ー宿命ー

□それぞれの想い
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すると、漣は美希にホーリーフルートを渡した。「これは?」「純平伯父様が、くれたんだ。美希なら使いこなせると思ってね」「ふうん。フルートは吹いたことはあるけどな」美希はそう言うと、早速フルートを吹き出した。「う〜ん。イマイチピンと来ないね」漣はそう言うと、操はフルートを吹くのをやめた。「そやね。しっくりこうへんわ」美希はそう言うと、具現化魔法でホーリーフルートを変身させた。「これは、伝説のホーリーエンジェルフルート!」「そうや。多分この方が吹きやすいと思うで」美希はそう言うと、再びフルートを吹き出した。すると、さっきと違って非常に繊細な音が聞こえた。漣は思わず魅入られた。そして、美希はフルートを吹くのをやめた。「すごいよ。さっきとは大違い」「そうやな。なんか、繊細な音やったね」「俺の先祖にもホーリーエンジェルフルートを吹いた人がいるんだよ。きっとこんな音色を奏でていたんだな」「そうやろね」美希はそう言うと、一番好きな曲を吹き始めた。それは、『初恋の歌』だった。(この曲聞いたことある)美希は夢中でフルートを奏でている。すると、樹里がいた世界が見えた。(ひい祖母様の恋心だったのか)正確には違う。何故なら、樹里が映画で演じた 王女の想いをリリアンが、作った曲だからだ。しばらくして、美希はフルートを吹くのをやめた。「どやった?」「懐かしい感じだったよ。美希はこの曲が好きなんだね」漣はそう言うと、美希は顔を赤らめて言った。「さっきのは、あんたに対する想いなんよ」「へ?」改めて聞いて、漣も顔を赤らめた。「でも…。俺すごく冷たかったし…」「私、気にしてへんって言ったやろ?今でも好きなんや」「俺…」「気持ちに応えられないって言うんか?」すると、漣は下を向いてこう言った。「違う…。美希のこと好きなんだよ。でも、どうやって表現したらいいか分からなかったから…」「そうなん?」「うん。記憶を失った時、美希が言ってくれたよね?『記憶が戻って冷たい目をされても、嫌いにならない』って」「確かに言ったで?」「あの時、すごく嬉しかったよ。なんで嬉しかったか考えてたら、俺…美希のこと好きなんだと改めて気付いたの」「その言葉ほんま?嘘ちゃうよな?」美希はそう言うと、漣は強く頷いた。「そうか…。嬉しいわ」美希はそう言うと、漣を抱き締めた。「私、ずっと片思いのままなんかなって思ってたんよ。でも、今やっと両想いになれたんや。これほど嬉しいことはないな」「美希…」「それにな、明日どうなるか分からんけど、とにかく嬉しい」「ちゃんと2人生きて帰ろうな」「もちろんや。そして、みんなに堂々と恋人宣言するんや」「それはちょっと恥ずかしいかな…」「なら、2人だけの秘密な?」「うん」そう言うと、2人は見つめ合った。「美希、見ないうちに大人になったな」「お世辞かぁ?」「違うよ。なんか、そう思った」「そうなんや…」2人は黙ってしまった。そして、しばらく何も言えなかった。美希は思わず泣いてしまった。「堪忍なぁ。こんなに嬉しいことはないのに、明日を考えると怖いんや…」「俺もだよ。正直怖い」「漣も?」「うん」「そうなんか。一緒なんやね」すると、美希の体が震えた。「美希?」「春代おばちゃんみたいに、離れ離れになると考えると不安なんよ…。13年間も会われへんくても、春代おばちゃんは気丈にしてたけど、私は耐えられへん…」「美希…」「私は、1日でも漣に会われへんのは、耐えられれん。もうあんな淋しい想いするんはいややぁ」美希はそう言うと、目を閉じて涙を流した。彼女の不安ははかい知れないのだろう。「漣…漣…」美希の声が弱々しくなっていく。「美希、俺はもう君と離れたりしない。だから、泣かないで。ちゃんと笑ってよ」漣はそう言うと、美希は笑おうとした。しかし、不安が邪魔して笑えないのだ。「ごめんなぁ…。どうしても笑われへん。こんな私でごめん」「大丈夫だから…大丈夫だから」漣は美希をあやすように、背中を擦った。美希はひたすら泣き続けた。漣はただ彼女の涙を拭い続けた。そして、美希は泣きやんだ。「美希…。絶対離さない。それだけは誓うから」漣はそう言うと、美希はこう言った。「ほんまやで?頼むから、離れんといてな」「分かってる」すると、漣は美希を抱き上げた。「漣?」「見せたい場所があるんだ」漣はそう言うと、美希を抱き上げたままある所に行った。「ここは?」美希はそう言うと、漣がこう言った。「ホーリーウェディングホールだよ。いつか見せようと思っていた」「式場?」「あぁ。俺の先祖はみんなここで結婚式を挙げたんだ。まだ俺達には早いけどね。でも、いつか美希とここで結婚式をあげたいと思ったから、連れてきた」「綺麗な所やね、漣」「うん。まあ先にお母様が結婚式を挙げるけどね」「て言うことは、まだ春代おばちゃん結婚してへんかったの?」「うん。そうみたいだよ。結婚式挙げる前にお父様と、離れ離れになったからね」「俊也さんとの結婚は許せるんか?」すると、漣はすこし考え込んだ。そして、こう言った。「前なら絶対反対してたと思う。けど、お母様が13年間も待ちわびてた人だからね。お父様が意図的に連絡を取らなかった訳じゃないって分かったから、すべて許すことにした。それに、俺はお母様が幸せになれるんなら、結婚するのを賛成するよ」すると、美希はこう言った。「あんた変わったな」「いろいろあったからね。それに、お母様が結婚式を挙げたら、ちゃんとお父様を出迎えるよ」「そうか。俊也さん喜ぶと思うで」「うん」漣は、優しい笑顔を見せた。美希も笑顔になった。そして、2人はホールの中に入って、客人席に座った。「ところで、漣は何歳になったら結婚するつもりなん?」美希はそう言うと、漣はこう言った。「戴冠式が終わってからだよ。美希は?」「私も…」「じゃあ、20歳以降になるね」「そやな。その時まで待ってくれる?」「もちろん待つさ。将来の夢もあるしね」「将来の夢?」美希はそう言うと漣はこう言った。「クリスタルキングダムとトニーズキングダムの統一だよ。せっかく友好的な国同士なのになんで統一しないのかなって思ったから」「そうか。おとんもそれ聞いたら喜ぶで。そうなったらなんて名前の国にするんや?」「う〜ん。そこまでは考えてなかった」「考えてなかったんかい!まぁ、先の話やしな。そんときは誰が王様になるん?」「俺達の跡継ぎだよ」「てことは、私らの子供かぁ」「そうなるね。だから、明日頑張ろ?」「うん」そして、2人は白ユリの花畑の地下洞窟に戻った。そして、美希はこう言った。「寂しくならんように、手つないでくれへん?」漣は頷いて、さり気なく手を握った。「暖かいなぁ」「美希もだよ」「なんか、眠たくなってもうたな」「そのまま手を握ったまま、眠ろうか?」「いいん?」「うん。俺も手を握っていたいから」漣はそう言うと、2人は眠りについた。そして、まだ日が昇らない時に、透達は起きた。そして、操は美希達の所に行って、薄い毛布をかけてあげた。そして、2人は顔を洗いに外に行った。「あの2人、手を繋いで眠ってたな」操はそう言うと、透はこう言った。「お互い不安だからね。少しでも安心できるようにしたんじゃない?」「そうかもな。それに、徳川は優しい寝顔をしていた」「ふうん」すると、朝日が昇った。しかし、厚い雲に覆われているため、少ししか見えなかった。「さて、みんなを起こすかぁ」操はそう言うと、透はこう言った。「まだ早いよ」「そうか」「それに、2人きりでいたいし」「朝から、変態だな」「はぁ?」「下心でもあるんだろ?」「ないないない!!」「ふうん。ならもう少しだけ、ここにいてやるけど」「ありがとう」すると、透は地面に横たわった。操も隣りに横たわった。「まだ眠たいのか」操はそう言うと、透はこう言った。「まあね。いつもはもう少し遅めに起きるからな」「起こして悪かったな」「いいよ」「今日が終われば、早起きする必要もなくなるな」「そうか…」「まぁ日々の習慣はなかなかとれないけどな」操はそう言うと、透は頷いた。「なぁ、透。聖クリスタルスクールに戻ったらさ何したい?」「う〜ん、全校朝礼」「生徒会長らしいな」「操は?」「そうだなぁ。文化祭の用意でもしたいな」「そうかぁ」「透は総括だろ?」「あぁ、しばらく忙しい日が続くから一緒に帰れなくなるね」「それぐらい我慢するさ。それにダンス大会でまたパートナーしような」操はそう言うと、透は笑顔になった。「そしたら、とびっきり美人にメイクしてみせるから」「期待してるよ」すると、操は体を起こした。「どうかしたの?操」透がそう言うと操はこう言った。「そしたら『逆転カップル』の汚名返上だな」「ラブラブは否定しないんだね?」「うん。そこはとっておいてやる」操はそう言うと、顔を赤らめた。「操、その後は卒業考査だな」「そうだな。剣技頑張れよ」「あぁ、満点を目指すさ」「まぁ、筆記試験では負けないからな」「望むところだよ」すると、操はこう言った。「それが終われば、卒業式だな」「あぁ」「長いようで短かったな」「そうだな。いろいろあったな」透がそう言うと、操は頷いてこう言った。「何が一番思い出に残った?」「そうだなぁ。初めてしたダンス大会だな」「私もだ」「練習した時は、沢山喧嘩したよな」「そうそう。ちゃんとリードしろとか、ターンが違うとか」「おかげで、生傷もたえなかったよな」「お前がつまずくからだ」「俺には、元々センスがなかったんだよ」「そうだけどさ、本番の時はかっこよかった。私をちゃんとリードしてくれたしな」「そうか?」「それに最高の出来だったな」「みんな拍手してくれてたしね」「その時は優勝したんだよな?」「そうそう」「でも、あの時以来ダンス大会で参加出来なくなったんだよな」操はそう言うと、透はこう言った。「俺が生徒会に入って、ダンス大会には運営側だったからだな」「私は、放送部に入ってて、その日はひたすら曲をかけてたしな」「じゃあ、今回が最後になるんだね」「そうだな。透は生徒会を引退するし、私も放送部を引退するしな」「そうだね。他に良かった思い出はある?」透はそう言うと、操はこう言った。「学校以外ならある」「何?」「お前が魔法剣士に転職した時だ」「6年前の話だな」「そうなるな。あの時はモンスター討伐に行き詰まった時だったよな」「淳希伯父さんから、転職を勧められたんだよ。『お前は魔法が使えるから魔法剣士になれ』って」「おかげで、その後のモンスター討伐が速やかになったし、私の転職の転機にもなった」「そうなのか?」「あぁ」すると、操はこう言った。「お前と過ごした12年間は過酷だったけど、楽しかった」「俺もだよ」「これからも、よろしくな」「あぁ」透はそう言うとお互い握手した。そして、2人は立ち上がった。「さて、起こしにいくか」操はそう言うと、2人は白ユリの花畑の地下洞窟に戻った。まだみんな眠っていた。「そろそろ起きろよ」操は、漣達の体を揺すった。すると、漣が起き出した。「おはようございます」「おはよう。よく眠れたみたいだな」「はい」すると、美希も起き出した。「んあ?」「おはよう。美希」美希は眠たい目をこすってこう言った。「おはようございます。もう朝なんですか?」「そうだよ」すると次々に起き出した。そして、みんなは朝食をとることにした。「こうやって全員で食事をするのは、最後になるんやね」由希はそう言うと、マリアはこう言った。「そうですね。少し淋しい気持ちになりますけど」「そやな。でも、楽しかったで」「私も」すると、由希は自分のブレスレットを外した。「漣君、これを戦いの時に役立ててな」由希はそう言うと、ブレスレットを漣に手渡した。「これなぁ、すべての白魔法が使えるんやで」由希はそう言うと、漣はこう言った。「本当ですか?」「ほんまや」「ありがとうごさいます」「わいは、これくらいのことしか出来へんけど、頑張ってな」「はい」すると、マリアがこう言った。「美希さん、漣君、頑張ってね。そして、また図書館が復旧されたら遊びに来てね」「ありがとう。マリアさん」漣がそう言うと、冴子がこう言った。「王女、王子、短い間だったけど楽しかったぞ」
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