありがとう。
徳川漣』
美希はその手紙を読んだ後、すぐにテレポートしてデーモンキングダムに向かった。そして、美希とミスティの目が合った。
「あら、早いわね」
「あんた、漣に何したん!?」
「軽く死んでもらおうとしたわ。でも、なかなか死なないのよ」
すると、美希は横たわる漣を見た。
「正気を失ってる?」
「彼は、うわ言のようにあなたの名前を呼び続けたわ」
すると、美希はミスティの頬を拳で殴り飛ばした。
「何するのよ!」
「あんたなんかな、あんたなんかな許したれへん!!」
美希はそう言うと、ミスティに『ストップ』をかけた。普段より威力が強かったのか、ミスティは長時間止まる羽目になってしまった。美希はすぐに漣の体を抱き抱えた。
「漣…」
「美希?」
漣は焦点の合わない目で、美希を見る。
「お願いや。正気に戻って。私と一緒に戦って!」
すると、漣の目の輝きが戻った。
「美希!」
「あの置き手紙なんなんよ」
「あれは…」
「私、足手まといやった?」
「違う…」
「なら、あんなこと書かんといて!」
「…」
すると、ミスティが動きだした。そして、ミスティは2人に『デスペラード』を放った。美希は漣をかばって、自らの体で魔法を受け止めた。
「美希!!」
「私なら平気やで」
そう、美希は寸前に『封殺』を唱えていたのだ。
「立てる?」
「うん」
漣はそう言うと、立ち上がった。そして、自らの体に『フルケア』をかけた。
「おとんのブレスレットも役に立つんやね」
「そうだね」
「美希、ミスティを『分析』してくれ」
「分かったで」
美希はそう言うと、ミスティを『分析』した。
「ミスティ。本名田所ミチル。つまり…俊也さんの親族か。闇属性の人間である。ダークナイトよりレベルが上である。そして、トランス時にはダークプリンセスになる。地上の中では最強を誇るだろう」
「そうか…。お父様は自分の妹に囚われていたわけだな」
「そういうこっちゃ」
すると、ミスティがこう言った。
「私には弱点はごさいませんわよ」
「あっそ」
「ならば、始めましょうか?」
「えぇ」
漣はそう言うと、ミスティは消えた。
「来るで」
美希はそう言うと、ミスティは漣の背後から襲いかかった。漣は拳でミスティの攻撃を受け止めた。
「まだ抵抗する力があったのね。褒めてあげるわ。でも、あなたに勝ち目なんかない」
ミスティはそう言うと、漣から離れた。そして、美希の首もとに剣を向けた。
「美希!!」
漣は力を溜めた。
「ちょっとでも動いたら、小娘を殺すわよ」
「なんて、卑怯な!!」
「卑怯もくそもないわよ。私の野望が、もう少しで叶ったのに…」
「あなたの野望は、人を苦しめさせるだけだ」
「そんなの知ったこっちゃないわ。デーモン一族を貶めた先祖達の恨みよ」
「なんて悲しい思想なんだ。恨みを果たしたとしても、悲しいだけだよ」
「確か、あなたダークナイトを恨んでいたわね。13年間ずっと会いに来ずに、プリンセスを淋しい想いさせたからと…」
「恨んでいたさ。許さないと思ったよ。でも、お父様は…妹の貴女のせいで会いに行けなかった。そうだろ?ミチルさん」
「そうよ。よく知ってたわね」
「だから、お父様を恨んでも意味がないって分かったんだよ。本当に恨むべきだったのは、あなただ」
「そう。そうなら、その恨んでいる人が自分の好きな人を殺す様を見なさい」
すると、ミスティは美希の首に剣を突き刺そうとした。
「やめろ!!やめてくれ!」
漣の悲痛な叫びだけが響いた。
「漣…」
「美希、必ず助けてやるからな」
「大丈夫やで」
「美希?」
「私は大丈夫やから、ミスティを殺して!」
「でも、それじゃ美希まで…」
「分かってる。分かってて言ってんのよ。こうなることは覚悟してここに来た…」
すると、美希はフルートを取り出した。
「やめろ!あの曲は吹くな!!」
「漣、分かってな。これしか方法は無かったんよ」
美希は『嘆きの天使』を吹いた。すると、ミスティが倒れた。そして、美希は漣に倒れ込んだ。
「美希…」
「後は頼んだで」
「待って…」
「ちょっと…休まして」
「まさか…」
「さっきので生命力使い果たしたみたいなんよ。だから…」
「美希…、なるべく早くに済ませるから待ってて」
「頼んだで」
すると、美希は目を閉じた。漣は美希の体をそっと横たわらせると、立ち上がった。すると、ミスティがこう言った。
「2度もそうするとは思わなかったわ。でも、それ程度で私は死なないわよ」
すると、漣はこう言った。
「美希、俺ちゃんと約束果たすからな…」
すると、漣の体が急に光り出した。
(これが、トランス!?)
いや違った。トランスする時よりも、強烈な光が彼を包んでいる。漣の背中が急に痛み出した。しかもその痛みは尋常ではない。何かが彼の背中を突き破っていく。すると、彼の左手の甲から『統』がはっきりと現われた。彼の背中から白銀の翼が生えた。そして、背中からは大量の血が飛びだした。
「うわぁああああっ!!」
漣はあまりの痛みで思わず叫び膝を抱え込んだ。ミスティは驚いてこう言った。
「あなた、いったい…」
漣は、立ち上がった。
「これが、俺の真の姿…」