ー宿命ー

□最終決戦・父と子の和解
2ページ/5ページ

「『嘆きの天使』を吹くなんて度胸ある小娘ね。でも、それ程度で私を殺せると思ったら大間違いよ」

すると、ミスティは止めに2人めがけて『デス』を唱えた。すると、2人の体は、動かなくなった。そして、ミスティは2人の体を聖なる湖まで、投げ落とした。

「これで、私の勝ちね。やっとやっと念願のデーモンキングダムが誕生するのね」

一方、美希と漣は、湖の深い所まで沈んでいた。すると、先祖の霊達が彼らの名前を呼んだ。

「漣、美希」

すると、美希は目を開けた。

(私ら負けたんや…)

すると、黄金の髪の青年がこう言った。

「まだ、負けてないよ、美希」

「あんた誰?」

「ハル・トニーだよ」

「ハル王?でもなんで」

「ここは意識内の世界。君達は死んでしまったんだ」

「やっぱり…」

「でも、まだ黄泉の世界に来るのは、早すぎる」

「でも、もう私らは…」

「姉さんに頼んで、現世に連れてもらった」

「ハリルさんに?」

「彼女の肉体は、死にはしたけどフェニックスとして転生した。だから、2人を生き返らせてもらった」

「…」

「それに、君達はやらなきゃいけないことがあるだろ?」

「ミスティを倒すこと?」

「そうだよ。だから、まだ死ぬのは早い」

すると、漆黒の髪の青年がこう言った。

「私達は、いつでも君達を見守っている。だから、不安になるな」

すると、ハルU世とジュニーU世は消えていった。気がつけば、美希達は湖のそこに沈んでいた。美希は急いで、漣を抱えて陸に上がった。

「漣!しっかりしぃ」

しかし、漣はまだ目を覚まさない。美希は、強行手段にでた。彼の唇を自分の唇でふさいで、息を吹き込んだ。すると、漣は水を吐き出した。そして、ゆっくりと目を開けた。

「美希…」

「良かったぁ。ご先祖様が生き返らせてくれたんよ」

「そうか…」

「動けるか?」

「ちょっと無理」

「分かった」

そう言うと美希は漣を抱えて、小屋の中に入った。そして、濡れている彼の体をふいた。

「でも、なんで封印されへんかったん?」

「分からないよ…」

「そうか。今日はもう休んだほうがよさそうやな」

「すまない…」

「ううん。気にせんとき」

美希は、そう言うと漣の髪を撫でた。

「体冷えてるし、毛布でも被っとき」

美希はそう言うと、漣に毛布をかけた。すると、漣は美希の体を引き寄せた。

「美希も体冷たい」

「そやな」

2人はそれ以上は言わずに、眠ってしまった。気がつけば、夜になっていた。

「そういえば、美希。俺にキスしなかった?」

「あれは、キスとちゃう。人口呼吸や」

「あのさ、それしなくても俺あの時、気がついてたんだよ」

「なら、はよ言え!恥ずかしかったんやからな」

「美希、キスして?」

「偉い甘えたさんやな」

「感触が忘れられないんだ」

「将来、変態呼ばわりしたんねん」

「いいよ」

漣は心底嬉しそうな顔をした。

「なら、平和になったらしたるわ」

すると、漣は美希の体を近付けさせた。

「美希、今して?」

すると、美希と漣は目が合った。漣の顔は濡れぼそっていたため、かなり色っぽく見えた。美希は、ドキドキした。

(あかん。このままやったら、ムードに流されてキスしてしまいそうや)

「ねぇ?お願い」

(これ犯罪やでぇ。なんとか断らないと)

「なら、俺からする」

漣はそう言うと、美希の唇を寄せようとした。すると、美希はこう言った。

「ちょっと待って」

「ん?」

「キスは…」

「キスは?」

「結婚してからやと、爺ちゃんが言ってた」

「今時そんな人なんていないよ。古いなぁ美希は」

すると、漣は美希の唇を自分の唇に寄せようとした。しかし、美希は必死で止めようとする。

「あかん!」

「は?」

「心の準備がまだ出来てへん」

「でもあの時は、したよね?」

「あれはキスとちゃう。人口呼吸やと言ったやろ?」

「分かってる。でも…」

「キスしたい?」

「うん…。こんなに美希を求めるのは、初めてかも」

そう言う漣の顔は酷く艶っぽい。美希は自分の体の体温が上がるのを感じた。

(私、漣見て体温上がってる。もしかして、私変態?)

「あかん。私、漣見て体温上がってるような変態だから」

「美希は変態じゃないよ。俺も美希見て体温上がってるんだから」

「漣…」

「もう一度言うよ。キスして?」

「分かった」

美希は、ゆっくりと漣の唇に自分の唇を重ねた。漣は、目を閉じた。

(漣の唇、柔らかい)

すると、2人は倒れ込んだ。美希は力が抜けた。漣は自分の手を美希の手に擦り込ませて、重ねた。

「んっ…」

美希は息苦しくなって思わず、声を漏らした。そして、漣はゆっくりと唇を離した。

「漣…」

「気持ち良かった…?」

「あんたそんなこと思ってやってたん?」

「まあね」

「変態やろ?」

「変態かもね」

漣はそう言うと笑いだした。

「あんたも大概やな。ハルクのこと言われへんのとちゃう?」

「まあね。でも、美希も…」

「はいはい、気持ち良かったですよ。力抜けてもうたし…」

「そう。大人になったら、その程度で終わらないからね」

「分かってる。大人の事情やろ?」

「うん」

「今日はもう寝よ」

そう言うと、美希は眠ってしまった。漣は彼女を起こさないように、に単身でデーモンキングダムに向かった。そして、ミスティが現われた。

「あら、まだ生きてたんですの。彼女は?」

「美希を巻き込みたくない…」

「分かったわ。始めましょ」

そう言うと、ミスティはトランスし始めた。

「あなたも出来るはずよ」

「出来ない…」

「ならば死になさい」

ミスティはそう言うと、漣の首を締め付けた。

「抵抗できるのも今のうちよ」

「うぐっ」

漣は、ミスティの手を離そうとする。すると、ミスティは漣の鎧を木っ端微塵にした。

「これであなたを守るものはすべてなくなったわ。せっかくだから、死に方だけでも選択権を2つあげるわ。1つ目は一瞬にして死ぬこと。2つ目はゆっくりと苦しみを味わいながら、死ぬの。どっちがいい?」

「どっちもいやだ!!」

「なら、ゆっくり死なせてあげる」

ミスティはそう言うと、漣の首をゆっくりと強く締め付けた。

「はぁ…はぁ…」

「苦しいでしょ?楽に死にたい?」

「いやだ…。死にたくない…」

「そう、ならもっと苦しみを味わいなさい」

ミスティはそう言うと、意地悪な笑みを浮かべて『スパーク』を唱えた。漣の体中に電流が流れる。

「くわぁああ」

漣は苦しみのあまり声を漏らした。ミスティは、漣を押し倒した。

「あなたの苦痛に歪む姿、たまらないわよ。本当お兄さんそっくり。なんか快感を覚えるわ」

「兄さんだと?」

「貴方のお父様は、私の兄よ。本当、強情なところがそっくり」

「俺とあの人を一緒にしないで」

漣は、目を閉じた。

「観念したようね。最初からそうすれば楽になれたのに…」

すると、漣はこうつぶやいた。

「美希…ごめん…」

「死にそうになっても、まだ言うのね」

「俺…無理…」

漣はもはや正気を失っている。そして、彼の目が空ろになっていく。

「美希…」

「よっぽどその娘が好きなのね」

「あぁ…。好きだよ。だから巻き込みたくなかった」

漣の目から涙が流れる。

「だめなんだ…。俺、死にたくない…。死にたくない」

一方、美希は起きたばかりだ。小屋に置き手紙があったので読んだ。

『親愛なる美希へ

これを読んでいる頃には俺はもうデーモンキングダムに行っている。お前をこれ以上巻き込みたくない。だから、俺だけで行くよ。もしも俺が死んだら、その時は美希がミスティを倒してほしい。最後に1つだけ言うよ。美希、最後までありがとう。

徳川漣』

美希はその手紙を読んだ後、すぐにテレポートしてデーモンキングダムに向かった。そして、美希とミスティの目が合った。

「あら、早いわね」

「あんた、漣に何したん!?」

「軽く死んでもらおうとしたわ。でも、なかなか死なないのよ」

すると、美希は横たわる漣を見た。

「正気を失ってる?」

「彼は、うわ言のようにあなたの名前を呼び続けたわ」

すると、美希はミスティの頬を拳で殴り飛ばした。

「何するのよ!」

「あんたなんかな、あんたなんかな許したれへん!!」

美希はそう言うと、ミスティに『ストップ』をかけた。普段より威力が強かったのか、ミスティは長時間止まる羽目になってしまった。美希はすぐに漣の体を抱き抱えた。

「漣…」

「美希?」

漣は焦点の合わない目で、美希を見る。

「お願いや。正気に戻って。私と一緒に戦って!」

すると、漣の目の輝きが戻った。

「美希!」

「あの置き手紙なんなんよ」

「あれは…」

「私、足手まといやった?」

「違う…」

「なら、あんなこと書かんといて!」

「…」

すると、ミスティが動きだした。そして、ミスティは2人に『デスペラード』を放った。美希は漣をかばって、自らの体で魔法を受け止めた。

「美希!!」

「私なら平気やで」

そう、美希は寸前に『封殺』を唱えていたのだ。

「立てる?」

「うん」

漣はそう言うと、立ち上がった。そして、自らの体に『フルケア』をかけた。

「おとんのブレスレットも役に立つんやね」

「そうだね」

「美希、ミスティを『分析』してくれ」

「分かったで」

美希はそう言うと、ミスティを『分析』した。

「ミスティ。本名田所ミチル。つまり…俊也さんの親族か。闇属性の人間である。ダークナイトよりレベルが上である。そして、トランス時にはダークプリンセスになる。地上の中では最強を誇るだろう」

「そうか…。お父様は自分の妹に囚われていたわけだな」

「そういうこっちゃ」

すると、ミスティがこう言った。

「私には弱点はごさいませんわよ」

「あっそ」

「ならば、始めましょうか?」

「えぇ」

漣はそう言うと、ミスティは消えた。

「来るで」

美希はそう言うと、ミスティは漣の背後から襲いかかった。漣は拳でミスティの攻撃を受け止めた。

「まだ抵抗する力があったのね。褒めてあげるわ。でも、あなたに勝ち目なんかない」

ミスティはそう言うと、漣から離れた。そして、美希の首もとに剣を向けた。

「美希!!」

漣は力を溜めた。

「ちょっとでも動いたら、小娘を殺すわよ」

「なんて、卑怯な!!」

「卑怯もくそもないわよ。私の野望が、もう少しで叶ったのに…」

「あなたの野望は、人を苦しめさせるだけだ」

「そんなの知ったこっちゃないわ。デーモン一族を貶めた先祖達の恨みよ」

「なんて悲しい思想なんだ。恨みを果たしたとしても、悲しいだけだよ」

「確か、あなたダークナイトを恨んでいたわね。13年間ずっと会いに来ずに、プリンセスを淋しい想いさせたからと…」

「恨んでいたさ。許さないと思ったよ。でも、お父様は…妹の貴女のせいで会いに行けなかった。そうだろ?ミチルさん」

「そうよ。よく知ってたわね」

「だから、お父様を恨んでも意味がないって分かったんだよ。本当に恨むべきだったのは、あなただ」

「そう。そうなら、その恨んでいる人が自分の好きな人を殺す様を見なさい」

すると、ミスティは美希の首に剣を突き刺そうとした。

「やめろ!!やめてくれ!」

漣の悲痛な叫びだけが響いた。

「漣…」

「美希、必ず助けてやるからな」

「大丈夫やで」

「美希?」

「私は大丈夫やから、ミスティを殺して!」

「でも、それじゃ美希まで…」

「分かってる。分かってて言ってんのよ。こうなることは覚悟してここに来た…」

すると、美希はフルートを取り出した。

「やめろ!あの曲は吹くな!!」

「漣、分かってな。これしか方法は無かったんよ」

美希は『嘆きの天使』を吹いた。すると、ミスティが倒れた。そして、美希は漣に倒れ込んだ。

「美希…」

「後は頼んだで」

「待って…」

「ちょっと…休まして」

「まさか…」

「さっきので生命力使い果たしたみたいなんよ。だから…」

「美希…、なるべく早くに済ませるから待ってて」

「頼んだで」

すると、美希は目を閉じた。漣は美希の体をそっと横たわらせると、立ち上がった。すると、ミスティがこう言った。

「2度もそうするとは思わなかったわ。でも、それ程度で私は死なないわよ」

すると、漣はこう言った。

「美希、俺ちゃんと約束果たすからな…」

すると、漣の体が急に光り出した。

(これが、トランス!?)

いや違った。トランスする時よりも、強烈な光が彼を包んでいる。漣の背中が急に痛み出した。しかもその痛みは尋常ではない。何かが彼の背中を突き破っていく。すると、彼の左手の甲から『統』がはっきりと現われた。彼の背中から白銀の翼が生えた。そして、背中からは大量の血が飛びだした。

「うわぁああああっ!!」

漣はあまりの痛みで思わず叫び膝を抱え込んだ。ミスティは驚いてこう言った。

「あなた、いったい…」

漣は、立ち上がった。

「これが、俺の真の姿…」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ