ー龍達の宴ー

□ープロポーズ・2人の決着ー
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「瑠宇」

弥生の声が、城内響く。

しかし瑠宇は反応しない。最後に会ったのが3歳の頃だったので誰だか判別できないのだろう。

「瑠宇。私、貴女のお母さんよ分かる?」
「お母さん?」
「ごめんなさい…今まで…」

瑠宇はいまいち理解出来ていないので、レバインが解説した。

「今話してるのが島野弥生。そして隣りにいるのがネウロ・カール。つまり、お前の両親だ」

瑠宇は漸く理解できたが、何せ記憶にないのでどう接すればいいのか分からなかった。

弥生は、久し振りに会う瑠宇の見違える姿に、感心した。

「それにしても綺麗になったわね」
「うーん」
「これから3人で暮らさない?」
「断る」

すると、カールが反論した。

「なんで?実の親子でしょ?」
「うん。確かにそうだけどいかんせんレバインに育ててもらったから、あんまりそういう自覚がない」

これには流石に2人もほとほと困り果てた。

「これから家族として過ごせばいいじゃない」
「…断るよ。確かにあんた達は私の両親だけど一度も姿を表さなかった。だから、断る」
「確かにそれは僕らに非があるよ。でも僕らは君と過ごしたいんだ」

瑠宇がこんなに頑なに断る理由は、和純と会えなくなるのが寂しいからだった。

「なんでそんなに頑なに断るの?なんでも良いから言って?」

すると、瑠宇ははっきりとこう言った。

「ごめんなさい。私、ある人に指輪もらったんだ」

その瞬間、和純は湯でタコ状態になった。

「これは絶対婚約指輪だな。私その人と結婚式をあげる」

それにはレバインも驚いた。

「それは誰かしら?レバインさん?」
「内緒。でも一緒に住まないよ。私、結婚式挙げたらその人と一緒に旅に出るから」
「なんで?」
「いろんなこと経験したいから。だから王位なんていらないし」
「だめだよ。せっかく両親に会えたんだから。これ以上心配かけさせちゃだめだよ。ね?だから瑠宇は帰りなさい」

瑠宇は和純にそう言われて、やっと両親のもとに帰ることを決めた。

そして、瑠宇は帰る前に和純を呼び出した。

「あのさ、1曲吹いて」
「今?」
「そう今。勝ったら1曲吹いてくれる約束しただろ?な?」
「分かったよ。だからちゃんと聞いてね」

和純は、フルートを吹いた。それは、和純と瑠宇が初めて出会った時に吹いた曲だった。

瑠宇は思わず涙を流してしまった。

和純は吹き終わった後、瑠宇を抱き締めた。

「別れたくないよ…」
「別れないよ。ただ、いまより会えなくなるだけだから」
「でもやだよ」
「瑠宇」
「なんだ」
「平和になった今だから言うよ。スクールを卒業したら結婚しよう。瑠宇」
「うん。待ってる」


和純は、瑠宇のネックレスに、自分の渡した指輪を掛けた。

「そして、一緒に旅に出ようか」
「いいのか?」
「うん、きっと瑠宇とならどこへだって行けるよ」
「私も」

すると和純は、瑠宇をいったん離した。

「目、閉じて」
「うん」

瑠宇はゆっくりと目を閉じた。そして和純は、瑠宇に優しいキスをした。

「愛してる」
「私も」
「初めての感情だから、恥ずかしいけどね」
「私もだ」
「寂しくなったら、また遊びにおいで」
「本当か」
「うん、だからそれまでお互い頑張ろうね?」
「うん」

2人はもう一度キスをした。そして、瑠宇は城を去った。


その様子を見ていた雅也は、和純にこう言った。

「引き止めんで良かったんか?」
「うん。3年の辛抱だから。それに親が子の心配するのは当たり前じゃない」
「確かにそやな」
「プロポーズしたんだ瑠宇に」
「ええええ!!」

あからさまに驚く雅也に、和純は苦笑した。

「まあ、デュエルも待ってるけどね」
「うわぁ、レバインとやで?かなり手強い敵やし」

すると背後で見てたレバインはクスクス笑っていた。

「いたんなら、言えよ」
「分かってるさ。和純、いくらプロポーズしたところで、私に勝てなかったら意味ないからな」
「えぇ」
「それと今から断罪の旅に行く」
「いきなり過ぎですよ」「分かってる。それまで元気でな」
「は…はい」
「次に会う時は、デュエルでな!!」


2人は握手をした。

「後、雅也も元気で」
「分かっとる。レバインも元気でな」
「それとプリンセスにもよろしく」
「あぁ玲奈ちゃんのことか」

雅也の背後から現れた。

「こちらこそ」
「これから、玲奈と和純どっちが王位を継承するんだ?」
「私です」
「そうか。これからはジュニーZ世だな」
「えぇ。けどみんなにも言うけど、普段通り『玲奈』って呼んでください」
「ん」


すると玲奈はあることに気付いた。

「そういえば、雅也くんの妹の景さんは?」
「景か…。もうトニーズキャッスルに帰ったわ。あいつも王位継ぐことなったし」

するとレバインは複雑な気持ちになった。

「どうかしたんかレバイン」
「一度景に会う。あの子に助けられたから」
「そうか。喜ぶと思うで。景、あんたのこと好きやし」

雅也以外の全員は、目を見開いた。

「まさか、カカシさんのタイプってレバインさんだったの?」
「そやで。昔迷子になってた景を助けてくれたんはレバインらしいし」
「でも、私は…」

瑠宇しか見ていない。レバインはそう言いたかったが、景の気持ちを知ってしまったので最後まで言えなくなった。

「後、デュエル見て欲しいって景に言ったんやって?」
「あぁ」
「景、すごい困った顔してたで。やっぱりあれか?瑠宇のこと好きってこと知らせるためか?」
「そうだよ」
「まあ夢見がちな景には、痛い話やけど。でも景は来るで」
「だといいな」

レバインは苦笑した。そして、和純にこう言った。

「3年後、結婚式をする。その日に飛龍の里に来い。待ってるから」
「えぇ」
「それまで、瑠宇を頼んだ」
「はい」

レバインは、紅龍になって飛び立ってしまった。

「終わったなぁ…」

気がつけば、夕日が沈む時間になった。

和純の頬に一筋の涙が流れた。

「終わった。でも、じいちゃんもばあちゃんもみんな失ってしまった。まだ、いろんなこと話したかった…」

雅也はそんな和純の肩を持った。

「そやな。たくさんの犠牲を出してしもた。俺もなんか胸が苦しいわ…」
「でも別れがあるから出会いがあるんだよ。こんなことが起こらなかったらみんなに会えなかった」

玲奈の言葉に、雅也は頷いた。和純は玲奈を抱き締めた。

「僕も玲奈と会えてよかった。16年間ずっと寂しい想いをさせてごめんね。もっと早くに会えたらよかったのね」
「ううん。お兄さんのせいじゃない」

雅也はそんな2人を見て、本当に平和になったんだと実感した。

その後、雅也はクリスタルキャッスルで夕食をとることにした。


「みんなお疲れ様。よく頑張ったな」
「いえ…」
「雅也くん、和純と玲奈と一緒に戦ってくれてありがとう。これからも、仲良くしてくれよ」
「はい」

すると玲奈が、重大発表をした。

「食事中ごめんなさい。実は私、王位継ごうと思うの。これは兄さんと決めたことなの」

遼と衛は目を見開いた。

「平和になった今だから、わざわざ王位を継ぐよりしたいことすればいいのに」
「私やりたいことがないの」
「じゃあこれから見つけたらいい」
「でも、雅也くんは私をずっとサポートしてくれるって言ってくれました。だから、王位を継ごうと思うんです」
「つまり、雅也くんを執事にするつもりかい?」

雅也は慌てて、否定した。

「執事じゃありませんよ。パートナーです。国は妹に任せます。だから今までもこれからも玲奈ちゃんと共に生きたいと…」

遼は雅也の真剣な顔を見て、安心した。

「サポートするのは並大抵なことではないけど、雅也くんなら大丈夫だ。これからも玲奈と和純をよろしくね」
「はい」
「それで、和純はこれからどうするんだ?」
「スクールに真っ当して、その後、レバインさんと決着を着けます」

衛と和純は目が合った。そして、衛はこう言った。

「それまで、俺と特訓しよう。もちろん手加減なしな?」
「はい!!」
「それと、将来はどうするんだ?」
「旅に出ます。行き先はまだ決まってないけど、外の世界を知りたいんです」
「そうか。とうとう離れていくんだな」
「はい…」
「頑張れよ!」
「はい」


























翌日から、最果ての町に避難していた人が各々の故郷に戻って、クリスタルワールドの復旧が急ピッチで開始された。

そして聖クリスタルスクールはその一週間後に、再開された。

和純の素顔を初めて見るクラスメイトは皆唖然とした。

「あの源がこんな綺麗な顔してたなんて!!」

だが、当の本人は自覚がないのか以前と変わらず、淡々としていた。

そして、その日オカルト同好会も再開された。

「オバケ!久し振りだな」
「バーベラさん久し振りです」

部員も、和純の素顔に驚いた。

「眼鏡の奥にミステリアスな素顔だな」
「大袈裟ですよ」
「で、ドラゴンは見れたのか?」
「えぇ、恋人がドラゴンですから」

一同唖然とした。

「ドラゴンって…まさか紅龍か?」

雅也は慌てて、否定した。

「紅龍は男やし。和純の恋人は龍人族の瑠宇やで」
「まさか、あの時一緒にいた銀髪の女かぁ?」
「そうです」
「やるなぁ!オバケ」


すると、透が部室に入ってきた。

「みんな久し振りだな。さて、今日は何を調査しに行こうか」
「ここの七不思議についてもう一度調べましょうか」

景がそう言うと、一同賛成した。そして和純達は各自の調査のため散らばった。


しかしデーモンがいなくなった後、七不思議も消えてしまったのだ。

「全てはあの人の仕業だったんだな」
「せやな。なんも全部綺麗になくなると、つまらんもんやね」
「じゃあしばらくは、調査無理だね」
「やな」

雅也は全員を呼び出した。

「どうやら七不思議も消えてもうたみたいや。しばらくは、クリスタルワールドの復旧作業の手伝いが活動の拠点になる。えぇか」
「ライオネット部長がそう言うなら、仕方ないですね」
「ほな各自すること決めて、手伝いに行こうか」
「はぁい!!」








一方、玲奈は王位を正式に継ぐために、雑務に追われていた。

遼が彼女を呼び出した。

「お母様、何の用件ですか?」
「これ、雅也くんに渡してくれない?」

それは分厚い本だった。
「これは?」
「クリスタルキャッスルの法律書。トニーズキングダムとは違うからね。これから雅也くんも、執事として玲奈に仕える身だから、ちゃんと教えなきゃね」
「お母さん…あの…1つ話があります」

玲奈は耳元で遼に言った。

「えー!!」

遼はわが耳を疑った。

「法律を変えたい?どこを変えたい?」
「王様と臣下の恋愛禁止法を変えたいんです。だって、お父様もお母様もそのせいでこの世界に追放された。だから変えたいんです」
「うーん。衛と相談するよ」

遼は衛にこのことを話した。すると衛は大笑いした。

「そりゃいい案だ。玲奈もやるなぁ」
「なんてたって私達の子だから」
「じゃあ、『仕事に支障がでない限り王様と臣下の恋愛は認める』にしよう」
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