ー宿命ー

□秘密の特訓
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「今薬草売り場に行ったよ」

「そうですか。にしても2人ってどんな関係なんですか?」

そう言うと、慌ててハルクがこう言った。

「それを聞いちゃ失礼だろ?」

「いいよ。同じパーティー内で隠すのは、良くないからね。実は、俺達は恋人同士なんだよ」

そう言うと、操が顔を赤らませる。

「ただの腐れ縁だ!勘違いするな」

「本人は、見た目に反して照れ屋だからあまりからかわないであげてね」

「分かりました」

「透!今度恋人だなんて抜かしたら、GMーC2000の威力をお前の体で実験してやる」


「そっそれは勘弁だなぁ。それにまだ死にたくないし」

そう言いながら、透は締まりのない顔をしている。

「その締まりのない面どうにかしろ!撃たれたいのか?」

そう言うと、操は銃を構えた。透は両手を挙げる。

「勘弁してよ。仲間同士なんだから」

すると、操は平静に戻った。

「悪かったな。さっきのは、単なる脅しだ。仲間のお前に撃つ訳ないだろ。馬鹿」

そう言うと、操は髪をかき上げた。そして、冴子が帰ってきた。

「ただいま。いいのが見つかりましたよ」

「お疲れ。さて昼食にしましょうか」

6人は、知覚の喫茶店に入った。中はあまり入ってないようで、すぐにテーブル席に座れた。

「すみません、Bセット6つで」

透がそう言うと、操がこう言った。

「勝手に決めんなよ」

「すまない。でもこの店AセットかBセットしかメニューが無いんだよ。しかも、Aセットは高いからね」

すると、店員がやってきた。

「何になさいますか?」

「Bセット6つで」

「かしこまりました」

そう言うと、店員はキッチンに行った。その間、お互いの武器を披露した。

「俺は、古代の龍王剣だ」

「私は、グラディウスです」

「私は、GMーC2000ガンだ」

「学生の身で使っちゃいけないんじゃないんですか?」

美希がそう言うと、透はこう言った。

「操は、銃のライセンスを持っているし、何より物騒なこの世界だ。何が起こるか分からないから特別、許されているんだ」

「へぇ、ちなみに私は、ウィングフレイルです」

「ほぅ。なかなか使いやすそうだな」

「そうなんです。これを使うと空間具現化も早くに出来るんです」

「ふうん。私は、月夜の杖です」

マリアがそう言うと、透がこう言った。

「聞いたことない名前だね」

「実はこの杖は、私の先祖が使ってたものなんです」

「そうか。なかなか良い杖だね」

「ありがとうございます」

「さて、ハルクは何にしたんだ」

透がこう言うと、ハルクは古ぼけた布袋から、剣を取り出した。

「ダミアス家代々使ってきた紅龍剣です」

「俺の龍王剣と同じ三大龍剣の1つだね」

「後の1つはご存じですか?」

「確か、聖龍剣だった気がする。誰が持っているかは、不明だけど」

すると、店員が料理を持ってきたので6人は武器をしまった。そして、早めの昼食をとった。食べ終わると、透が勘定代を出して6人は、ポカポカマウンテンに向かった。

「それにしても、緑が少なくなったな…。これもすべてモンスター達の仕業か…」

「何か来るぞ」

モンスター達が6人の行く手を阻んだ。

「何の用だ。人間達め」

「それはこっちのセリフだ」

「人間ごときが」

モンスターがそう言うと、襲いかかった。なんとか透は剣で防いだ。そして、5人に目で合図した。すると5人は、配置についた。モンスター達が次々と襲いかかる。美希は具現化魔法の『ストップ』を唱えた。しかし、威力が弱かったのか、モンスター達には、全く効かなかった。

「まだまだひよっこ程度の魔法しか使えないのか、つまらん」

すると、操が美希に耳元でこう言った。

「直接効かないなら、私の銃の玉にその魔法を込めてくれ。そしたら少しは通用するはずだ」

美希は頷いて再び『ストップ』を唱えた。その間前衛の3人が、モンスターと戦っていた。

「尋常じゃないな。この山にこんなモンスターいたっけな」

透がそう言うと、モンスターがこう言った。

「我らは、ミスティ様から造られた人工モンスターだ」

「ミスティだと?」

「あの御方の、世界征服を御助けするために我らは、作られた。だからその辺の奴らと同じと思うな」

(どおりで、てこずるわけだ)

「みんな離れてろ!」

操がそう言うと、5人は出来るだけ遠くに離れた。そして、操はGMーC2000を構えた。一勢にモンスター達が彼女に襲いかかる。すると、彼女は0.25秒の間隔で10発の玉を連射した。すると、モンスター達の動きが鈍くなった。

(まぁ、レベル4程度の『ストップ』じゃモンスター達は止まってくれないか。まぁ、鈍くなっただけでも上出来だな)

その隙に前衛の3人は、モンスター達を切り裂いた。そして、モンスターは消えた。すると、ピコンと音が鳴った。

「誰かレベルアップしたのか?」

操がそう言うと、美希が頷いた。

「いきなりレベル6になりました」

「良かったな。にしても、少々モンスター達を侮ってたみたいだ。予想以上に強かったからな」

「そうだな。確かミスティから作られたと言ってた」

「じゃあ、すべてミスティの陰謀だったんですね」

「馬鹿じゃねぇの。今更気付いたのかよボンクラ」

「あのさ、1つ質問していい?なんで花嶋は、ハルクのことボンクラって言うのかな?」

冴子は吹き出しながら答えた。

「家柄がいかにもお坊ちゃまですし、世間知らずだからです。まさか、名前で呼ばないといけないって言わないで下さいね」

「分かったよ。でもあんまりいじめちゃだめだよ」

「そうだ!そうだ!」

ハルクが加勢すると、冴子がこう言った。

「こんなときだけ調子に乗るんじゃねぇボンクラ野郎が」

そう言うと、冴子はハルクの頭を半分本気で叩いた。

「いたっ…。容赦ないんですから」

「本当、そういうところは操にそっくりだ」

透がそう言うと、操はGMーC2000を彼に向けた。

「余計なこと言うなよ、このエセ紳士が」

「冗談だよね?」

すると、操は半ば悪い笑顔を彼に向けた。

「残りの1発脳天に受けてみる?」

「結構です…」

透の顔を見て、操は大笑いする。

「冗談だ。バーカ」

「死ぬかと思ったよ」

「てめぇリーダーなんだからしっかりしろよ」

「操がリーダーの方が良かった…」

「馬鹿じゃねぇの。私はそういう質じゃねぇの。さて先進むよ」

6人はポカポカロードの並木道を歩き出した。

「しかし、大変ですねぇ」

ハルクがそう言うと、透が苦笑する。

「それは、お互い様だろ?冴子もなかなかのSだ」

「そうなんですよ。俺いじめるのが生き甲斐なんですよあいつ。こっちは、たまったもんじゃありませんよ。にしても、どうやって操さんと恋人になったんですか?」

「それは、操から告白してきたからだよ。俺って行動するのに時間掛かるほうだからさ。向こうがしびれを切らして言ってきた訳だよ」

「それで了解した訳ですか」

一方前列の操と美希は何かを話し合っていた。

「さっきの用途でいいから、『具現化魔法』を私の銃の玉に唱えて欲しいんだ」

「でも…さっきだって威力が足りなかったじゃありませんか」

「大丈夫だ。レベルが上がるにつれて魔法の威力も上がるから。だから、よろしく頼む」

「分かりました。お役に立てるように頑張ります」

「よし。その意気だ」

「はい!」

一方、冴子とマリアも何かを話していた。

「あなたのお姉さんって、面白い人ね」

「そうか?」

「だって怖い冗談を平気で言えるし」

「あれは、中川先輩だけだよ。彼のこと好きだから、つい意地悪したくなるんだ」

「じゃあ、冴子さんがハルク君に意地悪するのもそれ?」

「違うな。あいつは天性のヘタレ野郎だから、からかいたくて仕方ないんだ。それに真性のドMだしな」

「変な言い方」

「そうか?」

「それに、なんでハルク君のこと名前で呼ばないの?」

「それはだな…腐れ縁と言うか、幼馴染みだから今更言ってもなんかな…って思うからだ」

「そう…。彼に恋愛感情抱いたことないの?」

マリアがそう言うと、冴子は考え込む。

「恋心は抱いたことないな。それに恋なんか知らないからな」

「そうなんだ。冴子さんらしい」

「そうか?」

「なんかストイックに生きてそうだもん」

「まぁな」

すると、小屋が見つかった。しかし、次の瞬間巨大なモンスターが透めがけて、斧を投げ付けた。透は、斧を剣て受け止めた。

(なんて重い斧なんだ)

すると、モンスターは透の体を持ち上げて、投げ付けた。

「うぐ」

落ちた時の衝撃で、透は大ダメージを受けた。

「美希、『縮小化』を頼む」

「はい」

美希はそう言うと、具現化魔法『縮小化』を操の銃の玉に込めて唱えた。その間、ハルクと冴子がタッグ技の『ドリルストライク』をモンスターめがけてした。しかし、全く効いてないようだ。

「くそっ!」

「ならば…」

2人に駆け寄ったマリアはそう言うと、呪解魔法の『封殺』をハルクの剣に込めて唱えた。そして、唱え終わった時、ハルクは飛び上がった。そして、勢い良く剣をモンスターめがけて振り下ろした。ダメージ自体はそんなに与えることは、出来なかったが、モンスターの動きが封じられた。そして、操がこう言った。

「ハルク、透を小屋の中まで運べ。後の3人は、彼の治療をしてやれ」

すると、急いで5人は小屋の中に入った。そして、操は銃を構えて『ミニマムバスター』を放った。するとみるみる内にモンスターは小さくなった。そしてトドメに、操は『火炎弾』を放った。すると、モンスターは燃え消えた。急いで操も、小屋の中に入った。

「透は?」

「幸い骨折はしていません。ただ打撲はしていますし、気を失っています」

美希がそう言うと、操は透の服を脱がせて、手持ちの薬を彼の体に塗った。

「これは?」

マリアがそう言うと、操はこう言った。

「打撲に効く薬だ」

そして、操は透の患部に大きな湿布を貼って、包帯で体中を巻き付けた。

「たくっ、世話のかかるやつ」

「しばらく休憩しませんか?リーダーも気を失っていることですし」

「そうだな」

しかし、美希は浮かない顔をしていた。

「彼が心配か?」

操がそう言うと、美希は笑って誤魔化した。

「笑っても、誤魔化せないぞ」

「すみません。本当は、かなり心配です」

「そうだな。大事な幼馴染みだもんな」

「はい」

「気持ちは痛い程分かるが、焦るな。こんな時こそ冷静になれ」

「はい」

操は、透の手を握る。他の4人はカードを見せ合っていた。

「私はレベル7かぁ」

「俺は8だな」

「私は11か」

「私の場合いつレベルアップしたか分からないから厄介だ」

「そうだね」

一方、操は気を失っている透にこう言った。

「油断すんなよ。馬鹿じゃねぇの。お前らしくない。お前が引っ張っていかないとこのパーティーは成り立たねぇんだよ。早く起きろよ」

それを聞いた4人は彼女に聞こえないように話した。

「なんだかんだ言っても、恋人なんだね」

「普段はいじめまくってるけど、本当はさ姉貴は、一番中川会長のこと好きだし、心配もするんだ。口は悪いけど、すごくそれが伝わる」

「そうだね」

4人は気を利かせて、外に出た。操はそれに気付き、心の中で4人に感謝した。操が彼の体を見ると、新しい傷から古くなった傷まで沢山あった。

(いつも、弱音など吐かなかったからな…。正直言ってすごいよ透…)

操は、透に服を着せた。すると、透がゆっくりと目を開けた。

「あれ?操」

「何、呑気に私の名前を言うんだ。お前さっきまで気を失ってたんだぞ?」

「あれ?みんなは」

「お前に呆れて先に行った」

そう言うと、透は慌てて起き上がった。すると体中に鋭い痛みが走った。

「いっ」

「馬鹿。気利かせて外で待ってくれてる」「そうか…。迷惑かけて済まなかった」

「本当だ。この馬鹿が」

「…」

「反省しろよな。私に心配かけた罰だ」

操は外に出ようとした。すると、透は操の服の袖を掴んでこう言った。

「待ってくれないか?俺のこと心配してくれたの?」

そう言うと、操は透から顔を逸した。

「頼りないリーダーでごめん」

「全くだ。お前はいつも私をはらはらさせる。今年の生徒会長立候補の演説だって、緊張のあまり倒れるし…」

「そうだったな。気が付いたらお前の部屋のベッドに寝てたしな」

「もう少ししっかりしろ。でないと私の心臓が持たん」

操がそう言うと、透は操の髪を撫でた。

「ありがと。そんなお前が好きだよ」
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