ー宿命ー

□残酷な運命
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「それに、女王様の13年振りの再会だしな。戦いが終われば、すべてが終わる」

「ふうん。その後操さんはどうするんですか?」

すると、操は顔を赤らめながらこう言った。

「透とジパングに行って結婚する」

「ほんまですか!?」

「今日、プロポーズされた」

「あの透さんに?」

「あぁ、何の冗談だと言ったが、本人は至極真面目な顔をしていた」

「学生の身ですよ?」

「しかし、学生結婚もあるんじゃないかな」

「幸せになってくださいね」

「ありがとう。でも、美希はどうするんだ?」

「私は、王国の見合いをさせられるつもりなんです。でも気乗りしないんですけどね」

「漣がいるからか?」

操がそう言うと、美希は顔を赤らめながら頷いた。

「なら、ちゃんと言えばいい。漣ならしっかりしてるし、透よりも大人だぞ」

「透さんに失礼ですよ」

「ははははは」

操は盛大に笑った。

「でも、漣は明日天空の城に行くんです。だから生きて帰ってこれるかは、分からない…」

「彼を信じろよ」

「うん」

2人は夜空を見た。

「ここだけは、綺麗な星空だな。前に来たときもこうだった」

「へぇ」

「それと、ミスティ戦が終わって平和になっても、一緒のパーティーだったことを忘れないでくれ」

「もちろんです。忘れる訳ないでしょ」

「ありがとう。さてもう寝るか」

すると、モンスターがやってきた。

「ちっ、帰ろうとしてた所なのに」

操がそう言うと、銃を構えた。そして、銃を放った。しかし、モンスターは器用に避けている。美希が突然こう言った。

「こいつ、モンスターじゃないです」

「なんだって!?」

「生身の人間です」

すると、モンスターは着ぐるみを脱いだ。

「おとん!?」

「流石やな。一発で見抜くとは」

「何のために、モンスターなんかに変身したん?」

「正体を隠すためや。モンスターに変身しとったら、ほんまもんのモンスターに攻撃されへんですむしな。でも生身の人間に攻撃されたしな」

「ほんま悪趣味やな」

「しゃあないやん」

すると、操が一礼する。

「ハル王、ご無事で何よりです」

「これは、どうも」

「ジュニー女王もご無事のようです。それに徳川漣も救出致しました」

「ほんまか!?今みんなどこにおるん?」

「白ユリの花畑の地下洞窟です。夜も遅いので今眠っています」

「そうか。なんで2人は起きてんの?」

「眠れなかったんや」

「さては、漣君のことやな」

由希は意地悪い笑みを浮かべる。

「おとんの意地悪!!」

「そうか?まぁ、みんなの所に行こうかな」

由希はそう言うと、3人は洞窟に戻った。すると、ルークが起きていた。

「おかえり。あれ?ハル王じゃないですか」

「そうや。でも『ハル王』はやめてくれへんか」

「でも、あなたはトニーズキャッスルの王様」

「トニーズキャッスルはとっくに全壊したんやで。もうわいは、王様でもなんでもないんや。一人の人間『戸川由希』なんやで」

「由希さん…。懐かしい響きですね」

「そやな。もうみんなわいのこと『王様』呼ばわりばかりやったしな」

「とにかく、無事で良かったです」

「そうやね」

「みんな寝てるし、もうお休みになって下さい」

「そうするわ」

由希はそう言うと、眠ってしまった。そして、他の3人も寝ることにした。そして、運命の日がやってきた。春代は、洞窟の中に置かれていた覇王龍剣とダイヤモンドを漣に渡した。そして、こう言った。

「思いっきりやりなさい。彼もそれを望んでいるはずだから」

「はい」

すると、美希は何も言わずに漣にテレポートをかけた。

(無事に帰ってきてな)

ただそれだけを願って。

漣は天空の城に着いた。そして、城の中に入った。すると、誰もいないのだ。

(おかしい…前はドラゴン達がいた筈なのに)

すると、俊也が現われた。

「まだ生きていたみたいだな。流石あの女の息子だ」

「えぇ、簡単に死ぬ訳にはいきませんからね」

「冥土の土産にいいことを教えてやろう。俺はミスティの仲間ではない。だが闇に染まりし者だ」

すると、俊也はダークナイトの姿に変身した。漣は、深呼吸した。

「13年間ずっと話してなかったんですから、死ぬ前に話しませんか?」

「いいだろう。何が聞きたい?」


「どうして俺の名前が漣なんですか?」

「あいつに教えてもらわなかったのか?」「お母様は、城務で忙しかったので教えてくれませんでした」

「そうか…。お前の母親が男の子なら漣がいいと言ったからだ。後はなんだ?」

「どうして俺達を見捨てたんですか?」

「見捨てた…。お前達から見れば見捨てたも同然なんだろうな」

「理由が知りたいんです」

「そのことは前に言った筈だ」

「え?」

(まさか、あの時の夢は正夢だったのか!?)

「ミスティにさらわれたんですよね?」

「あぁ、死ぬ直前にだ」

「助けられたんですか?」

「分からない。でも命が助かったのは事実だ。しかし、命と引き換えに俺はミスティにある契約をしてしまった」

「それが完全に闇に染まることだったんですね」

漣はそう言うと、俊也は頷いた。

「だから、お前達に危害を加えたくないと思ったから、封印した」

「だから13年の月日が経ったわけですね」

「だが、お前のせいで闇が解き放たれてしまった。だから、もう俺はお前を殺すしかできない」

「俺もそのつもりで来ました。お母様を悲しませるなんてどんな人であっても、許せない」

「言いたいことはすべて言ったか?」

「えぇ、名残惜しいでしょうが、死んでもらいますよ。お父様」

漣はそう言うと、パラディンに変身した。そして、覇王龍剣を構えた。

「その剣は!?」

「分からない…。でもものすごい気を感じます。覚悟してくださいね」

漣はそう言うと、力を貯めた。俊也は身構えた。漣は早速、『レイブン・ストライク』を放った。しかし、糸も簡単に俊也は無効化してしまった。

「この程度の技で俺を倒せると思っていたか?」

俊也は冷酷な笑みを浮かべると、『ダークアルテマ』を放った。漣は剣で黒い球体を断ち切った。

「ほう。なかなかやるな」

俊也はそう言うと、暗黒剣に魔法を溜め込んだ。そして、『ダーク・スペシャル・マダイン』を剣から放った。漣は避けようとしたが、あまりの速さに避け切れず、大ダメージを受けた。俊也は漣に剣を向けた。

「悪いが、実の息子であろうが、哀れみの情なんて俺には持ち合わせてないからな」

俊也は漣めがけて剣を振り下ろした。しかし、漣は剣を受け止めた。

「そんなこと最初から知っています。でなきゃ、連絡くらいくれるでしょ?本当に冷酷な人だ」

「ふん」

漣は、逆に俊也の首元に剣を向けた。

「その血が俺に流れてると思うと、寒気がしますよ。そのせいで好きな人からは『冷たい人』呼ばわりですから」

「お前にも、好きな女はいたのか?」

「13になったら当然ですよ」

「お前が死ねば悲しむのか?」

「えぇ間違なく悲しむでしょう。それに俺が行かなかったら、お母様があなたを始末してたでしょう」

「やはり…。あいつは俺との約束を守るために」

「そんな綺麗ごとじゃ済まされないですよ。あなたがしたことを許さないと言ってましたから」

「だろうな。だが、この際どうでもいい」

諦めたように笑うも、すぐに冷徹な顔つきに戻る。

「そうですね。戦いの続きをしましょうか」

漣はそう言うと、剣を俊也に突き刺した。俊也の首元からは、鮮やかな赤い血が流れている。

「皮肉な程に綺麗な色をしていますね。もっとどす黒い色をしてると思っていたのに」

「くっ…」

「ははは、今すぐ俺の手で楽にしてあげますよ。お父様?」

漣は残忍な目をして笑っていた。

「お母様が聞いたら悲しむでしょうね。さぞかし俺を憎むでしょうね」

「春代の名前は出すな…」

「関係ないとでも言いたいんですか?あなたのこと1番に心配していたのに…。本当に酷い人ですね。どうしてお母様が惚れたか分からないですよ」

「惚れたのは、俺の方だった」

漣は、剣を抜いた。

「なんですって!?情の欠片の1つもないあなたが、お母様に惚れたですって!?」

「あの時は、情があった。彼女の純粋さに惚れたんだ…。お前は見たところ性格は俺似だからよく分かるよな?」

「えぇ、お母様は純真無垢な方です」

すると、ミスティがやってきた。

「完全に闇に染まってなかったな!!」

すると、ミスティは俊也に『邪悪な光』を浴びせた。

「うわぁああああ!!」

俊也はあまりの痛みに悲鳴を上げた。

「これであなたは完全なる闇の使者よ」

そう言うと、ミスティは去ってしまった。漣は俊也の目を見た。

(これが完全に闇に染まる目なんだ。もう、お母様のことなど忘れてしまったんだ)

すると、俊也は何も言わずに、剣を振り上げた。漣は避け切れずに傷を負った。

「お父様!!」

「もう、終わりにしよう。漣、お前はどうしたい。俺はもう理性が持たない」

「ならば、始末するしかないでしょう。最初からそのために来たのですから」

そう、本当の戦いはこれから始まりを告げるのだ。俊也の手の甲からは『闇』という字が現われた。すると、俊也の体は紅く輝き出したのだ。

(これは、トランス!?)

初めて見るトランス姿に、漣は驚きを隠せなかった。そして、俊也の目は紅く染まった。彼は、漣めがけて高速で剣を振り始めた。漣は避けるのが精一杯で、攻撃などとても出来る状況ではなかった。

「攻めたらどうだ?もしかしたら怖じけづいて攻められないのか?情けない」

すると、俊也は漣の首を掴んだ。

「このまま楽に死なせて欲しければ、そうしてやろう」

「俺は死にたくない」

漣は必死で俊也から離れようとしたが、全然びくともしないのだ。

「ならば、ジワジワといたぶって死なせてやろう。お前に最悪の苦しみを味わせてやろう」

すると、俊也は『スパーク』を漣にかけだした。

「んぐっ」

俊也は漣の首をどんどんきつく絞めていく。そして、『スパーク』の強度を強めていく。漣の顔が苦痛で歪む。

「苦しいか?苦しいだろう。楽に死なせてやりたかったが、お前が拒否したからな」

「うぐっ…」

俊也はとどめに、『ダークギガアルテマ』を漣に浴びせた。すると、漣の意識が遠のいた。俊也は漣を離した。

「悪く思うなよ。俺の邪魔をする者は、例え実の息子であっても容赦しないからな」

すると、俊也は漣の胸元に剣を突き刺した。しかし、漣は無傷なのだ。そう、ダイヤモンドに剣が突き刺さったからだ。すると、ダイヤモンドが突然光り出した。そして、無意識のまま漣はトランス姿に変身した。漣の額には『真』がはっきりと現われていた。そして、漣は起き上がった。

(ダイヤモンドが俺を守ってくれたんだ)

「お父様、気の毒ですが、所詮闇は光には勝てないんですよ」

「ならば、倒してからそれを証明してみろ」

2人はお互いの方に向けて、魔法を放った。しかし、相殺された。

「ほぅ。トランスした俺と互角に戦えるなんて、なかなか大した奴だな」

「褒めていただけて光栄です。しかし、あなたの負けは目に見えています」

「それはどうかな」

俊也はそう言うと、『真レイブン・ストライク』を放った。漣は覇王龍剣で『真レイブン・ブレイク』て相殺した。そして、2人はお互いに近付いた。すると、2人の剣が当たった。

「お前も必殺技が使えるんだな」

「当たり前でしょ」

ここからは、剣技の死闘だった。お互いの技を相殺していたが、どちらも疲労の色が見えた。

「はぁ…はぁ、あきらめの悪い人ですね」

「お前にだけには言われたくない」

すると、漣は俊也の剣をはじき飛ばした。

「これで俺の勝ちです。今の俺なら、あの剣を木っ端微塵に出来ますから」

「ふん。剣技だけが戦いじゃないからな」

いったん漣から離れた。俊也はオーラを高めた。邪悪な光が彼を包む。

(これがダークナイトの本気!)

漣は同じくオーラを高めた。すると、青白い光が彼を包んだ。

(パラディンの威力なのか?)

俊也はふとそう思った。そして、漣は覇王龍剣を地面に置いた。そして、漣は気迫だけで、『ギガホーリー』を放った。それに対して、俊也は『ダークフレア』を放った。僅かに漣が優勢であり、完全に俊也の技を打ち消して、俊也の体を貫いた。俊也は血を吐いて倒れてしまった。

漣は俊也の方に向かった。

「来るな!!」

「?」

漣は不思議そうな顔をした。

「情なんていらない。早く殺せ」

すると、漣は元の姿に戻った。そして、俊也の頬を思いっきり叩いた。

「俺だけなら、迷わずそうしたでしょう。でもお母様が…お母様が…悲しむから殺せない」

すると、春代がやってきた。

「お母様!?」

「俊也!!漣」

「春代…?」

春代は、俊也の頬に触れた。

「あなた、もう闇なんかに染まっていない」

「どうして…」
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