ー宿命ー
□残酷な運命
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「漣のダイヤモンドの光で闇が浄化されたの」
「そうか…」
「漣は先に帰って」
「でも、力を使い果たしてテレポートできないよ」
「私がかけてあげるから」
春代はそう言うと、漣にテレポートをかけた。
「なんで、息子を先に帰した?」
「2人きりになって話したかったから…」春代はそう言うと、俊也の腹部から血が流れているのを発見した。
「痛む?」
「あぁ、とても」
すると、春代は俊也に『フルケア』をかけた。みるみるうちに俊也の傷は塞がった。春代は俊也の変身を解いた。
「やっと…会えた」
春代はそう言うと、俊也を抱き締めた。
「恨んでないのか?俺を」
「全然恨んでなんかいない。だってミスティに操られただけなんでしょ?」
「…あぁ」
「それに、無事で良かったわ」
春代は満面の笑みを俊也に向けた。
「それよりどうして、ここに来たんだ?」
「漣が心配だったから」
「やはり、俺は心配されてなかったのか…」
「…心配でたまらなかった。本当は私があなたを倒す予定だった」
「そうか…」
「すると、漣が『お母様は血で汚してほしくない』って言ったの。本当に母親思いで優しい子だわ」
「漣は何歳になる?」
「今年で13よ。聖クリスタルスクールの1年生よ」
「漣が生まれた時から、もう13年が経ったんだな」
「私達が会えなかった13年と共に、漣は育ったわ。だから未だにあなたのこと憎んでいるわ」
「だろうな…。13年間も見捨てたから…」
「でも、時間が彼を癒してくれる。きっとあなたを心から許す日もやってくる」
すると、ミスティが現われた。
「久し振りね。プリンセス」
「ミスティ、まだ生きてたのね?」
「当然でしょ?あなた達、スタンス一族が死ぬまで私は死に切れないのよ」
すると、ミスティは『ダークアルテマ』を春代めがけて放った。俊也はとっさに春代をかばった。
「あなた、さては元に戻ったわね!?」
ミスティはそう言うと、春代が代わりに言った。
「そうよ。闇に染まるほど、俊也は弱くないもの」
「ふん!!直にこの城も消滅するわ。仲良く死になさい」
「天空の城まで崩壊するなんて…。なんて残酷な性格なの?」
「すべては、デーモン一族の世界を創造するためよ。だからあなた達は、消えてほしいの」
ミスティは消えると、城内が崩れ始めた。俊也はさっきの技で、動けなくなってしまった。春代はとっさにテレポートをかけようとした。しかし、テレポートが効かないのだ。
(さっきので魔力を使い果たしてしまったのか…)
そう思っているうちに、柱が倒れてきた。そして、俊也の体は外に投げ飛ばされてしまった。春代は急いで、城から脱出した。すると、俊也は雲の塀に辛うじて手を掴んでいた。春代は急いで俊也に手を差し延べた。
「さあ、掴まって」
「だめだ。もうこの城も崩れる…。だから春代だけで逃げてくれ!」
俊也はそう言うと、大地も揺れだして、危ない状況になった。
「嫌よ。13年前の過ちをもう犯したくない!!」
春代はそう言うと、俊也の手を掴んだ。
「離してくれ!お前まで道連れにするのは、嫌なんだ」
「だめよ!!もう淋しい想いしたくないの」
春代はそう言った。俊也の頬に涙が当たる
「涙…」
「13年間も淋しい想いしてたんだよ。もう、私を置いてかないで」
すると、春代がいる大地が裂けだした。
「いいから、逃げてくれ!お前には大事な息子がいるだろ?」
「漣は俊也にとっても大事な息子よ。だから離さない」
「でも、このままじゃお前まで巻き込んでしまう!!」
大地はすぐそこまで裂けてきた。
「春代!!いいから行け!」
俊也が叫んだと同時に、彼は手を離して、急降下した。そして、大地は裂け切った。春代は、雲の大地から飛び降りた。
(もう、あの時の悲しい思いはこりごりよ)
春代は、急降下している間にトランスした。そして、彼女の背中からは翼が生えた。春代はスピードを増して、俊也の方に向かった。俊也は目を閉じていた。春代は急いで、俊也の体を抱き締めた。しかし、スピードを出しすぎたのか、速度が全く落ちないのだ。
(このままだと、2人とも死んじゃう)
春代はなるべく、大地に当たる衝撃の大きさを和らげるため、バリアを唱えた。そして、2人は聖なる湖の水中にザバーンと大きな音を立てて落ちた。春代はすぐに俊也を陸まで運んだ。そして、春代は元の姿に戻った。
(助かったぁ…)
春代は安堵のためか泣き出した。すると、俊也が目を覚ました。
「助かったのか?」
「なんとか…」
俊也は春代の涙を拭った。
「なんで泣いてるんだよ?」
「だって…怖かったんだもん。また俊也と離れ離れになると思ったから」
すると、俊也は春代の頬を触った。
「暖かい…。あの頃と全然変わってない」
「少しは、変わったのよ」
「そうなのか?」
「だって、私クリスタルキングダムの女王になったんだもん」
「そうか。少し威厳がついたかな」
「ありがとう。あなたは、あの頃と変わってない。少し老けたけど」
「13年の年月が経ったからな」
「でも、あなたにクリスタルキャッスルを見せたかった…。私は…クリスタルキングダムを守れなかった」
「春代…」
すると、春代は大粒の涙を流した。
「一国の主なのに、国1つすら守れなかった…。城は全壊してしまったし」
「それでも、お前が生きているだろ?例え、城がなくなったって、国が滅んだってまた作り直せばいい」
「国民のみんなになんて顔したらいいか分からない」
「大丈夫だ。みんな分かってくれる」
「だといいな」
そう言うと、春代は体力を消費したのか、俊也に覆いかぶさるようにして、眠った。
(こんな小さな体で沢山のことを抱えていたんだな…。随分悪いことをしてしまったな)
俊也はそう思った。すると、湖が黄金に光り出した。そして、水中から紅龍が現われた。
「紅龍!?」
俊也はあまりの驚きに声を上げた。
「久し振りです。俊也さん。私達の国である飛竜の里も滅んでしまいましたが、ドラゴン達はみな、トニーズキャッスルの王女様の治療によって、元気になりました」
「そうか…」
「それに、この世界は滅んでしまいましたが、ミスティを完全消滅すれば、この大地は蘇ります」
「でも…ミスティがどこにいるか分からない」
「ミスティなら、デーモンキャッスルにいます。そこにいる春代さんに伝えてください。私は、タワーズキングダムに向かいますから」
そう言うと、紅龍は飛び立ってしまった。それと、同時にミスティがやってきた。
「闇化でないあなたには、もう用はない!
」
そう言うと、ミスティは2人を石化してしまった。あまりにも、帰りが遅いので漣は、聖なる湖に向かった。そこには、石化して動かない春代と俊也の姿があった。
「お母様?」
漣は魔法をかけたが、びくりともしなかった。すると、ミスティがこう言った。
「残念だけど、どんな魔法を使っても石化は解けないわよ」
「あんたの仕業だな!?あんたはなにがしたいんだ!!」
「そんなの簡単よ。この世界をデーモン一族の支配化に置くのよ」
「なんて、むごい…」
「命だけでも助かったんだから、感謝しなさい」
すると、漣は憎悪の目に変わった。
「よくも大事なお母様をこんな目に会わせたな!!絶対に許さない」
そう言うと、漣は剣を構えた。
「神聖な地で戦うのはごめんだわ」
ミスティはそう言うと、漣は剣を下ろした。
「その呪いを解きたければ、デーモンキャッスルに来なさい。まあ人数は何人でも構わないわ」
そう言うと、ミスティは消え去ってしまった。後から来た美希と由希は、春代達を見て絶句した。
「ハル王、美希」
「どないしたん?これ」
「ミスティに石化の呪いをかけられてしまったみたいです。どんな魔法を使っても効かないんです。だから、ミスティのいるデーモンキャッスルに行かないといけません」
「分かった。とりあえず、洞窟にテレポートすんよ」
由希はそう言うと、テレポートをかけた。そして、由希は事情をみんなに説明した。
「2人が石化したんは、ミスティのせいなんよ。どんな魔法を使ってもあかんみたいやし…。とにかく、デーモンキャッスルに行かないとあかんようになってしまった」
「酷い…。せっかく再会できたのに…」
「とにかく、待機する人と行く人を決めないとあかんな」
由希はそう言うと、透はこう言った。
「俺は待機します。ここも決して安全とは言えませんから」
「私も待機します」
「姉貴がいるんなら、待機します」
そして、ハルクとマリアも同意見だった。
「とすると、行くんは、美希と漣君だけやな」
「大丈夫か?」
「大丈夫です。漣の大切な両親助けるために、行くだけですから」
すると操は愛用の銃を美希に手渡した。
「なら、これを持っていけ。役に経つ筈だ」
「でも…大切な銃じゃなかったんですか?」
「一緒には戦いに行けないからな。気持ちだけでも、ついていきたいからな」
「ありがとうごさいます」
「漣、美希を頼んだぞ」
操はそう言うと、漣は頷いた。すると、透がこう言った。
「全世界の平和は2人にかかってるからな。頼んだぞ」
「リーダー、プレッシャーかけすぎですよ」
「そうか?すまない。だけど、頼んだぞ」
美希と漣は、深く頷いた。そして、透はこう言った。
「今日はもう遅い…。だから明日に行けばよい」
すると、淳希がやってきた。
「ふぅ。やっと見つけた」
「伯父さん!?」
「元気そうだな」
すると、漣は顔を曇らせる。
「けど、俺の両親はミスティの手で石化されました」
「そうか…。辛いとは思うけど、決していじけるなよ。漣」
「はい」
「でも、どうしてここに?」
「紅龍が行けと言ったからだよ」
「紅龍?」
「この世界の伝説のドラゴンのことだよ 。まぁ俗名はフェニックスだけどな」
「現われたんですよね?」
「あぁ」
「でも、フェニックスの羽根ですらこの石化は解けない…」
ルークは顔を曇らせてそう言った。
「ミスティの仕業だもんな。本人を完全消滅しなければ、解けないよな」
「だから、明日美希とミスティを倒しに行きます」
「漣、正気か!?」
目を見開く淳希、美希がこう言った。
「はい。至極正気です」
「でも、相手はあのミスティなんだぜ?春代ですら、倒せなかったんだぞ?」
「でも、俺達は未来のためにやらなければいけないんです」
そう言う漣の瞳からは、意志の強さが見えた。
「分かった。生きて帰ってこいよ」
「はい」
そして、夜になった。みんなは夕食を済ませた。そして、男女別に体を洗った。マリアとハルクと冴子と大人達はすぐに眠ってしまった。透と操は寝ずの番をすることにした。その間、奥の部屋で美希と漣は、会議を始めた。
「美希、ジョブレベルはいくつだ?」
「20いった所やで」
「微妙だな」
「やっぱり低いんか?」
「う〜ん、具現化魔法を使う人のレベルは分からないからな」
「簡単やで。まぁ、漣のレベルと比べたら劣るけど…」
「そうか…」
「そうやけど、この銃の威力は半端やないで。なんてったってレベル30以上の操さんの銃やからな」
「確かに、高そうな銃だな」
「漣、あんた…冷たい瞳せぇへんようになったな」
漣はその言葉に驚いた。
「そんなこと分かるのか?」
「もちろんや。瞳の奥が優しくなったしな。春代おばちゃんそっくりの目してるわ」
すると、漣は美希の目を見た。
「美希…」
「急にどないしたん?」
「いままで、ごめん。ずっと冷めた反応しか返せなくて」
「今更、謝ってどないするん?」
「だって、美希に『冷たい子』って言われる度、心が痛かった…。美希はお父様とは、何にも関係なかったのに…」
「いままで、ずっとそう思ってたんか?」
美希がそう言うと、漣は頷いた。
「分かってたで。あんたはあんたの親父が憎かったんやろ?それに、人が信じられなかった」
「どうしてそれを?」
「毎日見てたら分かるわ。そんなん。でも、いつかは信じてくれると思たんや」
「本当にごめん…」
うなだれる漣。
「謝らんといて。あんたの気持ちも知らんと『冷たい子』呼ばわりした私の方が悪いんやし」
「でも…、美希を傷つけた」
「大丈夫やで。私神経図太いし。あんまり気にしてないから。な、そんな顔せんといて?私まで悲しくなるからな」